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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
プリンセスにおしつぶされて
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切り裂き・ツインズ

 殺戮ジェットの刃がメタルエンプレスに迫る。

 寸でのところでこれを受け止めるも、エリアルは選択を迫られたことを悟った。

 予選で行われた超猛攻。

 防げるかもわからないアレを受け止めなければならない時が、ついに来たのだ。


『勢いは殺戮ジェット! 最初の一撃は防いだが、まだ来るぞ!』


 予選を見た誰もが知っている。

 雨嵐のように襲い掛かってくる攻撃の連打を。

 これを防ぎきるのは至難の業だ。

 同時に、今のメタルエンプレスが一撃でもヒットしたら、そのまま撃墜されるのも明白な事実である。


 自信はない。

 だが、やるしかない。

 はっきり言うと、殺戮ジェットは怖い。

 パイロットから流れてくる負の感情も含めて、すごく怖い。


 でも自分はプリンセスの称号を持っている。

 勢いはあるし、勢いを吸い込むだけの力があるはずだ。

 ゆえに、恐れを心の中に封じる。


「ふぅ――――」


 深呼吸。

 乱れそうになる心を落ち着かせる。

 殺戮ジェットが仕掛けてくる間に精神を強固にし、迎え撃つ。


『始まった!』


 殺戮ジェットの猛攻撃が始まる。

 左右から刃を振りかざすのを見て、メタルエンプレスは頭部機関銃を放った。


『あら、そんなのを今更撃ったところでどうしようもないと思うのだけど』


 相手側がそんなことを呟いた。

 確かに殺戮ジェットの体力はまだある。

 こんな牽制では削りきることはできないだろう。

 

「でも、受けながら攻撃をすれば問題ないよね」


 右の一撃を受け止め、弾く。

 左から迫る一撃を、そのまま勢いで受け流す。


『まさか、殺戮ジェットの猛攻をソード一本で捌き切るつもりか!?』

『アーンハッピー……』


 相手の苛立ちが募るのがわかる。

 でも、仕方がない。

 もうメタルエンプレスも限界を迎えようとしているのだから。


「しかも、そっちだけ見てるわけにはいかないでしょう!」


 ダウンしていたシグナル・ザンが起き上がる。

 起き上がりに重ねる形でミサイルを発射しようとするが、


『それ、邪魔』


 殺戮ジェットが刀の攻撃軌道を変えた。

 エネルギーソードがぶつかるも、逸らす形で斜め上に一閃。

 肩に装着されているミサイルランチャーが刻まれ、破壊される。


『遂にミサイルが破壊された!』

「くぅ」


 厳しい。

 少しでも手元が狂うと、そのまま刻み込まれてしまう。

 1コンボで体力を大幅に削り取るシグナル・ザンも戦線に帰ってくる。


『殺戮ジェットもシグナル・ザンも狙いはメタルエンプレス! プリンセス、絶体絶命!』


 実況の声が耳に届く。

 あまりにも厳しい現実が、目の前で壁として立ち塞がってきた。

 

