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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第四章:三人の合流
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夜会襲撃

副題は、速攻反撃


「ふむ、悪く無いのう。さすがに良い腕を雇っている」

「だな、」


 誰も寄り付かぬ一画、そこにユウたちはいた。何故ユウたちの周りにだけ人が居ないのかというと、先のやり取りのせいで下手に触れると火傷ではすまないということを否応なく思い知らされたからである。それに加えて、それでも繋がりを持とうとした貴族数名がめっためたに振り払われたので、もう触らぬ神にたたり無しが周囲の共通認識になったのである。そのためユウたちは煩わしい会話やらに関わることなく夜会を過ごせているのだが、それを悠然と受け止められているのはユウとソフィアの二人のみ、他の者達は呆れていたり萎縮していたりととても料理を楽しめるような状態ではない。


「ん? どうした、お前達も食っとけ。こんなもん早々食う機会は無いからな、せっかくあちらさん方も声をかけてこないんだから」

「…いや、よく言えますね、あんなことしでかしておいて」


 呆れたようにザインは言うが、ユウは片手をひらひらとさせながらそれに返す。


「知るかい、俺たちを利用しようとするからだっての。勝手に人の名声を利用しようとするハゲが悪い」

「ハゲって、あの人ハゲてなかってですよ」

「…ふふっ」

「ニルさん、そういう問題ではありません」


 ノエルのずれたツッコミにミチは軽く笑い、ザインは頭を振りながら逆にツッコミを入れる。どうやらこの場にいる面子で正当なツッコミはザインただ一人であるらしい、他はユウとどっこいだったり世間知らずだったりで期待できない。


「まあその辺はどうでもいいが、…少々妙な雰囲気では無いかの?」


 ソフィアがここまでの話をばっさりと切り落とし、後半は声を潜めて言う。


「確かになあ、お前ら、俺から離れるなよ」

「妙って何がですか?」

「はい、ザイン君」

「はい? …ああ、先ほどからそこかしこから気配を感じます、それも警護にしては少々おかしな場所に」

「はい、正解。つまりどういうことか分かるかい、ノエルちゃん?」

「ちゃん…? ええと、警護にしては変ならその逆、暗殺とか?」


 急な振りに対応したザインとノエルに軽く頷きを返すユウ、ちなみに彼が年下の女性を呼ぶときはちゃんづけで呼ぶことが多かったりする。


「ん、そんなところ。要は変なのが隠れているっぽいから油断しなさんなよって話、特にミチちゃんやニーナちゃんは戦えないから誰かにくっついときなさいな」

「それって城の人に知らせなくて大丈夫なんですか?」

「この程度に気付かないようじゃ教えたところで対処できるわけも無いと思うけどね、まあナルがミリア様に伝えたっぽいから大丈夫なんじゃね?」


 さっき視線をやったときにナルがミリアに何事かを耳打ちしているのは見ている、その後ミリアが兵に声をかけていたからおそらくは大丈夫だろう。色々と雑なように思えるがそもそもユウからしたら城がどうなろうとも関係ないのである。


「か、軽いですね…」

「ケイさんの仰っていた通りの人みたいですね、ユウさんって」

「どう聞いたのかは見当がつくがよ、ってんな場合でもねえか。とにかくミチちゃんとニーナちゃんは他にくっついとけ、ザイン、ノエルちゃん、護衛は?」

「私はそこまで、撤退の援護等ならまだ出来ますが」

「一応は出来ますが状況判断はまだ不慣れでして…」

「なら二人で合わせてそっちの二人を守れ、俺とソフィアはその場のノリでいく」

「うむ、分かった。…のう、主様、どれくらい助ける?」

「適当でいい、というかこの面子が誰も傷つかなきゃ後はどうなろうとかまわん」

「良いのか?」

「ここに居なくて守る必要がある奴にはケイとナルがついている、俺らが気にするべきなのはここにいる奴だけでいい。別にここにいる十把一絡げが幾らくたばったところで俺らが不利益を被るこっちゃねえからな」


 きっぱりと言い切るユウにある意味清々しさを感じつつソフィアは頷く。


「まあそれはそうじゃの」

「それで、お嬢ちゃんたちは何か言いたいことはあるか? 基本的に俺の考えは突っ込まれるもんなんだが」

「ケイさんからユウさんの言うことにはとりあえず従っておけと言われていますし、未熟な私が口を挟むようなことでも無いと思います」

「正直ここの人たちに思い入れは無いですからね、ミリア様達はともかく。かといって人が傷ついたり死体になったりを見たいわけじゃないので出来ればそっちは勘弁して欲しいでけど」

