特殊能力(二〇二二年五月十一日)
こんにちは、葵枝燕です。
連載『夢日記』第十五回でございます!
この作品は、何か面白い夢見た、これは誰かに伝えたい、記録に残しておきたいーーそう個人的に思った夢を、書いていくものとなっております。
今回は、二〇二二年五月十一日に見た夢です。今回の感想を一言で言うなら——こんな特殊能力あったとして役に立つのかな?、でしょうか。今回の夢をモデルに、小説書いてみたい気もします。
前回の更新が二〇二二年一月二十三日なので、約四ヶ月ぶりの更新ですね。
ちなみに、作中に出てくる「私が在学していた頃の母校Y小学校の体育館」は、私が卒業した後に建て替えられたため、今は実在しません。
そんなわけで。『夢日記』、今年は二回目、そして、四ヶ月ぶりの更新でございます。
もしよければ、私の見た夢の話にお付き合いくださいませ。
図書館で何度も借り直ししている小説の第一章まで読みきったところで、栞を挟み、本を閉じて枕元へ置く。そうして、何度直しても下によってしまう羽毛布団をかぶった。扇風機をつけた状態でそれをやるのはどうなのかと思うのだけれど、扇風機をつけないと暑いし、かといって、羽毛布団をかぶらないと弱風設定だというのにまだ寒く思えるのだ。
そして、こんな夢を見た。
私は、どこかの学校の体育館にいた。舞台があって、その下にパイプ椅子なんかを収納する引き出しが入っているスペースがある。なんとなく、私が在学していた頃の母校Y小学校の体育館に似ているような気がした。
体育館で遊んでいると、体育館の窓の向こうをベージュ色の軍服をつけた男達が歩いているのが見えた。彼らはどうやら敵らしく、体育館にいた人達が慌て始めた。
壁の向こうに異空間をつくる能力がある私は、咄嗟に舞台下のパイプ椅子などを収納している引き出しが入っているスペースに近付き、その扉に手をついた。本来ありえないはずだが、その指先は扉の向こうに沈み込んだ。黒い波紋が拡がる。私はそのまま、人が一人通れるくらいの入口をつくる。そうして、体育館内にいた人々に、ここに入るよう告げた。
次々に異空間に入っていく人々に、慌てないようにと声をかけながら、私は扉に沈み込めた指先を外さない。外してしまえば、入口は閉じてしまい、次に開いたときにはどこに繋がっているかわからないという、確信があったからだ。
しかしそのとき、敵方らしいあのベージュ色の軍服を着た男が一人、体育館内に入ってきた。しかし、私も含めてみんなが思った——「この人は、自分達を殺さない」、と。私達は、彼にも異空間に入るように言った。彼は、疑問を口にすることも、反対することも、何もしないまま従った。
* * * * *
私は、全員を異空間に入れた後で、自分もそこに入った。そこは、真っ白で、思ったより広さも高さもある空間だった。ただ、家具等の設備は一切ない。木製の格子がついた窓があるきりだった。私は、空間の奥、窓がある壁に背を預けて座った。
* * * * *
私は、ふと天井を見上げた。そこには、ヒビ割れている箇所がいくつもあった。時折、石の欠片のようなものが降ってくる。拾い上げ、裏返すと、小さな黒い丸いものが付いていた。それは、ホワイトボードなんかについているマグネットに似ている気がした。なんとはなしに、背後の壁につけるとくっ付いた。どうやら、この空間は、磁石の付いた白い欠片が集まってできているらしい。
私は真横にいた誰か——今思えば、見憶えのない人なのであるが、なぜか親しげに話していた——に、「ちょっと天井低くするね」と告げて、集中した。天井が無駄に高い気がして落ち着かなかったからだ。しかし、なかなかうまくいかず断念した。
* * * * *
しばらくして、この空間に唯一ある窓の向こうを人が通った。サッカーのユニフォームと思しき揃いの服を着た少年達だ。その誰もが、金髪で、欧米系の顔立ちをしている。その少年達のうち一人が、ふざけてなのか壁を叩いたとき、その向こう側にあるこちら側の壁がたわんだ。近くにいた人が、驚いて飛び退く。「大丈夫ですよ。向こうからこちらは見えていないはずですから」と声をかけたのだが、少年達が楽しそうに笑っているのを見ると、もしかして、こちらのことを知られているのではと、心配になってしまったのだった。
* * * * *
もうそろそろ、ここから出てもいいだろう——私達はそう判断し、この異空間から出ることにした。私が最初に出て、異空間と向こう側の世界を繋げる。そして、そのまま人々を、異空間から元の世界に脱出させたのだった。
廊下の向こう、母と姉が寝ている部屋から音がする。聞き慣れた、子機の着信音だ。おおかた、階下にいる両親の誰かが、私を起こすために鳴らしているのだろう。
私は、夢の中の光景を思い出していた。当然、といっていいかはわからないが、私には壁の向こう側に異空間をつくる能力はない。もし、この手を壁についたとしても、手は沈み込まないだろうし、異空間をつくることもできないだろう。それに、一度入口を閉じてしまうと、次に開いたときどこに繋がっているかわからないなんて、不充分というか、中途半端な気がする。
でも、なんだか……おもしろい夢だった——と、思えてきた。
私は、子機の音を止めるために起き上がった。ただ、まだ眠気はあった。きっと二度寝三度寝をするに違いない——そう思いながら、私は眼鏡をかけて、部屋を出たのだった。