イヌと忘れ物(二〇一七年四月十五日)
こんにちは、葵枝燕です。
連載『夢日記』第二回でございます!
この作品は、何か面白い夢見た、これは誰かに伝えたい、記録に残しておきたいーーそう個人的に思った夢を、書いていくものとなっております。
今回は、二〇一七年四月十五日に見た夢です。
もしよければ、私の見た夢の話にお付き合いくださいませ。
珍しく日付をまたぐ前に布団に入った。ここ最近、夜一時過ぎまで起きているのが普通だから、二十三時台に寝るなんて久しぶりのことだった。
本当は、NHK-Eテレで、日付が変わる五分前にやっている番組が見たかったのだけれど、起きているのが面倒だった。
そして、こんな夢を見た。
夢の中での私は、どうやら身体の自由があまり利かないらしかった。身体のどの部分が悪いのかは、今となっては思い出せないが、誰かに支えてもらえなければ歩けないようだった。ヘルパーさんらしい人に支えられながら、家から少し離れた場所に止まっているタクシーに乗り込む。
「あれ? ない……」
私はそこで、いつも出かけるときに持っている鞄がないことに気が付いた。青地に白い水玉柄のショルダーバッグだ。いつもそれに財布やらスマートフォンやらを入れている。
「どうしよう……」
家に戻って取ってきてもよかったのだが、一人で歩けない私には無理だった。それに、待ち合わせの時間でもあるのか、急いで出発しなければ間に合わないようでもあった。困っていた、そのときだった。
「ワンッ!」
そんな声がした。そこを見ると、開きっぱなしだったタクシーのドアの向こうに、クリーム色のゴールデンレトリバーが座っていた。
「◯◯!」
そのとき私は、その犬の名前を確かに呼んだのであるが、今はもう思い出すことができない。おそらく、“シロ”とか“ポチ”とか、そんな名前だったのではないだろうか。
その◯◯の口には、私がさがしていた鞄がくわえられている。
「◯◯、持ってきてくれたの? ありがとう」
鞄を受け取ると、◯◯は誇らしげに、
「ワフッ!」
と、鳴いた。
「ありがとね、◯◯。行ってくるね」
そう言って頭を撫でると、◯◯はまるで「自分の役目は果たしたな」と言わんばかりに、回れ右して走り去る。
「◯◯、車!」
脇目も振らず走っていく◯◯の様子を、リアガラス越しに見ていると、両側から車がやってくるのが見えた。◯◯は、そんな道路の様子に気付いていない。
「危ない、止まって!」
そう叫ぶ。このままでは、◯◯は車に轢かれてしまうかもしれない。
しかし、そうはならなかった。◯◯に気付いた車が止まってくれたのだ。そのおかげで◯◯は怪我することもなく、家に帰り着くことができた。
私はそれを見届けて安心し、前方へと身体の向きを変えたのだった。
そういったところで、この夢は終わった。
しかし今の我が家には、イヌはおろかペットの類はいない。それ以前に、私はイヌが苦手だ。例えそれが、小型犬や仔犬だったとしても、恐怖心がまさってしまい逃げ出さずにはいられないのだ。
それなのに、よくもまぁ夢の中ではイヌと触れ合えるよなーー……。
わりとよく、イヌと仲良くしている夢を見る。イヌ恐怖症のくせに、不思議なものだ。
夢の中ならイヌ好きなのかもしれないーーそう思いながら、まだ残る眠気をかき消すように目をこすった。