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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第五章:勇者の召喚
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分断

副題は、遺跡の目的

「ノエルさん、大丈夫かい?」

「はい、大丈夫です。それにしても、こんなことになるなんて」


 落ちた先、ナルとノエルしかいない部屋で彼女はそう口に出す。先ほどまで五人で行動していたというのに何時の間にやらたったの二人、初見である遺跡の罠にノエルは驚きの声しか出せない。


「ごめんね、ちょっと油断していたよ。君としてもケイと一緒の方が良かったんだろうけど」

「いえ、そんなことは」

「ま、あの場でケイが君のフォローをしなかったということは僕に任せたからだろうけど。彼のことだからこれもいい経験になるとか思ったんじゃないかな」

「ああ、なるほど。確かにそうかもしれませんね」


 遺跡三層目を攻略中、突如開いた床と降りた隔壁のために分断された一行。ナルとノエルは前者の影響で下の階層に落下することとなったのである、ちなみにナルが上手くフォローしたのでノエルにも怪我は無い。


「それにしても、結構大変なんですね、遺跡攻略って」

「うーん、ここは難しい部類に入るから基準にはしない方がいいよ。難易度で言うと上の中ってレベルかな」


 少なくともパーティーの分断を図るような罠がある時点で中の中程度には分類される、この遺跡の場合は他にもヤバイ仕掛けがいくつかあったりするので難易度は高めだ。


「そんなに高いんですね」

「だから口が裂けても初心者用とは言えないね、まあ今回は空気を感じるぐらいにとどめた方がいいと思うよ」

「そうします、…この後どうします?」

「そうだねえ」


 二人の視線の先、そこには扉があった。決して広くは無いこの部屋にあった唯一のもの、あからさまにここを通れと誘導している。


「ま、素直に誘導されこうか」

「分かりました」


 後述するが下手に遺跡の壁などを破壊できない以上他に道は無い、だったら素直に進んで障害があれば突破することにする。よほどのことが無い限り、むしろよほどのことがあったとしてもどうにかできる実力をナルは持っているのだ、一人未熟者を抱えた程度なら正面突破ぐらいは可能だ。




 扉を開けた先、それなりに長そうな一本道を歩きながらノエルが口を開く。


「ナルさんたちは一度攻略済みなんですよね?」

「一応ね、前はこんなトラップは発動しなかったけどね」

「そうなんですか? って経験あったら引っかかりませんよね」

「まあケイがいるからね、僕だったら忘れちゃったりするかもだけど」


 一度認識したことは決して忘れない、それがケイだ。だから彼がいる限り一度経験済みの罠に引っかかるということは無い、というかケイは今回の罠に気付いていたのだが命の危険は無いと判断したのでそのまま発動させていたりする。ケイに限った話ではないが解除よりも喰らった上で喰い破るのが好きな面々である。


「遺跡の罠ってどういう条件で発動するんですか?」

「うん? まあ色々だよ、時間だったり進入だったり。前回これが動かなかったのは前に誰かが動かしていたからかもね」

「なるほど」


 そんな風に遺跡についてだったり他の事についてだったり、景色に変化が訪れるまでの間二人は話を続けるのであった。





 隔壁が降りた先、ソフィアはケイに話しかける。


「しかし、なにやら面白い組み合わせになったのう」

「同感だな、どうやらノエルはナルと一緒になったようだ」


 一緒になったと言うか誘導したというか、ケイは実践主義の先生である。


「主様だけ一人か、まあ主様は一人の方が動きやすかろう」

「ストッパーがいないということでもあるがな、とはいえ遺跡の直接破壊はせんだろうからかまわんか」


 一人にしておくと破壊能力に磨きがかかるのがユウだ、基本的に誰かがそばについていないと嬉々として出鱈目なことをする男である。とはいってもやってはいけないことは理解しているので早々馬鹿はやらないだろう、いくら気分で禁止事項を実践することのあるユウでも本気でまずいことはやらない、はずである。


「そういえばケイ殿、どうして遺跡の壁を破壊せんのだ? これにしたって壁や床を破壊すれば合流出来ように」

「いや、基本的に遺跡に対する必要以上の破壊はご法度になっている」

「ほう?」


 遺跡攻略中に思っていた疑問、何故やってはいけないのかとソフィアは小首を傾げる。どうでもいいが注釈をしておくとソフィアは遺跡についてそこまで詳しくない、元々遺跡攻略は冒険者の間でもそう一般的でないので冒険者ですらないソフィアはそのあたりについて興味を持って調べたことが無いのだ。


