決勝リーグ開幕!
決勝リーグを迎え、まさに試合が始まろうとしている中。
何時ものように全員で集まると、スバルは確認する。
「カイトさんって、今どうしてるの?」
「連絡はない。最悪の展開だ」
疫病神こと神鷹カイトからの連絡がついに途絶えたのだ。
不死身を売りにしているあの男のことだ。
死んではないと思うが、いかんせん運が悪すぎる。
「今頃、どこで何をしてるか予想できねぇ」
「宇宙に行っててもボク達は驚かないよ」
「そんなまさか」
どうして地球で行われている配信者の情報を調べに出ていったら宇宙に出てしまうというのだ。
余程の不運でない限り、そんなコメディ番組も真っ青なハプニングが起こるはずがない。
「……いや、でも宇宙から帰ってきたって言っても驚かないね」
「だろ?」
「スバル君もだいぶボクらの気持ちがわかってきたね」
エイジとシデンが仲間を見つけたと言わんばかりに親指を立てた。
そこまで予想できたのなら、あの疫病神を旅立たせるなと言いたい。
「でも、今回はエレノアさんも一緒ですし、流石にそんな無茶はできないのでは?」
恐る恐るマリリスが告げる。
確かに今回はひとりではない。
エレノアも性格は破城しているが、ああ見えて最低限カイトの生命は守ろうとしてくれる――――筈だ。
「でも、あいつが本気になったら誰にも止められないだろ」
「確かにそうですね」
納得されてしまった。
だが、向こうから連絡がない以上、手掛かりもない。
手掛かりがないのなら、動きようがないのだ。
「とにかく、今回は普通に参加だ。もしも運営側から呼び出されても、受けるんじゃねーぞ」
「わかってるよ」
今のスバルはあくまで一般参加して予選を勝ち抜いたブレイカー乗りだ。
目的は、プリンセスとの闘い。
勝ち負けではない。
「じゃあ、そろそろ開始だな」
既に赤猿がライブ放送を開始。
決勝リーグに残った選手の紹介を始めていた。
その放送を見つつ、スバルはゲーム画面を開く。
『一通り紹介し終えたところで、改めて決勝ルールを説明するぜ!』
招待されたルームに入ると、赤猿が待機しているブレイカーや観客に向けて最後の説明に入った。
『参加者は予選を勝ち抜いた上位10人とプリンセスの11人。制限時間は無制限で、配置場所はやっぱりランダムだ。対戦システムも予選と同じバトルロイヤル。最後まで生き残ってた奴が勝ち。わかりやすいな!』
観客たちが各々の下馬評をコメント欄に書き込んでいく。
予想通り、大半がプリンセスの勝利と記載していた。
「勝ち残った10人よりも、あくまでメインヒロインか」
「それだけの力はあるって証明してるわけだね」
「ずるいです! 予選には参加してなかったんですよ! 悔しいから私がスバルさんの名前をコメントに書きまくります!」
「迷惑行為だからやめような」
マリリスが危うくBANされそうなので優しく咎める。
そうしている間に、スバルたちの機体は広大なフィールドへと転送されていった。
『さあ、ステージは今回もランダムセレクト! 最初のステージは森林! 地上での動きは森に絡めとられるぞ!』
特に水中戦を得意とするカジキ・ポセイドンは苦しい戦いを強いられることになるだろう。
このステージには海がなく、地中に隠れようにも森が邪魔で時間がかかる。
狙うなら確実にこの機体から行くのがセオリーなのだが、
「スバル君、どう戦うの?」
「予定通りだよ。他は襲ってきたら対応する」
あくまで狙いはプリンセスのメタルエンプレスのみ。
殺戮ジェットこと斬撃姫との約束もある。
だが、スバル本人の戦意はあくまでプリンセスに向けられていた。
『それじゃあ、いよいよ始まるぜ!』
「よし!」
レバーを掴み、スバルが現状位置を確認。
最も近い位置にいるのは、
『注目のメタルエンプレスの一番近い位置にいるのは、予選で活躍しているシグナル・ザンだ! これは最初から仕掛けてくるのか!? 一番やりあってみたいとプリンセスも公言しているぞ』
「じゃあ、その期待に応えますか」
戦いの合図が、赤猿から放たれるのを待つ。
