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ー赤ずきんちゃん、赤ずきんちゃん。ー


ー赤ずきんちゃんは、ー








昔昔の話です。

ある村には赤ずきんちゃんと呼ばれる娘が一人いました。金色の髪を持ち、頭に赤いずきんを被る彼女を周りは赤ずきんちゃんと、親しみをこめて呼んでいました。


赤ずきんちゃんは、明るく優しい娘でしたので、村の皆から可愛がられていました。



ある日、お母さんが言います。



「赤ずきん、森に住むおばあさんにこれを届けてちょうだい。」





渡されたバスケットにはワインにパン、チーズが入っています。いつもは、お母さんと一緒に行くのですが、今日に限ってお母さんは忙しく一緒ににいくことはできないのです。



「分かってるわよね、赤ずきん?」



「森の小道からはずれない。寄り道しない、でしょ。」



「わかってるならいいわ。」




お母さんに見送られて、赤ずきんちゃんは森の奥に住むおばあさんの家に向かったのです。









ーどうして、一人ぼっちなのー



ー誰も僕を信じてくれないからー



ーどうして、誰も信じてくれないのー



ーそれは僕が・・いけないことをしたから。ー



ーいけないことってなぁに?ー



ー・・・・ー



ー変ね?貴方はとても優しく見えるのに。ー











赤ずきんちゃんは、てくてくと歩いて行きます。風が赤ずきんちゃんの顔を撫でていきます。楽しくなった赤ずきんちゃんは、今度はスキップをしながらいくので森の入口に、あっという間につきました。


いつもお母さんと来るために気付かないのですが、森は鬱蒼と生い茂り、森の小道以外は暗くなっています。


赤ずきんちゃんは急に怖くなりましたが、森の小道だけを通れば大丈夫だと自分を励まします。


お母さんと一緒に行く時は、いつも森の小道を歩いており、それで怖いことなど一度もおこったことはないのです。


恐る恐る森への一歩を踏み出しました。もう一歩、もう一歩と歩き始めますが、怖いことなど何も起きません。



「ほら、大丈夫。何も怖い事なんてない。」



よく見れば木漏れ日が、宝石みたいに輝いています。その下には、可憐な紫のはなが咲いています。


耳をすませば、小鳥のなく声が聞こえます。


優しい花の香りもどこからか、漂います。紫の花以外にもきっと花が咲いているのでしょう。


どうして、怖いなんて思ったのでしょう。森はこんなにもいろいろなもので満ちているのに。











ーどうして、赤ずきんは、あんな奴らと一緒にいるんだい?ー



ーあんな奴らでも、私の両親だからよ。ー



ーあんなに赤ずきんを馬鹿にしてるのに?昨日も叩かれてたじゃないか。ー



ー別に貴方には関係ないでしょ。そんなりっぱな口をもっているのに、そんなことしか言えないわけ?ー



ーご、ごめんなさい。言い過ぎた。ー



ー謝らないでよ。ー



ーごめん。ー



ーだから、謝らないでっていってるでしょ。その役立たずな口を縫い付けてあげましょうかー



ーうわっ、やめてよー



ーほらっ、こっちに来なさいよー



ーいやだよーだー










しばらく道を歩いていると、赤ずきんちゃんの目の前にあるしげみが、揺れだします。


こんなことは、始めてで赤ずきんちゃんは急に不安になりました。



「誰かいるの?」



茂みに向かって声をかけます。すると、茂みの揺れがおさまります。


「ああ、いるよ。怖がらせてしまったかな。すまない。」



声が返ってきたことに赤ずきんちゃんはほっとします。その声が村の皆のように優しい声だから、赤ずきんちゃんはさらに茂みに向かって声をだします。



「ううん、大丈夫。あなたは何をしているの?私はこれからおばあさんの家に行くの。」



「私は、そうだな。散歩をしていたんだ。だけど帰り道が分からなくなってしまってね、散歩をしながら帰り道を探しているんだ。」



「迷子さんなのね。お母さんが、言っていたわ。迷子になったら動かないでじっとしていなさいって。そうしたら、必ず見つけるからって。」



「優しいお母さんだね。」



「うん。でも怒るとすごーく怖いの。」



「ははっ。そうか。でも、きっとそれは君を愛しているから怒るんだよ。」



「えっー。そうなのかな。だってすっごく、本当に怖いのよ。『赤ずきん、何をしているの』って。私いつも泣きそうになっちゃうの。」



「あかずきん?今、君は赤ずきんといったかい。」



「?そうよ、私は赤ずきんだけど?」



止まっていた茂みがまたゆれだします。



「そうか、そうか。君が・・。」



茂みからの声は小さくなっていたけれど、赤ずきんちゃんには聞こえていました。少し怖かったけど、あまりにも悲しそうな声だったので、赤ずきんちゃんは茂みに一歩近づきます。



赤ずきんちゃんが泣いている時、お母さんが優しく髪を撫でてくれるようにしてあげたいけれど、茂みが邪魔で出来ません。でも、撫でることはできなくても、近くに誰かいれば悲しみがやわらぐことは知っていました。悲しい時、一緒にいてくれたお婆ちゃんのように。













ー貴方と一緒にいたい。村に帰りたくない。ー



ーでも、君は村の子供だ。僕とは違う村の子供。ー



ー何が違うというの。私と貴方はそんなに違うの?ー



ー違いすぎるよ。さぁ、もう夕方だよ。赤ずきん。もう帰らなきゃ。ー



ー貴方はいつも、そうよね。私と貴方の間にはたった一歩しかないのに。こんなにも遠い。私は、貴方といたいのー




ーバイバイ、赤ずきん。また明日。ー



ーバカ。ー







ー知ってる。ー






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