『諦めちゃだめだよ!』


 どこからか声が聞こえる。

 なぜ、と問いかける前にその声はエリアルに答えを提示した。


『だって諦めたら負けてしまう。君は、勝ちたいんでしょう?』

「うん。勝ちたい」

『だったら信じて。大丈夫、君は誰にも負けない資質と力がある。僕たちは知っているよ』


 ゆえに、


『諦めなかったら、君の勝利さ!』

「ええ。ええ!」


 エリアルが深い笑みを浮かべる。

 同時に、繰り出された殺戮ジェットの回し蹴りを同じく蹴りで防御。

 そのまま機関銃を頭部に浴びせる。


『そんなもので』

「でも、ずっと浴びてれば少しずつ削れていくよね」


 殺戮ジェットは今大会で最も装甲値が少ない。

 当然、小さな攻撃でも、受け続ければいつか限界が来る。


『殺戮ジェットの装甲値が限界だ! 上半身は何時爆発してもおかしくないぞ!』

『え』


 夢中になって攻撃していて、体力管理を怠っていたのだろう。

 気づけば、殺戮ジェットの体力はほとんど残っていない。

 至近距離からマシンガンを受けたら、確実に撃墜されてしまう。

 そして、メタルエンプレスが武装を持ち替えた。


『そうはいくかよ!』


 そんな絶体絶命の殺戮ジェットを助けるため、シグナル・ザンが突撃。

 分離し、またしても上半身と下半身、飛行ユニットがバラバラになっている。

 恐らく、マシンガンの銃口をこちらに向けるための行動だろう。

 そうしなければメタルエンプレスはやられてしまう。


「ここで、どっちも倒さなきゃ」


 どちらか。

 そんな選択をしては残った方に切り刻まれてしまう。

 この窮地を脱する手段はただひとつ。


「装備は変えない! このまま殺戮ジェットは落とす!」


 そして残ったシグナル・ザンは動きながら撃墜を狙う。

 より確実性を高めるためには、それしかない。


「大丈夫。私はいける。私はやれる!」


 己に言い聞かせ、マシンガンを発射。

 殺戮ジェット目掛け、無数の弾丸が飛んでくる。


『アンハッピー! それ、だいたい理解したわ』


 だが、そこでエリアルの想像を超える出来事が起きた。

 殺戮ジェットが左右の刀を振り回し始めたのだ。

 

『ま、まさかこれは!』


 赤猿が困惑しつつも、叫ぶ。


『マシンガンを! それも至近距離で放たれた無数の弾丸を全部弾き飛ばすつもりなのか!? 無茶苦茶だぞそれは!』


 でも、まったくの不可能ではない。

 実際、ブレイカーズ・オンラインでは弾丸を弾くことができるシステムだ。

 これまで何度も実証されている。

 しかし、同時に。

 どれも神業すぎて真似できるものではないのだ。


『あら。そんなに驚くことはないじゃない』


 そんなリスナー達の困惑を察してか、殺戮ジェットは嘲り笑う。


『だって、プリンセスさんができるのでしょう? 私にできないなんてこと、ないと思うのだけど』


 その通りだ。

 エリアルは戦慄しつつも、思う。

 可能性はまったくの0ではない。

 だから、できてしまうことはありうる。

 事実、殺戮ジェットは殆どの弾丸を裁いていた。

 殆どを切り落とし、小さなかすり傷だけで迫ってくる。


「来る!」


 落としきれない。

 真横からもシグナル・ザンが迫ってくる。

 ここは停滞するわけにはいかなかった。


『メタルエンプレス、ここで遂に離脱! 殺戮ジェットから距離をとる!』


 リロード。

 マシンガンの弾倉に新たな弾が入ったのを視界の隅で確認。

 扇状に振りまくようにして、弾丸を放つ。

 

 しかし、その攻撃はすべてシグナル・ザンの飛行ユニットが展開する翼のシールドによって弾かれてしまった。

 同時に、殺戮ジェットもシグナル・ザンも速度はメタルエンプレスよりも上である。

 逃げる機体を追いかけることに関しては、彼らに勝る者はいない。


「あのシールドを正面から打ち破る武装はない。でも、」


 でも、シグナル・ザンを相手にしていたら殺戮ジェットがコンボを仕掛ける。

 板挟みだ。

 彼らは完全に自分をターゲットとしている。


「でも、私がちゃんとしていれば負けない!」


 なぜならば自分はプリンセス。

 自分を信じれば、負けるはずがない。

 そうやって勝ち続けてきた。


「今度だって!」


 シグナル・ザンが飛行ユニットを盾にして突撃してきた。

 これには対応できる。

 翼を広げるモーションの最中に、潜り込むのだ。

 その後、迫ってくる下半身と胴体をマシンガンで撃ち落とす。

 殺戮ジェットの動きは常にチェック。

 もう片方のエネルギーソードで何時でも対応できるようにしておく。


 簡単にプランを立て、まずは飛行ユニットを回避。

 その後、最初に迫る胴体に銃口を突き付ける。


「え!?」


 だが、その瞬間。

 下半身が上半身と接続した。

 引き金を引いた時には、その意図には気づけていない。


「どうしてそこで接続したの!? 分離していたほうが」

『これでいいんだ! これなら、ある程度持つ!』


 踵からエネルギーソードが伸びた。


「しまった!」


 格闘武器を展開して突っ込んでくる。

 しかも、引き金を引いてしまっている。

 回避行動が、間に合わない。

 マシンガンから放たれた弾丸はすべてヒットしているが、まだ体力に余裕のあるシグナル・ザンは倒れなかった。

 踵のエネルギーソードがメタルエンプレスの胴体に突き刺さる。

 激しい爆音とともに、女王の機体が弾け飛んだ。

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