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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第五章:勇者の召喚
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修理

副題は、設計

 ギルドマスターの名についてのやり取りに何故か気の抜けてしまった一行はギルドの外に出る、今の時間はお昼前と言ったところか。当然だが今からすぐに遺跡に潜るわけにもいかない、なので次はどうしようかと言いそうになったところでナルはあることを思い出した。


「あ、ミヌイ君のところに行かないといけないんじゃない?」

「ああ、そういやそうだな」

「ミヌイ君?」

「この街で生活用品の開発をしている男だ、同時に人工魔具の製作者でもある。遺跡に入る前に私達は彼に人工魔具の修理の依頼を出していたからな、それの回収をしなければならない」


 ミヌイとはこの街で知り合った仲だ、街をふらついていた時に彼の工房にお邪魔したことがあり、その時から付き合いが始まった。彼はナル達よりも若いが知識の豊富さと腕は確かでこの街の外にも名前が知られているほどである、ただ彼の専門分野の都合上ケイ達は名前を知らなかったが。


「ケイ殿なら修理ぐらい出来るのではないか?」

「可能だが時間の無駄だ、他の出来る人間にやらせて私達は別の用事を済ませた方が効果的だ」


 ユウから聞いた話からケイなら出来るだろうと判断して問いかけたソフィアにケイは当然とばかりに頷く、実際彼の才能は全方位に向かっており大抵のことは可能である。ただし彼が動くのは他に手が無いときや自分がやった方が早いときのみで、今回のように他に使える手があるのならそちらに任せることが多い。


「それもそうじゃの」

「修理を依頼した魔具って何ですか?」

「通信用のそれだ、それがあれば合流も楽だったんだろうがな」


 彼らが修理に出したのはギルドにあるような大型ではなく手のひらサイズの、まあケータイサイズのものだ。小型で携行性に優れている分通信可能距離は狭いというのが一般的な小型の通信用人工魔具の特徴なのだがナル達の持つものはケイが手ずから設計開発をしており、国内であれば基本的には繋がるようになっている。これには以前ナルが使用していた人工衛星を利用しているのだが詳しくは割愛する、ちなみに人工衛星と言ってもそんな大きいものではなかったりする。ついでに言うと、既に分かっているかもしれないがこの辺はナルのアイデアだ、彼は設計こそ関わっていないものの役立つアイデアをいくつか出している。ちなみにユウも要所要所で口出しをしていたりする、これが存外馬鹿に出来ないアイデアを出す時があるのだ。


「ま、今更言っても仕方ねえさ。さっさと回収してついでに宿もとらねえと」

「それもそうだね、二手に分かれる?」

「んじゃ俺が宿を探す方に回るわ、そっちは任せる」

「私達もそっちの方がいいですね」

「妾は主殿とは別行動の方がいいか」

「でしたら私はユウさんのほうに行きましょうか」

「私はケイさんについていきます」


 結果としてケイ、ナル、ノエル、ソフィアがミヌイの元に、ユウ、ミチ、ニーナ、ザインが宿を探すこととなった。


「決まったな? では解散」


 その言葉で一行は二手に分かれ、それぞれの目的地に向かうのであった。





「ミヌイ、いるか?」


 その言葉と共にこれの工房の戸を開ける、そこにはナル達よりもいくらか若いかと思われる青年が椅子に腰掛け何かを読んでいた。


「お? おお、ケイとナルじゃないか、行方不明だって聞いていたけど大丈夫だったようだね。ん? ユウとは別行動かい? それに知らない女性が二人も、一体何があったんだい?」

「相変わらずよく喋るやつだ、説明するから少し待て」


 矢継ぎ早に話す彼に軽く苦笑しながらケイは簡単に近況を説明する、それをミヌイはと時折相槌を打ちながらふんふんと話を聞いていた。


「へえ、いろいろあったんだね。あ、あれの修理は完了しているよ、それはもうばっちりね」

「助かる」

「それにしてもなかなか面白い構造だったよ、相変わらず君の才能はすごいね。ああ、知ってしまったから少しは参考にするかもしれないけど丸々模倣することは無いから安心してくれ、随分とお金は貰っているし僕にも作り手としてのプライドがある。そもそも僕の専門は生活に役立つ安い人工魔具の製作だ、どうしても開発資金がかかる通信用の人工魔具は製作意欲が湧かないさ」


