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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第五章:勇者の召喚
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いつものこと

副題は、合流一歩手前

「さて、片付いたか」


 納刀しながらケイが呟く、彼の周りには大小様々なゴーレムの残骸がゆうに十は転がっている。


「さすが、速いのう」

「君もな、なかなかに強い」


 ケイの腕前を褒めるソフィアにしたって同じくらいの残骸を生み出している。


「この程度であればどうとでもなろう、しかし見事な切れ味じゃな」

「これには自信があるからな、君も随分とまあ豪快な戦い方だ。さすがはエンシェントドラゴン、人の姿であってもその身体能力は健在か」


 刀でゴーレムの頭部を斬るまたは突きで破壊していたケイと異なり、ソフィアは己の拳でガンガンとゴーレムの頭部を砕いていった、いかに人の姿をしていようともエンシェントドラゴンとしての能力や力などは変わらないのである。


「妾は割と異端児な方じゃがのう、他の兄弟はもっぱらブレスや魔法の方を重視しておる」

「ふむ、なら何故君はそうなったのだ?」

「さての、ただ肌に合ったというだけじゃ」


 身内に限らずソフィアの知っているドラゴンのほとんどは魔法等による遠距離戦を好む、彼女のようにとりあえず格闘戦を選ぶという者とは戦ったことが無い。だと言うのに何故今のスタイルをとっているのかというと、何となくとしか言えないのである。


「そうか、我が友と同じようなことを言うのだな」

「主殿もドラゴンの姿である妾相手にまず殴りかかってきたからの」

「そういう男だ、射撃よりも殴り合いを好む。少々効率的ではないが私には出来ないことをやってのける、私には必要な友だよ。無論ナルもな、アイツもまた私にとってなくてはならない友だ」


 そう言ってケイはフッと微笑む。決してその友情に皹が入ることなどありえない、いずれは違う道を歩むことになるだろうが袂を分かつことだけは無い。ケイは、そしてナルとユウも、そう信じているのだ。


「ふむう、お主ら三人の絆は随分と堅そうじゃな」

「当然だ。…さて、そろそろ行くとしよう」

「そうじゃな、早く合流したいものだの」

「うむ」


 そうして二人は、さらに通路の先を目指すのであった。



 所代わって、ユウのみがいる通路にて。


「ったく、きりがねえな。前に来たときこんなに多かったか?」


 黒剣をブンと振り回しながらユウはぼやく、既に十数のゴーレムを砕いたというのにまだまだ通路の奥から湧いてくるのだ。


「そうでもなかったよな、つーと?」


 前回との差異を考えながら剣を振るっていく、その一薙ぎ一薙ぎで豪快にゴーレムが粉砕されていく。そんなことが数分続けた後ユウの表情に苛立ちが浮かび始める、この動きの無い現状にいい加減面倒くさくなってきたようだ。元より彼はこういったちまちまとした戦闘は好きではないのである、常に無駄に派手にやるのが彼の好みとするところだ。


「面倒くせえ、一気に決めるか。黒槍!」


 黒剣を大きく振り下ろし近くに居たゴーレムを一掃した後、黒剣を一度戻す。その後再び三黒が一つ、黒槍を呼び出し投げの体勢にはいる。ぐぐぐと力を込めるユウの身体にバチバチと白い光が生じ始める、それは徐々に勢いを増し黒槍に纏わりつく。


「雷剛槍、空砕!!」


 白い光を纏った黒槍を前方のゴーレム軍に向かって豪快に投げる、黒槍はすさまじい勢いでゴーレムの大群に迫る。槍に直撃したゴーレムは言うに及ばず、直接は当たらなかったゴーレムたちも槍から放たれる雷にその身を砕かれる。轟音と共に通路を飛ぶ槍が通った後には無数のゴーレムの残骸が残るのみであった。


「…さってと、先を急ぎましょうかねっと」


 満足げに頷きながらユウはゴーレムたちの墓場を歩く、いつの間にやら戻ってきている黒槍で軽く肩を叩きながら。



 何事もなくゴーレムたちを破壊した後、通路を進むナルとノエル。しばし進んだところで通路が左右に分かれていた。どちらに進もうかと相談しようとしたところで目の前の通路を左から何か黒い物体が高速で飛翔して行った。


