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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第四章:三人の合流
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夜会の始まり

副題は、一発かます

 王城にあるパーティーホールにて、夜会は開催されていた。現在は主催者であるコラワ王子の挨拶までの待ち時間といったところで、そこかしこで貴族達による世間話やら腹の探りあいやらが行われている。


 その一画で友好的な貴族三人がなごやかに互いの近況を話し合っていた、そんなときに兵に紹介されながら入場した一人の女性、ミリア王女に三人の視線は集まる。


「…おや、ミリア様、相変わらずお美しい」

「まったくですな、…む? あのエスコートをしている男は誰だ?」

「見たとこの無い顔ですね、彼は一体…」


 ミリア王女のエスコートをしている一人の青年に彼らのみならず会場の多くの視線が集まる。その多くに心当たりがなかったので彼を訝しげな目で見るが、一部の人間はその正体に気付き内心驚きの声をあげる。


「…まさか、あれは」

「ご存知で?」

「おそらくあの“双剣奏々”でしょう」

「“双剣奏々”!? それは本当ですか?」

「以前見た覚えがあります、…しかしSSがミリア様の」

「あの様子、ミリア様と彼は友好的な関係のようですな。つまりはミリア様にはSSがついているということになりますな」

「ふむ、となるとミリア様はかなり強力なカードを手に入れていることになりますね。あれはご兄弟に対してもさぞ効果があるでしょう」

「ですね、しかも“双剣奏々”は“疾風両断”や“蹂躙闊歩”と行動を共にしていると聞く」

「つまりミリア様には三人ものSSと交友があると?」

「しかしこの夜会はコラワ様主催のもの、そちらとのつながりの可能性は?」

「いえ、以前あの三人はコラワ様といさかいを起こしています。その線は無いかと」

「だがコラワ様は彼の出席を利用するのではないだろうか」

「するでしょうな、SSがおとなしくそれを受け入れるとは思えませんが」

「…では一先ず静観の姿勢をとらせてもらいましょうか」

「そうですな」

「今はそうさせてもらいましょう」


 彼らがこの夜会に出席した理由、それも分からないままに下手に動くのは自殺行為になりかねない。彼らを知る者たちはこういった判断の元一先ずは待ちの姿勢を貫くことにしたのであった。



 そして当のミリア、ナルの二人はというと、挨拶対応に追われていた。


「ミリア様、ご機嫌麗しく」

「テケラ伯爵か、そちらも息災のようだな」

「ええ、…してそちらの男性は? 随分と親しくなさっているようですが」


 不審そうな、あるいは侮っているかのような視線を向ける。伯爵である自分が知らないイコール少なくとも上位の貴族では無いと判断して見下しているようだ。その視線の意味に気がついたミリアとナルはむしろ普段どおりの態度でその正体を告げる。


「ああ、紹介が遅れたな。こいつはナルだ」

「初めましてテケラ伯爵、僕の名前はナル、ギルドランクSSにして“双剣奏々”の二つ名を持つ者です」

「SS!?」


 聞き耳を立てていたのであろう、彼らの周りがざわめく。それを見ながらミリアはナルに耳打ちをする。


「(随分と自信満々に言えるのだな、普段とは少々違う)」

「(あまり趣味ではないですけどね、今はこの方がいいでしょう?)」

「(確かにな、そう言うお前も悪くないぞ)」

「(ありがとうございます)」


 自分の発言をスルーしてくれたことに内心不満に思いつつ、ミリアは目の前の思い上がりに釘を刺す。


「分かったか? この男は本来であれば私ですらかしずかなければならない男なのだ、お前も自らの身分を弁えて行動すべきだと私は思うぞ?」

「…失礼しました」


 分かりやすく憎々しげな態度をとる彼に表には出さないもののナルは侮蔑を、ミリアは呆れを感じている。テケラ伯爵が去った後周りに居た者達は彼の失態に感謝しながら次々と、ミリアたちに対して最適と思われる挨拶をしていくのであった。



 そんな挨拶の波が一段落した頃だろうか、ステージ上に一人の男性が現れる、彼は一礼し注目が集まって居る事を確認して声をあげる。


「皆様、ご静粛に! トルキア王国第一王子、コラワ・ロル・トルキア様のご挨拶です!」


 その宣言にステージ脇から豪奢な格好に身を包んだ男が現れた、彼がこの夜会の主催者にしてトルキアの王子様、コラワだ。


「ん、ん。…諸君! 今日は私の主催した夜会への出席、まことに感謝する! この良き日を諸君らと過ごせる私は幸せ者だ」


 ぺらぺらと彼が演説を続ける中、ミリアたちが入場したのに合わせてひっそりと会場入りしていたケイ達は演説を聞いて話している。


「よく舌が回るなあ、心にも無いことを」

「お前が言える台詞か、とはいえおまえの方がだいぶましだな」

「それよかった、あんな顔だけ野郎以下なんて言われたらへこむぜ」

「言わんよ、そのような暴言は」

「おう、そりゃ良かった。ったく、とっとと終わらせて帰りてえな」

「そうも行くまい、…どうにもきな臭いからな」


 先ほどまでは一緒にいるミチたちにも聞こえるように言っていたが、ちなみにソフィア以外は王族に対するものとは思えないその態度に引いていたりしたが、そこからは声を潜めて話し出す。


