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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
超人大決戦! ~超人VS怪盗VS警察VSサイボーグ~
14/192

vs怪盗シェル

 純正アルマガニウムはアルマ・ペガサスの中に隠されている。

 その解体方法を知るのは亡き師とその教えを受けた自分たちだけだ。幾つもの組織が狙ってきているのだろうが、それでも手を出せない理由がここにある。

 アルマ・ペガサスを破壊すればそのまま純正アルマガニウムが破壊されてしまう。

 かといってアルマ・ペガサスをエネルギー資源として使おうとすると、外装が邪魔をして従来ほどの出力を発揮できない。

 誰かが外装を外さなければ、純正アルマガニムを外に出すことはできないのだ。

 その外装が今、怪盗シェルの手によって外されていく。


「……」


 無言でアルマ・ペガサスの外装を取り外していく怪盗シェル。

 正直、純正アルマガニウムを外に出していい物かと何度も迷った。恩師の頼みとはいえ、下手に外に出してしまっては誰かの手に渡ってしまうかもしれない。

 アメリカ前大統領、マックスは純正アルマガニウムを利用して新人類王国を滅ぼそうと企んだ。

 だが滅ぼした後はどうなる。いや、むしろ滅ぼす間にどれだけの犠牲が出るのだろう。


 考えつつもシェルは取り外し作業を黙々と進めていく。

 今、彼はトイレから天上へと移動し、更には人目につかない美術館の屋根裏部屋へときていた。変に刺激を与えて純正アルマガニウムを爆発させたくなかったのだ。また、アルマ・ペガサスの解体に集中したかったのもある。

 懸念はただひとつ。純正アルマガニウムを狙う組織の襲撃者が、アルマ・ペガサスを解体した瞬間に襲い掛かってくることだ。少なくとも師を殺害した誰かが狙ってくることは予想がつく。これを守ろうとする組織も今頃は動いているだろう。後は時間との勝負だ。一刻も早く純正アルマガニウムをとりだし、この場から離れなければ。


「よし」


 作業を開始して10分。

 慎重な作業が功を無し、アルマ・ペガサスは解体された。

 精巧な作りのガラス細工がバラバラになっていき、中からビー玉サイズの小さな球体が姿を現す。淡く輝くそれを手にし、シェルはじっくりを眺めた。


「こいつは、確かにお宝だな」


 これまで数々のお宝を見極め、嗅ぎ分けてきた、泥棒として特化された五感が告げていた。

 純正アルマガニウムはこれまで奪ってきたどんなお宝と比較しても、価値が高すぎる。地球上では決して入手できない超エネルギー資源。上手く使えば、きっと不可能なことなどなくなってしまうのだろう。

 後はこれを爆発しないように処理するだけだ。

 早く仲間のところに戻り、純正アルマガニウムをこの地球上から葬り去らなければならない。

 

 目的は達した。

 此処から立ち去ろう。


 そう思った瞬間、背筋が凍えた。

 強烈な殺気を身に受けたのだ。この2年間、新人類軍やネルソンたちから向けられた敵意とは比べ物にならない。

 もっと驚異的な怪物が、自分に狙いを定めている気がする。

 シェルは仮面をつけた。その場から立ち上がり、急いで離れようと速足で移動しはじめる。


 が、


「なんだ?」


 どしん、と音が鳴った。

 心なしか振動もする。建物が揺れているのだ。地震かと思ったが、違う。震源がどんどん近づいてきているのがわかる。

 どしん、という音と共になにかがこちらに近づいてきている。

 さっき感じた殺意とはまた別の、今まで感じたことがない脅威が近づいてきているのではないだろうか。


「パンドラの箱ってわけか?」


 純正アルマガニウムを解放した途端にこれだ。

 なにが襲いかかってくるかわからないが、これを誰の手にも渡すわけにはいかない。必ず守り通して見せる。

 シェルが再度決意を固めたところで、震源は床を突き破ってきた。


「ぜぁ!」


 屋根裏部屋へと押し入ってきたのは、シェルの想像を超えた光景だった。

 蹴りだ。

 人間の蹴りが真上に向けられた状態で、床を破壊している。

 その張本人は空中で器用に回転し、シェルの前で着地した。


 破壊の男――――カイトは顔を上げ、シェルの仮面を睨みつける。反射的にシェルも構えた。


「アンタ、特撮に出てくる怪獣かなんか?」

「そういうお前はアニメに出てくる怪盗か?」


 互いに似たような問答をした後、ふたりは同時に足を動かす。

 カイトは再度床を蹴り上げ、足場を破壊しながら。

 シェルは対照的に素早く、カイトの突撃を避けようとする静かな動きである。だが、シェルの予想に反してカイトはデタラメだった。彼が動くと同時に美術館が破壊されていくのだ。

