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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第五章:勇者の召喚
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合流はあっさりと

副題は、巨大だろうが敵でなし


「さってと、次はダチ公達と合流しなきゃな」

「そうだね、たぶんどこかで合流は出来るんだろうけど」


 通路の合流地点で再会した二人はそんな会話を交わす。先ほどの魔法のことなどまるで気にしていないことにノエルは引っかかっていたが、常識外だしとあっているが若干失礼なことを考えていたりする。


「戦力を集中させておくに越したことはねえからな、さっさと行くかね。ノエルちゃんもそれでいいよな?」

「え? ええ、それはいいんですけど…」

「ん? 何かあったかね?」

「今思いついたんですけど、あの時回収した通信用も人工魔具は使えないんですか?」


 考えている最中にふっと思い浮かんだ疑問を口に出した、しかしそれを聞いたユウとナルは一瞬怪訝な表情を浮かべる。あれ、間違っていたかな? と不安になるノエルであったが少し考えたナルがポンと手を叩く。


「そうか、君は知らないのか」

「ああ、そういうことか」

「え?」


 ナルの言葉を聞いたユウも納得がいったのか頷いているが、ノエルはちょっと置いてけぼりだ。


「遺跡内では通信用の類の魔具は使えないんだよ、こいつが」

「そうなんですか?」

「使えるんだったら最初から使っているっての、ダチ公が気付かないわけ無いでしょ?」

「…ああ、それもそうですね」


 ユウのその発言に心底納得がいったのかノエルは深く同意する、確かにケイがそのことを見落とすことなど無いだろう。


「基本的に遺跡はその手の奴は妨害されて使えないんだよね、掌握した遺跡ならともかく」

「一応有線なら繋げられるみたいなんだがな、まあ分かるだろ?」

「さっきみたいなトラップがあると維持するのはきつそうですね」

「費用もかかるし、そこまでする理由が無いんだよねえ」


 例えば壁が変形する様なタイプのトラップがあった場合それに巻き込まれて損傷してしまうかもしれない、大体そんな手間をかけてまで設置する必要性がないのである。


「だから前回潜った時も修理の完了を待たなかったのさ、意味無いから」


 そもそも通信が出来ても遺跡の性質上強引な合流が出来ないのだからそこまで意味が無い、まああくまでナルたちの場合であるが。正直一人だけでも遺跡攻略が出来ないことも無い三人だ、率先して合流しなくてもどうとでもなる。だから緊急時でも無い限り三人とも通信をすることはなかったりする、無くても意外とどうにかなるものだ。


「そういうことでしたか、納得です」

「そんじゃ、改めて合流目指して進もうかね」



 そうして疑問の解消も済んだところで三人はまだ通っていない通路の方に進む。その後何度かゴーレムたちの襲撃やトラップの発動もあったが割愛させてもらう、ナルかユウのどちらか一人でも片手でどうにかできるのに二人がそろっては語るようなこともなくなるのだ。肝心なのは、


「ノエル」

「ケイさん!」


 ようやく、ケイ達とも合流できたという一点のみだ。


「問題は、ないようだな」

「はい」


 ノエルの様子をざっと見て大事はなかったと判断するケイ、続いて錘を任せることになったナルのほうへと視線を向ける。


「ナル、どうだった?」

「ん、冒険者になってからの期間を考えれば十分な強さだった、くらいかな」


 知識面はともかくとして戦闘能力は申し分なし、といった評価だ。きちんと自分から知ろうとしていることや考えているという点を考えれば先に期待できる、つまりまだまだ伸びる。ナルから見たノエルの総評はこんなところだろうか、そうケイは受け取った。


「そうか、ともかく助かった」

「うん」


 詳しくは語らなくても察する、そういう関係なのだ、彼らは。



「主殿」

「ソフィア、問題はなかったよな?」

「当然じゃの」


 ユウとソフィアの再会は実にあっさりとしている、ナル達三人もそうだが今更長々と喜び合う様なことでもない。付き合いこそ長くないもののこの二人の間柄もそういうことだ、言葉はなくとも伝わるものはある。


「んじゃいい、行くさね」

「うむ」



 再会はあっさりと、そしてその後の道中はそれ以上にあっという間に進んで行く。並み居る敵やトラップを難なく排除していき、遺跡の奥へ地下へと進んで行く。そして随分と大きな空間に着く、前回の経験からして最深部の三歩手前ぐらいの場所だろうか。そこにはやはりゴーレムが防衛のために存在していた、しかし今までとは大きく違った点があった。


