前編
俺の名は、月崎翔夜。
みんなからは、『ショウさん』と呼ばれている。
好きなものは駄菓子で、嫌いなものは特にない。
おっと、そろそろ本題に入らなくてはね。
ここは、今から500年後の未来。
知っているか? 江戸時代で“侍”という人たちが居ただろう?
この時代には、侍が復活しているんだ。
“未来侍”とでも言っておこう。
この時代では、未来侍の他にもう一つの人類がいるんだ。
彼らは『Moon Grave』と呼ばれ、“能力”を備えた人達のことを指すんだ。
その中には、“カミサマ”という能力者のトップも居る。
説明はこれくらいでいいだろう。
今からキミは、500年後の未来へ飛ぶんだ。
自分の想像する明るい未来に視点を変えて、物語を読んでみてくれ。
俺たちの住む未来へ、案内するよ−−
ある晴れた日。
晴れ、と言っても天気は自然のモノじゃない。
キミは予想付かないかな?
この未来は天気もコンピュータで管理されているんだ。
今日は晴れ、明日は曇り みたいにね。
俺はこの時、自宅の天井で……
昼寝をしていた。
「ショウさん!」
目を開けると、小さな青年が立っていた。
「ゆま……?」
海原愉真。
俺はこの少年に飼われている。
全く予想が付かないか?
俺を信じて、読み続けてくれれば分かるはずさ。
「なんでこんな所で昼寝してたんですか? 今日は午後から雨を降らすって言ってましたよ」
「そうか」
コイツは真面目すぎで、心配性だ。
少し出かけただけでも、連絡を入れてくるほどだ。
真面目だけどツッコミが得意で、俺の良き相方となってくれる。
「最近は晴れが多いからな。雨が久しぶりだな……」
あの日以来。
俺が、愉真と出逢った時以来だな。
「そろそろ会議の時間ですよ。早く集まって下さい」
「ハイハイ」
会議、と聞いて何かの会社だと思ったか?
イヤ、俺は会社なんてやっていない。
『Moon Grave』の総長をやっているんだ。
団長指揮官の愉真の次に偉いかな?
俺にとっては総長なんてどうでもいいんだがな。
俺が本当に欲しいモノ、それは……
「ショウさん! 聞いていますか?」
「あ、愉真? うんうん! 聞いているよ」
俺としたことが、ついついボーっとしちまったな。
よく見ると、ほとんどの連中が居眠りをしている。
お前だけだよ、ユマ。唯一真面目なのは。
「……という事ですが、どうでしょうか?」
「ムニャ、グウグウ」
「ん?」
意味不明の返事が返ってくる。
声が聞こえた方を見ると、寝ながら返事をしている男がいた。
特別警察組(略して特警) 組長、山本務。
彼も能力者のひとりだが、寝ながら返事をできるとは。
俺より凄いかも。
様々な意味で、な。
「ムニュ、フニフニ」
フニフニって何だよ……
「あぴょ、あおぽぽ」
また意味不明の返事が炸裂。
コイツも同じく寝ながら返事の技を使っている。
士牙龍紀。
10代にして、特警の本部部長に上り詰めたエリートだ。
「いいかげんにしろよ 山本さん、龍紀」
普通の返事をしたのは、特警副長、佐田十鬼。
俺と同じ時期に入団した、同年齢の友だ。
「ちゃんと注意しろよ、ショウヤ」
「なんで俺なんだ? ったく……」
トウキは面倒くさがりなのがいけないんだ。
だから、出世もできないんだろ。
「全員、起きやがれーーーーっ!!」
俺の一喝で起きるヤツはいいものの、それでも夢の中にいるヤツが居るんだよ。
ホラ、「フニフニ」言ってた山本さんと、「あぴょ」のリュウキが。
「山本さん、リュウキ!! 早く起きろって」
俺は山本さんの両耳を掴み、左右に引っ張る。
「いでででででえ!? 何するんだ!」
「アンタが起きないからだろ?」
さらに左右に引っ張ると、誰でも爆笑しそうな顔になった。
寝ていた罰だよ。もっと変顔になれ。
山本さんをポイ捨てすると、リュウキのアホ毛を掴む。
「りゅうきさ〜ん? 早く起きろよ〜ぅ」
「何スか〜? まだちくわは……」
「どんな夢見てるんだよ、まったく」
リュウキを放置して、またユマの隣に戻る。
「もう一度発表します。今から、僕たち『Moon Grave』全員でトーナメント・デスマッチを」
「と、とーなめんと!?」
「トーナメント・デスマッチって何をやるんだ!?」
皆が口々に質問をする。
俺がもう一度黙らせようとしたとき、ユマが手を出してきた。
「みなさん、確かに色々と質問があると思います。なので、説明をします」
ショウさん、お願いします とユマは目で訴えてくる。
仕方がないなぁ……
また俺が心を読むしかない。
「まず、最初に全員でクジを引く。そして、同じ番号同士の者が戦うんだ。
そしてそこの勝者だけが別の番号での勝者と戦える、そういうわけだ」
「でも、それじゃ普通のトーナメントマッチじゃ……」
「そう、それじゃおもしろくないからもっとハードにするんだ。
すべてのステージは普通ではないステージと化す。たとえば、溶岩の中とかな」
皆が顔を真っ青にする。
中には、泣きわめく者もいた。
「おまえらは能力があるだろ? それを使えばいいじゃないか」
「でもムリな場合はどうするんだよ!! あと、俺たちが戦う意味なんて……」
「そう言うと思ったよ。優勝者には、結構な大金が出るそうだ。
それでもお前らは戦いたくないか?」
俺の発言にみんなはやはり乗ってきた。
汚れた、とでも言うのかね?
やっぱり金が好物なんだな。
「俺は反対だ」
「どうしたトウキ。お前も金が欲しくないのか?」
「いや、俺は金よりもカレーパンが……」
「カレーパンでも大量にくれてやるよ」
トウキは「やったあああ!!」と言いながら跳ね回る。
何でカレーパンの方がいいのか?
とにかく、俺たちの戦いは始まった。
あとは後半に続くから、少し待っててくれ。
でも、無理に読まなくてもいい。
キミがこの物語を気に入ってくれるのならば、
キミが俺たちの世界をもっと知りたいのならば。