『では、これより決勝バトルロイヤルを開始するぜ! 予選と同じく勝っても負けても恨みっこなしの真剣勝負! レディー……!』
一瞬、静寂が訪れた。
ややあった後、すべてのプレイヤーが解放される。
『ンゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』
シグナル・ザンが宙へと動く。
同時に、ライフルを真下へと構えて引き金を引いた。
地面に弾丸が着弾し、爆発。
『おっとぉ!? いきなりシグナル・ザンが地面に撃ったがなんの意味があるんだこれは!』
斬撃姫と交わした同盟を了承した合図だ。
これでお互いの決着はすべてが終わった後につけることにする。
勿論、最後まで生き残れればの話だが。
「最初にやるべきことはやった!」
「スバル君、来てるよ!」
声に反応し、対応。
一番近くにいたメタルエンプレスが接近していた。
手にはエネルギーソードが握られており、銃はない。
「接近戦を仕掛けるつもりか!?」
「まだ距離はあるぞ!」
一番近いとはいえ、シグナル・ザンとメタルエンプレスの間にはまだ距離がある。
その間、シードであるプリンセスには様々な攻撃が飛来してくると予想できた。
事実、遠距離からこれを好機と見たプレイヤーたちが一斉に攻撃を始めている。
『おっと、メタルエンプレスに一斉に攻撃が向けられた!』
ある機体はエネルギーランチャー。
ある機体はミサイル。
ある機体はライフルでスナイプしようと陣取っている。
いずれにせよ、ほぼ全機がメタルエンプレスに狙いを定めていた。
『シングル戦では絶対に味わえない猛攻だ! これをどう切り抜けるメタルエンプレス!』
興奮を隠せないまま赤猿が言う。
スバルも同様のことを考えていた。
一体どうするつもりなのだろう、と。
自分に向かってくるなら相手をする。
寧ろ好都合だ。
しかし、その間でこうも隙だらけの姿勢を作ってしまっては狙ってくれと言っているようなものである。
ましてや彼女はシード選手。
この大会の本命だ。
参加者は基本的に彼女を狙いに行く。
『最初はあなたと遊びたいな』
「えっ」
背筋が凍えた。
何かが背後から囁いてきた気がする。
「今、何か言った!?」
「どうした?」
「何も言ってないですよ!」
仲間たちではない。
同時に、彼らには聞こえていない声だった。
気のせいかと画面に集中するも、
『さあ、ゲームスタートよ。今から行くからね』
やっぱり聞こえる。
少女の声が。
動画で聞いた、エルアル・ブルーミーの声が脳に響く。
「なんのトリックだ!?」
反射的にレバーを操作。
刀を構え、メタルエンプレスに突っ込んでいく。
「おい、まだ距離があるぞ!」
「他のブレイカーの攻撃の巻き添えを食らうつもり!?」
「いや、きっと彼女は全部潜り抜けてくる!」
直後、それは起きた。
メタルエンプレスの動きがブレたのだ。
速度自体は大したことはない。
寧ろ、シグナル・ザンの加速が勝っているほどだ。
だが、その軌道が予測できない。
上下左右に揺れながら、不規則に動いていく。
飛来してきた攻撃を、すべて回避しながら。
『メタルエンプレス、5機のブレイカーからの攻撃をすべて回避!』
「やっぱり!」
そのままシグナル・ザンと激突した。
エネルギーソードと刀がぶつかり、激しい火花がエフェクトとなって再現される。
同時に、肩に装填されているミサイルに光が灯ったのをスバルは見逃さなかった。
「やっぱりそう来る!」
だが、予想しなかったわけではない。
これは想定の範囲だ。
メタルエンプレスはあらゆる距離で、自由に攻撃してくる。
だから、こちらも対応できるブレイカーが必要だった。
どんな距離でも、適切に対応できるブレイカーが。
「見せてやるぜ! この時のためにとっておいた秘策をな!」
「いきなり出すのか!」
「勿体ぶって負けたら意味ないからね!」
ゆえにスバルはシグナル・ザンの特殊コマンドを入力する。
直後、3色カラーのブレイカーが3つに割れた。