 後ろを向き依頼品を探すミヌイ、その口は全く止まることなく長々と喋り続けている。腕は確かで人柄もいいが話が少々長いと評されるのが彼だ、まあ話しながらでも全く他の作業に支障が出ないのはすごいのだが。


「相変わらずだね、信用できるからいいけど」

「はい、これね」

「確かに」

「うん」


 受け取った魔具を軽く動かす、どうやら預けておいた三台全て何の支障もなく動作しているようだ。専門分野で無いにもかかわらず完璧に仕上げている点から見てもミヌイの実力が分かるというものだ、そもそもそうでなくてはケイ達が預けたりなどしないのだが。


「ああ、そうだ。ケイにちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「私に?」

「そうそう、今書いている設計図についてちょっと意見を聞きたいんだ。これなんだけどね」


 そういって取り出した設計図、それには魔法陣もいくつ書かれており人工魔具の設計図であることが見て取れる。ケイは一瞬目を通しただけでそれが何の設計図なのか、どういった問題があるのかを理解する。


「ふむ、コストを取るか効果を取るかか」

「さすがだね、ここを書き換えればコストは落とせるんだけど効果が弱まる。でもこっちを書き換えるとその逆になる、どっちがいいと思う?」


 設計図の中の二点を指しながら説明するミヌイに、ケイは別の一点を指す。


「むしろここを書き換えて両方を満たすというのはどうだ?」

「え? ど、どう書き換えるんだい?」

「それはだな」


 そう言って横においてある紙につらつらと書いていく、それを見ているミヌイの表情からしてよっぽど意外で、そして効果的なものなのだろうと分かる。


「なるほど…、こんな方法が」

「どうだ?」

「うん、これならいけそうだ」


(…ああ、エアコンなのか、これ)


 熱のこもった会話を続けるケイ達を余所にじっと設計図を見ていてようやく理解したナルは内心呟く、見た目や理屈はともかく機能だけで言えばそれは紛れもなくエアコンであった。完成の際にはどんな名称をつけられるんだろうなどと思いながらナルは口を開く。


「ケイ、僕はユウのほうに行くよ。正直僕には分からない話だからね」


 単純に言えば暇なのである、内容は分からないでもないがそこまで興味も無いというのがナルの正直な心境なのだ。


「なら妾も行こう、その方が合流も容易い」

「助かるよ、ノエルさんはどうする?」

「残ります、何となくですが」

「そっか、じゃあ後でね。合流の時には」

「ああ、分かっている」


 通信用の人工魔具を軽く振って見せ、ナルとソフィアはユウ達と合流する為に工房を離れるのであった。






 グリエル帝国帝都、その城の謁見の間にて。一人の中年男性と一人の歳若い少女が膝をつき臣下の礼をとっていた、彼らが頭を下げる先には二人の男がいる。玉座に座り二人と見下ろす男とその傍らに立つ男、この二人こそグリエル帝国皇帝、ルフ・カイゼ・グリエルと宰相、ジャンド・コルタ・キサル侯爵であった。


「その者が?」

「はい、この方こそ我らに救いをもたらす勇者様にございます」


 皇帝の問いかけに中年男性、トッサイ男爵は恭しく頭を下げながら傍らの少女を紹介する。その顔には隠しきれないほどの優越感がにじみ出ており、彼が少女の存在に絶対の自信を持っていることが分かる。トッサイ男爵のその様子に皇帝は軽く眉をひそめた後少女の方を見やる。


「ほう…、名は何と言う?」

「テン、と申します」


 皇帝からの問いかけに、少女は顔を上げその名を名乗った。


 はい、遺跡にはまだ入りません。多分次回入ることになるかと思います、暑くていまいち筆が乗らないのが難点。ではまた

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