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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第五章:勇者の召喚
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一時協力

副題は、二人の関係。

「私達はとある組織、のようなものに所属している。そこに裏切り者、と言うべきかタカ派と言うべきか、ともかく危険思想を持った奴が居たんだ」

「察するに、そいつが離反したから追ってきた、って感じ?」

「そうだな、その認識で構わない。私達は王都にてそいつがこのティーラウスの遺跡に向かっているという情報を手に入れた、だからここまでやって来たんだ」

「マジでここに来ているのか?」

「それに関しては裏付けが取れている、少なくとも数日前にティーラウスに来たのは確かだ」

「そこから考えて対象は既にこの遺跡に潜っているはず、そういうことか」

「そうだ。ああ、一応確認しておきたいのだが」

「私達は誰とも会っていないな」


 ここに来るまでにそれらしい人物に会っていないか、それを聞きたいのだろうと判断したケイが先に答える。


「ああ、俺もだ」

「僕達もだね、となると」

「この先にいることは確定か」

「あ、目的は捕縛? それとも抹殺?」


 ナルの口から告げられた、軽いのに物騒な言葉にテーリアは若干考え込む。


「…状況によるな、一応は捕縛の方向で動いているが」

「そう、…ケイ?」


 ナルに、どうする? という視線を向けられたケイは軽く頷く。


「そうだな、テーリア次第だが協力してもいいだろう」

「…何故だ?」

「君とは知らない仲ではない、それに」


 いぶかしげな表情を浮かべるテーリアの傍により、ケイは彼女にのみ聞こえるように耳元で囁く。


「(おそらくだが、協力した方が私達のとっても得だろう?)」

「(……貴方たち個人としてはどうだろうな)」

「(十分だ、その答えで協力する理由が出来た)」


 個人としての利は少ない、しかし全体としての利はある、そういうことなのだろう。


「で、どうする?」


 彼女から離れ改めて問いかけるケイ、テーリアは彼と、彼の背後で優しく微笑むナルを見て決心したように深く頷く。


「…頼む」

「承知した、構わんな?」

「勿論だよ」

「どっちでもいいさね」

「同じく」

「ケイさんに任せます」


 ケイの問いかけに、当然だがナル達からは反対の声は上がらない。


「クロブチも、ここは」

「分かっております」


 唯一断る可能性もあったクロブチのこの場では他に手は無いと判断したのか、表面上は素直に共同を受け入れるのであった。



 同行者二名増やして最深部を目指す一行。もうすぐそこでありこの先にトラップらしいトラップは仕掛けられていないと知っているナルはテーリアと会話を交わしていた。その様子を見ていたクロブチは何を考えているのかむっつりとしているが、二人の様子を見ていたもう一人は傍らに立つ主に小声で話しかける。


「…のう、主殿」

「あん?」

「テーリア殿は、ナル殿に懸想でもしているのか?」

「あー…、たぶんな。まあ本人から確認取ったつーわけでもねえけどよ、態度的にそんな感じだろうさ」

「ほう」


 と、言葉だけで表すとまるで恋話に興味津々なようにも取れるが、ソフィアの目は鋭く二人の背を刺している。ここだけとるとまるでソフィアがナルに、という風にもとってしまうかもしれないがこれまた異なる。彼女がナルとテーリアの間柄を知りたがる理由、それは…。


「してナル殿のほうは?」

「ナルねえ、アイツそっち方面はちょっとなあ、疎いとか鈍いとかそういうんじゃないけどよ」

「ふむ?」

「ただ、ミチちゃんが来てからちーっとばかしそこら辺の価値観が変わったっぽいからなあ、後もう一押しあったら何か変わるかねえ」

「…よう分からん」


 ユウの説明は抽象的過ぎてどうにもピンと来ない、おそらくナルと付き合いが長いもので無いと分からないだろう。


「こればっかりはアイツと、アイツに惚れているの次第だからなあ、外野がいらん口を挟むわけにもいかんわな」

「…しかしのう、主殿」

「なんじゃい」

「本当に良いのか? あの者、おそらく」


 その先を告げようとするソフィアの口を、ユウは手でそっとふさぐ。それに問いかけるような視線を向けてくる彼女に対し、ユウは肩をすくめることで答える。


「んなこと百も承知だっての、それも含めてアイツら次第ってこった。ま、悪いようにはならんさ。何てったって、アイツは俺の親友なんだぜ?」

「……それもそうかも知れんのう」


 理屈などかけらも無いのに何故か説得力を感じてしまうその言葉に、ソフィアは一先ず傍観の視線を取ることにしたのであった。



「この先だ」


 さらに進み、ようやく一行は最深部手前にまで辿り着く。通路の先にケイ達が以前に見た景色がある中、周囲の気配を探ってみるが。


「…気配は無いな」

「件の相手の戦闘能力はどうなん?」

「戦闘能力はたいしたこと無いと聞いているが、クロブチ?」

「少なくとも気配を完璧に絶てるほどではないはずです」


 それが真実なら、対象はいないということなのだろう。何故いないのか、それが疑問なのだが。


「居ねえなら居ねえでいいさ、さっさと行きましょうかね」

「少しは警戒しようよ、本当」

「今更だな、行くぞ」


 警戒もせずにずんずんと進むユウに苦笑するナルと、いつものことだと彼に続くケイであった。


 そんなこんなで最深部、転移装置の設置された部屋につく。まず一番死なないであろうユウが先行して中に入り、その後警戒しながらケイが入り調査を始める。二人と部屋の様子から前のようなことは起きないだろうと判断したナルも二人に続いて部屋に入る、久しぶりに若干緊張しながら足を踏み入れるが、特に何も起こらなかったので胸を撫で下ろした。


「ふう、今回は誤作動しないみたいだね」

「そうそうされて困る、またここに来るのは面倒この上ない」

「まったくだな、…んで?」

「大丈夫だ、前回のようなことは起きない」


 転移装置ならびに遺跡全体のシステムをチェックしながらケイはそう告げる、既にケイはここのシステムのおおよそを掌握出来ているので彼がその辺りは断言できる。


「なら問題ねえか。おーい、お前さんらも入って来い」


 ケイが断言したことを確認してユウは部屋の外で待機していたノエルたちを呼び込む、一応事前に説明を受けているノエルたちはともかくテーリアたちは何故ここまで警戒していたのか分からないようだ。


「えらく警戒していたな、貴方たちにしては」

「まあね、前回潜った時にちょっとあったから」

「ふむ…?」


 気にはなっているようだが自分達も秘密にしていることが多い所為か、そのことについてテーリアは深くは聞かない。それよりもと彼女の興味は部屋全体、というか件の相手の所在に向く。


「しかし、誰もいないな。奴は何処に行った?」

「…ダチ公」

「待て、今調べている」


 既にケイはそのことについて思い至っていたのであろう、ユウが問いかけるよりも先に彼はシステムの調査を始めている。


「ナル、ケイは何を?」

「転移装置の調査だろうね、ここ最近何かを跳ばしていないかの」

「転移装置だと…!?」


 ナルの言葉にようやくここにあるものの正体を知ったテーリアとクロブチ、それほどまでに転移装置というものは貴重な代物なのである。


「…奴の狙いはこれだったのか? だとすると奴は何処に?」

「ケイ」

「待て、今出る。…ノックスだ、昨日そこに何者かを転移させた記録がある」


 ケイが皆に告げた場所、それはトルキア王国東部の大都市であった。


 はい、…今回も特に書くことは無いですね。ではまた。

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