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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第五章:勇者の召喚
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ゴーレム

副題は、真っ二つ。

「…あれ?」


 十数分ほど歩いただろうか、何の特徴も無く面白みのない通路にノエルは違和感を覚えた。


「気付いたかい?」

「え? ええと、何かがおかしいのは分かるんですけど…」


 何かを感じ取りはしたのだがその正体がいまいち分からない、先ほどまでと何が違うのだろうか。ノエルの心にもやもやっとしたものが生まれる。


「あれ? 違和感だけだったのか。実はね、この通路広くなっているんだよね」

「…あ!」


 ナルの言葉にノエルは驚きの声をあげる。確かに言われてみれば先ほどまで通路の幅は精々三人が並んで歩けるかといった程度であったはずなのに、いつの間にかその倍弱にまで広がっている。結構な変化であるはずのそれに今の今まで気づかなかったのはゆっくりと滑らかに幅が広がっていたからだ。アハ体験という言葉が一番分かりやすいだろうか。あれも最初と最後を見比べればすぐに分かるのに連続して見ると意外と気がつかない、今回もそれと同じように途中の一点で切り取らないとなかなか気がつかないのだ。


「でも、何でこんな風な仕掛けがされているんでしょうか?」

「分からないでも無いけど意図がちょっとね、普通に広げればいいと思うんだけど。これも遺跡製作者の茶目っ気なのかな?」


 冗談のようにナルは笑いながら言うが実はそんなにふざけた解答ではない、前にケイも説明していたが遺跡の存在理由の可能性などを考えるとありえない考えではないのだ。ただまあ元の説からして信憑性はそれほど高くないので実際のところどうなのかというのは分からない、ノエルも少々困惑気味だ。


「は、はあ」

「おっと、お客さんのようだね」

「え? …あの、遠くにいる奴ですか?」


 ノエルの反応に苦笑していたナルであったが通路の先を見て表情を引き締める、彼の発言にノエルも視線を向けてみれば遠くに何かがいるのが分かる。


「そう、何だか分かるかな?」

「ちょっと遠くて…、四足歩行の何かでしょうか?」


 さすがに少々遠すぎる、ぼやっとした輪郭は分かるがその程度だ。そもそもノエルはその何かに対する知識を持っていないので意味が無いと言えば意味の無い質問であるのだが。


「さすがに遠いか、あれはゴーレムだよ」

「ゴーレム?」

「遺跡の守り手たち、作り手の意のままに動く人形って所かな。特徴として痛覚の類はなくて、いくら損傷しようともコアが残っている限り命令を実行しようとする」

「コア?」

「ゴーレムの身体を動かす核のことだよ。コアは基本的には頭部に、少なくとも身体の中心線上にある。身体全体に命令を行き渡らせるのにそれが最も効率がいいからね、下手な位置に置くと身体が上手く動かないらしい」


 中心線以外に設置すると四肢への命令伝達の速度に若干の差が出てしまう、そのため全体の動きがぎこちなくなってしまうのである。ざっくりとした作業のために作られたというのならまだともかく、仮にも戦闘用として作られたものにその差は致命的ということだろう。


「対処法なんかは?」

「コア以外を傷つけても結局のところ無駄だから最初からコア狙いで良い、頭部を破壊するのが分かりやすいかな」

「なるほど、分かりました」

「つまり、【光の矢】」


 こちらの接近に気付いたのか近づいてきた二体のゴーレムの頭部に二条の白き矢が迫る、ナルの放った魔法の矢はゴーレムの頭部を貫き破砕する。今の今まで走って来ていたゴーレムはその一撃を受けてガクンと動作を停止した。


「基本的にはああすればいい、もし頭部にコアがなければ中心線上を適当に叩いて。可能ならゴーレムを縦に真っ二つにするのが一番楽だけど、出来る?」


 向かってきたゴーレムのさらに向こうにいたのであろう二体のゴーレムがこちらに向かってくるのを見ながらナルはノエルに問いかける。


 それにしても、簡単に言っているが真っ二つなど早々出来るものではない、…とはいえケイとユウ、そしてナルは全員可能なのだが。まあケイは突きか横一文字、ナルも魔法か突きで破壊することが多いので実際唐竹割をするのはユウぐらいなのだが。その当人も別に真っ二つにしているというよりは武器をぶん回した結果そうなったと言うのが多かったりする。


「ゴーレムの強度はどのくらいですか?」

「ゴーレムの作成に使われた材料次第だけれど、大体は普通の鋼鉄ぐらいの強度かな。君の障壁魔法の切れ味はどうだい?」

「…たぶん、出来ます。一度やらせてみてください」

「ん、だったら一体は僕が受け持つからもう一体をお願い」

「はい」


 結構な無茶振りをするほうもするほうだが出来ると判断できる当人も当人である。言っておくが二人ともちゃんと根拠があってこんなことを言っているのである、何かといえばそれはケイだ。ケイが同行を認めたのだからこの程度のことは可能なのだろう、二人ともそう判断したからこそ無茶振りのキャッチボールをやっているのである。まるでケイが過大評価されているように感じるかもしれないが彼と深く付き合えばこういう判断をするようになる、実際ケイもそれくらいは出来ると考えてノエルの同行を許可しているのだから。


「ノエルさん」

「はい!」


 向かってくるゴーレムに向かってナルが駆け出す、彼はそのまま前方のゴーレムを飛び越えて後方のゴーレムの頭部を取り出した剣で破壊する。ノエルもこちらに向かってくるゴーレムに向かって焦らず障壁を飛ばす、縦に飛ぶ障壁は走ってくるゴーレムの中心を通過したところで役目を終えて消失する。それと同時に走って来ていたゴーレムの身体が二つに分かれた、彼女の障壁がゴーレムを切ったのだ。


「…やりました、か?」

「そうだね、お疲れ様。正直ここまで切れ味がいいなんて、ちょっと意外だったよ。さすがはケイの弟子って所かな?」

「いえ、まだまだです」


 感心したようにパチパチと軽く拍手をしているナルに対してノエルは首を振る、自分にはさらに先があると分かっているからだ。


「人のお弟子さんに口出しをするつもりは無いけど、分かっているなら問題ないか」


 慢心する様子は無いかとナルは軽く頷く、ケイが見出した以上その程度とは思っていなかったが一応といったところだ。



 そのノエルにとって初の対ゴーレム戦をすませて再び歩き出すと今度はゴーレムではなく扉にぶち当たった。両開きの扉の先からは何かの動く音と、ノエルにはまだはっきりとは分からないが一応魔力を感じる、おそらくはゴーレムのものなのだろう。


「…さて、ノエルさん。この先にもゴーレムがいるみたいだけれど、何体いるでしょうか?」

「…五体?」


 ほとんど勘で答えたノエルの解答にナルは首を振る。


「残念、正解は」


 言いながらナルは扉の傍のスイッチを押す、徐々に扉が開いていく向こうに見えたゴーレムの数は。


「十四体、十体は僕がやるから四体はよろしく」

「はい!」


 こちらに対して臨戦態勢をとっているゴーレムたちに向かって、二人は駆け出した。


 はい、軽い戦闘回です。…特に説明することも無いですかね、精々話が短いということぐらいかな? ではまた。

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