「かつて最短距離で進もうとして遺跡の破壊を試みた者達がいたそうだ、結果から言うとその遺跡は崩落した」

「崩落? 多少壁を壊したところで崩れるほど遺跡というのはちゃちなつくりなのか?」

「いや、壁の破壊が直接の原因では無い。壁の破壊を感知した遺跡が自らその身を崩したのだ」

「自ら?」


 その表現に眉をひそめるソフィア、その疑問はもっともだとケイは軽く頷いてから話を進める。


「ああ、その後の調査の結果そう考えなければ崩壊するはずが無いという結論が出た。それからも数回同じような試みがなされたのだが、その全てにおいて同様に遺跡は崩落している。ここから遺跡というものは元よりそのようなつくりになっているのだと研究者たちの間で結論が出ている」


 壁の破壊による全体への影響量、そして何より遺跡の防衛システム解析の結果からそうであると結論付けられている。しかし何故そのようなつくりなのかという点に関してはまだまだ議論の決着がついていない。


「ふむ、しかし何故そのようなつくりになっているのだろうな」

「一説には遺跡は侵入者を排除するものではなく侵入者を選別する施設だと考えられている、遺跡の崩落はルールを破ったものたちへの制裁なのかもしれん」

「…ルールを守らぬものたちには挑戦する資格が無い、そう判断されて挑戦の機会そのものを破壊したと」

「あくまで説の一つだがな、ただ非殺傷の罠しかなく遊びのような遺跡もあることから無くは無いと考えられている」

「なるほどのう、遺跡の宝は試練をクリアしたものに対する報酬のようなものという考えもあるか」

「そうだな、守る為のトラップなのか越えさせるためのトラップなのか、どちらで見るかで変わるだろう」

「面白い話じゃ」


 そんな遺跡に関する雑談をした後、二人は他の三人との合流を目指して遺跡の奥へと進んでいった。




 そして、一人隔壁の向こうに追いやられたユウは。


「やれやれ、どうにも最近は個人行動が多い気がするねえ。ま、適当に進みましょうか」


 そう一人呟いて、頭をかきながら奥に向かって歩き出したのであった。






 ティーラウスよりも東、大都市ノックスのギルドにて女が受付で何語とかの手続きをしている。


「……」


 そんな女の姿をじっと見る男に、相棒は肩を叩きながら声をかける。


「何だよ、気になったのかよ?」

「馬鹿言え、やべえから気になるんだよ」


 良く見れば彼の目は鋭く、間違っても女を口説こうとする目ではない。むしろ何かを警戒している時の目である。


「…どういうこった?」

「この辺りで盗賊が出ているってのは知っているよな? 何でもあの女がそいつらを壊滅させたらしい」


 その言葉に相棒は目を丸くする、聞いた話ではその盗賊団は二、三十名はいるとの話だったのだが。


「はあ? あの女が、まさか一人でか?」

「ああ、気絶した十数名の男たちを縛って引きずってきたらしい、残りも申告のあった場所で死亡していたそうだ。今カウンターにいるのは多分報奨金の受け取りだろうな」

「…何者だよ、あの女」


 若干の恐れと共に呟かれた相棒の言葉に、男はかぶりをふる。


「さあな、それが分かったら苦労しないさ」

「どうする、声をかけるか?」

「止めとこう、迂闊に触れるのはマズイ」


 自分達の手には余る、男はそう判断して接触しないことにする。しかし露骨にならない程度に視線を向け続けていると、女は二人の近くを通ってギルドの外へと出て行く。


「…ん?」

「どうした?」

「いや、何でもない」

(手の甲に何か…?)


 すれ違った瞬間に女の手の甲に何かが見えた、そう思った相棒だったが深くは気にも留めず相棒と一緒に今日の仕事を探すのであった。




 ギルドの外に出ると陽光を全身に感じる、今日はいつもよりも空が青く見える。


「ふう、何だかんだと時間がかかってしまいました」


 そう言って彼女は左手で日差しを遮りながら空を見上げる、その手の甲には円とその中に牙を見せる狼が描かれていた。


 はい、最近なかなか文が書けません、暑いからかな? まあともかく、本編についてですが一気に遺跡の中に放り込みました、過程は端折ります。それと後一つぐらい街中のイベントを考えていたのですがカット、話が進まなくなるので。次話は…、どうなるのかな? ではまた。

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