「うおっと」

「きゃっ! な、何ですか一体!?」

「ああ、これはユウの仕業だよ」


 驚きの声をあげるノエルに対してナルは冷静に言う。一瞬のことではあったがあれは確かに黒槍であった、長い突き合い故その程度はすぐに分かる。


「とりあえずこっちの方向にユウがいるはずだから、【光の矢】」

「え!?」


 今度はこちらに対して驚くノエルを余所に、ナルは黒槍が飛んできた方向に向かって魔法を放つ。


「よし」

「あの、ユウさんがいらっしゃるのでは?」

「これならこっちの存在に気付いてくれるからね、誤射される心配は無いよ」


 ユウのいる方向に向かって魔法を撃って大丈夫なのかと心配するノエルに、ナルは若干ずれた答えを返す。


「いえ…、その…、ユウさんの安全は?」

「ん? 大丈夫、大丈夫」


 ちょっと恐る恐るになりながらもう一度直接的に質問をするノエル、しかしナルは何でもないと言いたげに手をふらふらとさせながら答える。


「はあ…」

「それじゃ、早速行こうか」


 今やったことなど気にも留めず魔法を放った方向に歩いていくナル、それについて行きながら。


(やっぱり、この人も何処か変ですね…)


 ケイやユウほど濃くは無いが、やはりおかしい。そんな若干失礼なことを思うノエルであった。




「ん? っと」


 歩いていたら飛んできた光の矢、それを槍で難なく弾きながら頷くユウ。


「ナルか、ならこのまままっすぐ行こうかね。ダチ公とソフィアもいりゃあいいんだが」


 そんな風に、怒るでもなくいつものことと流して先を進むユウであった。




「…そうか、分かった。テン、トッサイ男爵、下がれ」

「はっ」

「…」

「……ジャンド」


 自信満々な表情を隠すことも出来ずに下がる男爵と無言で下がる少女、二人が下がった後皇帝は傍らに立つ物心ついたときからの親友の名を呼ぶ。


「何でしょうか?」

「どう思う?」

「トッサイ男爵の私を見る目がまあ露骨でしたな、何を考えているのか丸分かりです」


 侯爵であり宰相でもある、その上皇帝からの信頼を得ているジャンドを妬むものは多い。それゆえ取って代わろうとしたものなど掃いて捨てるほどいる、まあそのことごとくは排除され己が行いを後悔することとなったのだが。


「うむ、不相応な野望だ」

「それと、あの少女は危ういですな」

「お前もそう思うか」

「ええ、あれは未来を見ていない目です。死を望み、そして死を招く目です」


 勇者などと紹介されたテンと名乗る少女、その名に従うのであれば力強い存在であるはず、しかし二人の目にはとても危うい存在に見えていた。


「かもしれんな。…それにしても、トッサイ男爵はあの娘を掌握出来ていると思っているようだが、そんなに素直な娘には見えん」

「ですな、おそらくあのテンという名前も偽名でしょう。名を使った魔法の警戒をしているのか単なる偶然か、何にしてもいずれ反旗を翻しそうですね。しかしそれまで無事に生きているかどうか、いかが致します?」

「それとなく見張っておけ、深入りはしなくて良い。おそらく何もせずとも良い方向に行くだろうさ、あやつらによってな」


 フッと皇帝は笑う、彼の脳内には三人が彼女を救う光景がありありと浮かんでいた。


「あやつら? …なるほど、ありえなくは無いですな。しかし出会うでしょうか?」

「そういう星の下に生まれている、それがあの三人だ」

「そうかもしれませんな」


 そう締めて、ここで国を治め守る二人は他国で暴れているであろう三人の無事を祈るのであった。




「…まあ、あやつらが死ぬとは思っておらぬがな」

「ですな」


 はい、単なるつなぎ回です。で、ちょっと私用で忙しくなるのですみませんが当分の間週一更新になります、申し訳ない。これ以降当面は日曜のみの更新となると思いますが次の日曜はもしかしたら更新できないかもしれません、その時は申し訳ありません。ではまた。

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