「ああ、何か嫌な感じがすんな。そっちは?」

「いくらか妙な気配がする、それに兵の配置が所々おかしい。何者かが何かを手引きするつもりかも知れんな」

「なるほどな、ちっと不安だがこいつらは俺に任せとけ。お前はライトヘルト伯爵に着いておけよ、グリエルの人間に危害を加えさせるわけにはいかねえ」

「承知している、お前もノエルたちを頼むぞ」

「委細承知ってな」


 そんなことをひそひそと話しているとコラワの演説が面倒な方向になってきた。


「そうそう、忘れてはならないことが一つある。本日はこの夜会にあのSSが三名も出席している、この私の呼びかけに応えてくれたのだ!」


 彼の言葉に会場にざわめきが走る、世界にたった七人しかいないSSの半数近くが来ているなどと聞けば驚くのも当然だ。


「よく言うものだ」

「全くだな」


 当の本人達はこれだがそれは周りには分からない、ここでコラワは調子に乗った事を言い出した。


「せっかくの機会だ、彼らにもこの場で挨拶をしてもらおうではないか!」


 それを聞いてミリアが頭を押さえる、そのようなことを事前に頼みもせずこの場で言い出すなど馬鹿じゃないかと思ったからだ。実際横にいるナルは半目になっているしケイ達も逆に力が抜けたらしい。


「…どうするよ?」

「…かましてこい」

「いいのか?」

「身の程を弁えてもらわねばな」

「あいよ、…ぶっ潰していいんだな?」

「無論」


 そんな物騒な会話を交わし、ユウはステージに向かって歩く。ステージの前にいた騎士にギルドカードを見せつつ壇上に登る。途中コラワからは握手を求められたが完全に無視、ステージの中央に立って話し出す。


「さて、私が今紹介に預かりましたギルドランクSSが一人、“蹂躙闊歩”、ユウと申します。僭越ながらここで一言申し上げさせてもらいます」

「…あのような口が利けるのだな、ユウも」


 いつもと違った穏やかな口調、そんなユウの語りに拍子抜けしたミリアはそう呟くと、ナルが苦笑しながらこう返した。


「そりゃあそうですよ、まあ今だけだと思いますけど」

「うん?」

「まったく、勝手だよなあ、王子様ってのは」


 次の瞬間にはこれであった、さすがはユウといったところだろうか。


「ほらね?」

「遠慮が無いな、本当に…」

「聞いてくれよ皆さんよ、俺達が夜会に出ろって言われたのは昨日の午後だぜ? 普通に常識知らずだよなあ、自分の思い通りになるって思い込んでいるんだろうなあ」

「な!?」


 自身が仕える主への侮辱に最初に司会を務めていた男が驚きと怒りの混じったことをあげるが、ユウは気にせず話し続ける。


「あ、俺たちが出てやったのはあくまでミリア様が出るからだって事を覚えておいてくれよ? 俺達はミリア様からの頼みなら聞くが王子様の命令なんか聞く気はねえんだよ、勘違いしてもらっちゃ困るからここで言っておくぜ」

「貴様、コラワ様に何を!」

「逆に訊くがよ、王子如きが俺たちの上に立てるとでも?」


 先ほどの男と騎士達がユウに対して戦闘体勢を取ろうとする、しかしユウは当然であるかのようにそう返した。それに激昂した騎士達は剣を抜こうとしたがユウに殺気の篭った目で睨まれ、威圧される。それを受けて硬直した騎士たちを尻目に最後に彼は言い放つ。


「ま、俺たちを呼びつけておいて俺たちに話させたのは王子様なんだからよ、王子様の責だろ。んじゃ、そう言うことで」


 言いたいことだけを言って壇上を降りるユウ、こうしてコラワの力を誇示する為に開かれたこの夜会は、むしろコラワの影響力を後々まで落とすその始まりとなったのであった。


 はい、本当に適当に書いた回です。こういうのは良く分からん、何となくナルたちの権威を強めてみたがこれで良かったのかねえ。ナル達がまるで調子に乗っているみたいに見えてしまうというか、大人じゃないというか。まあいいか、書いた以上はそれで行こう、それだけのことを王子様はしたってことで。ではまた。

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