「…大きいですね、10ムルぐらいですか?」

「そうだな」


 そう、ノエルの言うとおりそのゴーレムは見上げるほどの巨躯を持つ特別なタイプであった。人間というよりはサルやゴリラの方が近いだろうか、大きな拳を地面につけて前のめりに立つそれはその場に入って来たナル達をじっと見つめ臨戦態勢をとっている。


「さて」

「俺が腕を壊すか」


 ケイの呟きにユウが一歩前に出た、こういったデカブツの相手はユウが一番適している。壊しがいのありそうな大物相手にガツンと両の拳をぶつけるユウの隣にソフィアが立つ。


「ならば、妾もその手伝いをさせてもらおうか」

「…あいよ」


 いつもとはまた違った展開にユウは楽しげに口角を上げる。


「じゃあ僕がコアに、ケイは後詰を頼むね」

「了解した。ノエル、君は見学だ」

「はい」


 流れるように決定した戦法、ソフィアとノエルといった新たな要素はあるがナル達はこれまでの基本を崩さず作戦を決定する。ユウが先鋒、ナルが追撃、ケイが止めを刺すという三人の基本形だ。


「んじゃ行くかね、【火よ、風よ、闇よ! 我が右手に破壊の力を宿せ!】」


 三黒でもいいがそういう気分であったのかユウはソフィア戦でも見せたように拳に精霊魔法を宿す、それを見たソフィアはニヤリと笑った後同じく精霊魔法を行使する。


「なら妾も、【火と、風と、闇の精霊たちよ! 我が右手の破壊の力を宿し給え!】」

「…こいつは」


 ユウがかつて彼女にぶつけた魔法、開幕の狼煙のなった一撃。彼女用にマイナーチェンジされているようだがそれは確かに彼のみが使ってきた魔法であった。別段教えてもいないのに何時の間にやらものにしていた彼女に、ユウは一瞬だけ驚いたような顔を浮かべるがすぐに心底面白そうな顔を浮かべていつものように笑う。


「くっかか」

「ふふん」


 愉快そうに笑うユウと主の驚く顔を見て得意げな顔をしていたソフィア、二人は一瞬顔を見合わせて不敵な笑みを浮かべた後。


『参る!!』


 声を合わせてそう叫び、ゴーレムに向かって駆け出した。



 迫ってくる二人に対しゴーレムは両の拳をぶつけることで迎撃しようとする。


「ダブル!」


 それに対して二人は全くひるまずにむしろゴーレムの拳に向かって真っ向からぶつかりに行った。


「デッド!」


 迫る拳、二人は同時に飛び上がり右の拳をゴーレムの拳にぶち当てた。


『ナックル!!』


 ドガン!! と大きな音を立てて二人の拳とゴーレムの拳がぶつかり合う。一瞬だけ力がつりあったように見えたものの、ピシピシとゴーレムの拳から腕に向かって亀裂が走っていく。そして、ユウとソフィアはさらに先に突き進む。ゴーレムの腕を完膚なきまで破壊しながら、ゴーレムの後方にまで飛びぬけた。地面に着地し互いに不敵な笑みを向け合う二人の後ろで、腕をなくしたゴーレムがドシンドシンと暴れ始めた。


「派手だね、まったく」

「歌舞伎者が増えたな、ナル」

「分かっているって」


 無駄に派手なことをする二人に若干呆れたような声をあげつつ、ナルはアイテムボックスから取り出した長剣をブンと音を立てながら投げた。長剣は両手を破壊され無防備なゴーレムの頭部に突き刺さった、がゴーレムは未だに動きを止めない。


「おっと、浅かったかな」


 双剣だったら上手く行っていたかな? などと考えながらナルはケイに向かって口を開く。


「ケイ、頼めるかい?」

「承知した」


 そう言ってケイは駆け出す、彼はゴーレムの足元まで来るとゴーレムの暴走を気にも留めずその巨体の所々を足場にして駆け上がる。ケイはゴーレムの肩の辺りまで一気に駆け上がると飛び上がり、ゴーレムの頭部に突き刺さっている長剣に後ろ回し蹴りを放った。


「ふっ!」


 蹴りが突き刺さり剣はさらにその刃を奥に沈める、その一撃でコアにまで到達したのかゴーレムは硬直の後ゆっくりとその巨躯を床に倒した。


「…すごい」

「ま、これぐらいはね」


 思わずといった感じで感想をこぼしたノエルに向かって、ナルはおどけたようにそう言った。


 はい、先週は更新出来ず申し訳ありません。今回は特に言うことも思いつかないのでこれで。ではまた。

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