 彼の顔はさっきちらりと見ている。アルマ・ペガサスを持っていた少年の隣にいた男だ。たぶん、警備員なのだとは思うが、それにしたって暴れっぷりが半端ではない。

 いや、そもそもにして走りだけで建物を破壊できるのがおかしな話なのだが。


「ちょっとアンタ! 美術館を壊していいのか!?」

「案ずるな。弁償は俺が払うことはない」


 国家機関が背後についているのは大きな強みだった。


「くそったれ! こういうのは警部の仕事じゃないのか!?」


 妙に警察官が少ないとは思ったが、まさかこんな隠し玉がいたとは驚いた。

 常に警部の暴走にも驚かされていたが、彼は警部よりも躊躇いがない。

 具体的にいうと、


「俺を殺す気か!?」


 体当たりされれば間違いなく殺される。

 あれではまるで闘牛だ。ダンプカーだ。


「大丈夫だ。死にはしない。できるだけ殺すなとも言われてる」

「できるだけってなんだよ!」

「言葉の通りだ。返すものを返すならよし。そうでなければ」


 両手から爪が伸びる。暗闇の中、確かに輝く銀色の刃の目にし、シェルは更に驚愕した。


「なにそれ!」

「殺すことになる」


 右腕が一閃される。空気が切り裂かれ、シェルは自身の肌が痛むのを感じた。


「やべ!」


 反射的に仰け反る。直後、先程まで自分がいた場所が切り裂かれた。文字通り、切断されたのである。切り裂かれた空間は木端微塵になり、外への脱出口となったわけだが、すでにカイトが走り回ったせいで床も満足に歩ける状態ではない。

 逃げるつもりが、いつのまにか追い詰められていた。


「ちょっとアンタ、怪盗捕まえるために出てきていいキャラじゃないと思うぞ」


 床がもう残っていない。今にも崩れ落ちそうな足場で留まってはならぬと思いながらも、シェルは足を止めざるをえなかった。


「ちくしょう、反則だろこんな奴!」

「お前に言われたくはない」


 背後を取らた。

 真後ろから爪を突き立てられたのを感じ、シェルは動きを止める。


「そのままゆっくり両手を挙げろ」

「へいへい」


 抵抗する間もなく、シェルは両手を挙げた。怪しい挙動はない。掌もパーにしており、なにかを握っている様子はなかった。


「で、警備員殿。俺はこの後どうなるんだ?」

「純正アルマガニウムを返せ」

「やっぱアルマ・ペガサスよりもそっちか」

「無駄な話し合いは好きじゃないんだ」

「そうやって俺の先生も殺したってわけ?」

「先生?」


 カイトの眉がぴくりと上がる。ほんの少しだが、注意をこちらの話に持っていくことができた。

 その隙だけあれば十分だ。


「俺は先生の仇も取るつもりだ。だけど、先に不始末から片付けないとな」

「貴様が純正アルマガニウムを処理するというのか」

「まあな。だから、行かせてもらうわ」

「逃がすと思うのか。この姿勢で」

「追えるかな、そのベルトで」


 言われ、カイトは真下を見る。ズボンを閉めていたベルトがいつの間にか引き抜かれていた。しかも、そのベルトは後方の柱に結び付けられており、自分の下半身と繋がっているではないか。


「じゃあ、あばよ!」

「あ、待て!」


 いつの間にか行われていた動作に戸惑うカイトを余所に、シェルは外へと逃亡。

 カイトは即座にベルトを引き千切ると、外へと逃亡したシェルを追い始めた。だが、追いつつもカイトは思う。


 怪盗シェルは想像以上の強敵だ、と。

 単純な身体能力は自分たちに迫り、しかも盗みの動作すら見せずにアルマ・ペガサスを目の前で盗んでみせた。挙句の果てに、両手を上げさせたにも関わらずに抜き取られたベルト。


 これでは怪盗ではなく、まるで魔法使いだ。

 どんな物がきっかけになって隙が生まれるかもわからない。


 思考を回し、カイトは立ち止まる。


「……このまま追っても同じことの繰り返しだな」


 認めざるを得ない。怪盗シェルはこれまで戦ってきた誰と比べても、手強い相手だ。

 そもそも強さのベクトルが違う。

 これまでは徹底的に敵を滅ぼす新人類が相手だったのに対し、彼は盗みのスペシャリスト。同じ手段で捕まえられるような簡単な敵ではなかった。

 ただ追いかけるだけではダメだ。奴はあらゆる手段を使って隙をつくり、確実に盗み取っていく。残念だが手段はわからない。


 しかし、回避方法は思いついた。


「盗みが強みなら、盗むものがなければいい。そういうことか」


 結論付けると、カイトは上着を脱いだ。

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