「私としてはお嬢様の身の安全が最優先ですから」


 思いのほか女性陣がこちらの言うことに反対の姿勢を見せなかったことに拍子抜けするユウ。


「物分りがよくて助かるわ、…全員、構えろ」


 急に戦闘体勢をとるユウを見て、皆それに習い各々の役目を果たす準備をする。その数秒後、天井から、窓から、数十名の影が現れる。


「…キャー?!」

「何事だ!?」


 特徴の無い服と覆面で身を隠す影たちの登場に、一瞬の硬直の後夜会の場に悲鳴や驚愕の声が響く。


「貴様ら、何者だ!?」

「構え!」


 誰何に答えず影の一人がそう叫ぶ、その声を聞いて影たちはそれぞれ無言で得物を構える。


『…』


 そんな彼らを見てザインは何時でも動けるように待機しながらユウたちに囁く。


「あの目、あの少女と同じですね」

「と、なると、だ」

「誘拐された者たちであろうな、となると手加減せねばならんか」

「基本不殺でいくしかねえか、やれやれ、苦手なんだがな」


 そう言って彼らが指針を決めたところで、


「やれ!」

『…』


 影達が動き出した。



「通しませんよ!」


 ノエルが障壁魔法で自分とミチたちを囲む、影たちの攻撃はそれに阻まれ中の彼女たちには通らない。


「すごいわね…」

「頼りになります」


(…まだまだ、か)


 ミチ達の感想を余所にノエルは自分の働きをそう評価する。二人ばかし護衛対象が増えた程度で身動きが取れなくなるうちはまだまだ、この状態で十分に反撃できるようにならないと。そんな風に思いながら今はこれに専念する、攻撃は彼に任せて。


「ここで霧を使うのもよろしくないですね、と、なれば」


 そう呟き、ザインは駆け出す。影達もそれに反応はするが腕を掴まれて投げ飛ばされる、その先には別の影がいて二人して倒れこむ。


「仮にもAクラス、それなりに腕に覚えはあるのですよ」


 そう言いながら魔法を使わずに体術のみで制圧していく、ユウたちに隠れるが十分に強いザインである。



 バチッ! と音がして影達が倒れこむ、その後ろにはユウが居てため息をこぼしながらぼやく。


「っと、やっぱ苦手だわ」


 そんな彼の傍で影の一人の腹部を殴りつけながらソフィアも同様にこぼす。


「ふっ! やれやれ、確かにの」


 互いに火力はあるが手加減が苦手な二人である、そうは言っても手早く影たちを制圧していく様は速い。



「ミリア様、僕の後ろに」

「すまん、頼らせてもらう」

「狙いは、っと、ミリア様じゃないですね」


 影たちの襲撃をカウンターでいなしながらナルはミリアを庇う、動けないことに僅かに苛立ちながら。


「そのようだな、だとしたら誰が狙いだ? 兄上は席を外しているし、狙いが分からん」


 影達の攻撃は手当たり次第、誰かに重点的に攻撃をしているわけでも無いし狙いがよく分からない。


「ナル、ここ以外に不穏な気配はあるか?」

「断言は出来ませんが一応はありません、囮かどうかは微妙なところですね」

「ならば、こいつらの目的は何だ…?」



 会場に戻ったケイ達を出迎えるのは逃げ出す人々とそれを追う影、そのうちの一人を蹴り伏せながら後ろに控える伯爵に告げる。


「私の後ろから出ぬようにな、伯爵」

「はっ」


 誰も注目していないので普段通りに話す二人、二人はゆっくりとこの騒ぎの中心を目指す。


「!」

「おっと、勝手をされては困るな」


 時折他の者たちへの攻撃を防ぎ、元を断ちながら。




 当初の予定に無い反撃、本来であればろくな抵抗もなく制圧できていたはずなのに。思ったとおりの結果になっていないこの現状に最初に号令を飛ばした男は苛立ちを隠せない。


「ええい、何をてこずっている!?」

「俺たちに、さ」


 その声に振り向くとそこにいたのは一人の男、その顔を確認するよりも速く顔を掴まれ視界を失う。


「!?」

「沈みな」


 その言葉を最後に男の意識は闇に落ちる。


「安心しろ、殺しゃしねえからよ。ま、死んだ方がマシかもしんねえけどな」


 そう呟いてユウは周りを見渡す、そこにはもはや戦闘と呼べるものは存在していなかった。



 はい、夜会終了回です。ちょっと忙しいため突貫で書いた今話、多分いくらかおかしなことになっているでしょうがまあ温かい目で見てください。それと今話からこの章の終わりまで駆け足で行くつもりですのでご了承ください、いつまでもこの章に拘りすぎるわけにはいかないのです。ではまた。

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