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夢日記  作者: 葵枝燕
二〇二三年
16/19

狐が落ちる道(二〇二三年一月二日)

 こんにちは、葵枝燕です。

 連載『夢日記』第十六回でございます!

 この作品は、何か面白い夢見た、これは誰かに伝えたい、記録に残しておきたいーーそう個人的に思った夢を、書いていくものとなっております。

 今回は、二〇二三年一月二日に見た夢です。今回の感想を一言で言うなら——これ、何か暗示してないよね?、でしょうか。

 前回の更新が二〇二二年五月十一日なので、約八ヶ月ぶりの更新ですね。

 ちなみに、これが正真正銘の初夢となるのですが……ほんと、こんな夢見て大丈夫でしょうかね?

 ぼかして書きましたが、動物の亡骸が出てくるのと、それに対してあまりよろしくない感情を抱いているので、苦手な方はご注意ください。

 そんなわけで。『夢日記』、今年は初めて、そして、約八ヶ月ぶりの更新でございます。

 もしよければ、私の見た夢の話にお付き合いくださいませ。

 新年最初だし……と、紫陽花モチーフの袴風ワンピースルームウェアを寝巻きに選んだ。生地が厚めなので、寒い時期に着る方が合っている一品である。本当は付属の腰紐も結ぶのであるが、見つからなかったので今回は身に付けなかった。

 そして、だいぶ前に注文して使う機会をうかがっていた香水を、両手首に吹きかける。名前にはRose——薔薇とつくくせに、鼻腔をくすぐったのは瓜の香りだった。その香りに、思わず眉間に皺が寄ってしまう。

 去年から隣室で寝ている姉と会話を交わしていたら、〇時を過ぎていた。スマートフォンに入れている日記アプリに、手早く元日にあったことを書き留めて、横になった。


 そして、こんな夢を見た。


 私は、道を歩いていた。そこは、幼い頃通っていた保育園へと続く細道に入る細道だった。坂道と坂道に挟まれた窪地の道である。その道を、かつて公民館が建っていた場所に向かって、私は歩いていた。

 坂の途中で、何やら工事が行われていた。オレンジ色の土が露出した険しい崖のようになっているそこに、作業をしている年配の男性が一人いた。

 そして、そこを通り過ぎた私は、その光景に出会した。

 そこにあったのは、一匹の狐だった。茶色と橙色を混ぜたような体色に、太い尻尾の先は黒色で、口を少し開け、目をぴったりと閉じて、コンクリートの地面に横たわっている。その狐の命が既に尽きていることを、私は感じていた。感じたままに歩き続けた。立ち止まることもなく、弔いの気持ちを抱くこともなく、恐怖を感じることもなく、ただ歩き続けた。

 だが、そこにいたのは、その狐だけではなかった。

 十メートルほど進む毎に、同じような狐の亡骸が横たわっていたのだ。横たわるその姿勢こそ違えど、そのどれもが既に息絶えていることだけは感じた。そのどれもを見ても、私はチラリと目をやるだけで、ただ歩き続けていた。

 やがて私は立ち止まった。そこは、曲がり角の隅っこにある土地だった。コンクリートで覆われてはいるがデコボコとし、石も転がっているそこは、駐車場なのか、空き地なのか、判然としない。しかしどうやら、そこが私の目的地だったらしい。

 私は、その土地に向かって、どこから取り出したのか青い毛布を拡げた。そこから転がり落ちたのは、一匹の狐だった。先ほど散々見てきた狐達と同じくその狐も、口を少し開け、目をぴったりと閉じている。それでも、このときまで私は、目の前のこの狐が生きていると思っていた。

 毛布を回収しようと、引っ張ったときだった。私の目は、狐の(でん)()へと吸い寄せられた。そこには、おびただしい数の蜘蛛(くも)のような小さな虫がいた。

 それを見て、私は思った。

 この毛布、洗わなきゃいけないじゃないか——と。

* * * * *

 そこから、私はどうしたのか、再び元来た道を戻るように歩いていた。先ほどと同じ、オレンジ色の土が露出した険しい崖のようになっているそこを、私は登り始めた。


 目を覚ましたのは、隣室で寝ている姉に起こされたからだった。そんな姉に、「変な夢見たぁ」と返事にならない言葉を返す。

 頭に浮かんだのは、道を進む毎に落ちていた狐の亡骸達だ。狐という生き物は、神使——神様の使いだといわれている。そんな生き物の亡骸、しかもかなりの数見かけた、あの光景ははたして何かを暗示しているのだろうか。もしかして、よくないモノなのではないだろうか。そう考えたが、調べて追究しようとは思わなかった。

 以前は母と姉の寝室、最近は母一人の寝室となっている部屋から、鳴り響く子機の音がした。おおかた、母の仕業だろう。

 私は、枕元に置いていたスマートフォンを手に、布団から出たのだった。

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