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死というお仕事  作者: 水奈
3/3

ぴかぴか

 闘技場がすごく騒がしくなってくる。

 すごくでっかい建物らしいのだけど、それを揺らすくらい大きな声。

 みんな興奮してる。



 遠くから人の話し声が聞こえた。

 今日最後のけんとうしさんだ、鎧がピカピカしている。

 すごく大きな剣を背負っていて、体も筋肉ばかりだ。

 今日の2人よりとても強そうに見える。

 ぼーっと眺めているとピカピカのお兄さんが話しかけてきた。


 「やあ、久し振りだね。相変わらずだね君は」


 ん? 前に会ったのかな?

 全然思い出せない。


 「うん? 前にも会いましたっけ?」


 素直に聞いてみる。

 子供の特権だ。


 「うん、これで6回目だ。☓☓という。いい加減覚えてくれないか、こちらも面倒だ」


 ☓☓さん。

 ☓☓さん。

 よし覚えた。


 「☓☓さんですね、お久しぶりです。元気してましたか?」


 と言ったら笑いながらおでこをコツンと殴ってきた。


 「調子がいいな相変わらず」


 そう言われても思い出せないんだもの。

 こう言うしかないじゃない。


 「6回目ということは随分勝ってるんですね」


 「まあな、俺は強いからな。というか君は俺の勝った姿を毎回見ているはずだが」


 「そういえばそうですね。毎回かっこいいですよ」


 また殴られた。

 うーん、私が覚えていないのがいけないのかなあ。

 でも毎回忘れられているのにこの人は優しい。

 勝者の余裕?


 「☓☓さん、死ぬのと生きるのってどっちが楽しいんですか?」

 

 扉を見ていた彼の目が急にこちらを向き、私はびっくりして椅子から転げ落ちそうになった。


 「今日は突飛な質問するな、何かあったのかい?」


 「いえ、なんとなく気になっただけです」


 そう、なんとなく気になっただけ。

 別に意味なんて無い。

 会話しなくてもいいなら別に聞いたりしないと思う。


 「気になっただけねえ……」

 

 言葉をなぞるようにつぶやいている。

 何か彼の気にかかるようなこを言ったんだろうか私は。


 「俺の立場だから言えるが生きるのも死ぬのも辛いと思う。ただ死ぬような状況で生き抜くことができると楽しいと思うよ」


 「けんとうしさんらしい答えですね」


 これが戦闘狂? ってやつなのかな。

 ここにくる大人達はちょいちょいこういう人がいる。

 

 「じゃ逆に質問するよ。君は生きるのと死ぬのどっちが楽しいと思うんだい?」



 どっちが楽しい?

 自分が質問をしといて何も考えていなかった。


 生きるのも別に楽しいとは思わないし。

 死ぬのは痛そうだから嫌だ。


 でも生きたいって思ってるわけじゃない。

 死んでもいいと思ってるのかな?


 死ぬと天国に行くって言うけどほんとかな?

 天国ってなんだろう?


 天国に行っても意識はあるのかな?

 だったら死んでも辛いままじゃないのかな?


 

 おっさんの声がした。

 試合が始まるみたいだ。

 ぴかぴかさんは腰を上げ、扉に向けて歩いていた。

 何か言わなきゃと思ったけど、その前にぴかぴかが背中越しに言う。


 「お前の歳じゃ分からねえだろ。俺でもよく分からねえよ。ま、頑張りな」

 

 扉がしまりぴかぴかの姿が見えなくなった。




 なんだか不安になってくる。

 ぴかぴかなら何か答えを持ってるかも。

 持ってなくてもヒントくらいはもらえるかも。


 何が不安なのか分からない。

 何か分からないことが不安なのかな?

 不安ってなんだろう?

 死ぬこと?


 じゃあ死ねば不安はなくなるのかな?

 でも死ぬとどうなるのかわからない。

 どうすればいいんだろう。




 その日ぴかぴかは扉から返ってこなかった。

 

 今日できた友達、2人。

 今日できなかった友達、1人。

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