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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第四章:三人の合流
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出席要請

副題は、雲行きが…?


 時は過ぎトルキア王国王城第二王女執務室にて、三人は部屋の主と顔を合わせていた。


「久しぶりだな、ケイ、ユウ」

「久しいな、ミリア様」

「どうも」


 敬語こそ使っていないが王族に対する敬意は見せるケイと欠片も見せないユウ、そんな二人にミリアは苦笑をこぼす。


「相変わらずだな、お前達二人は。まあそれはいいとして」

「状況については騎士さんたちから報告を受けていますよね? 僕達もいくつか調査に交じりたいのですが」


 挨拶もそこそこに調査の件を切り出すナル達に対してミリアは申し訳無さそうな顔をする。


「あー、個人的には許可を出したいのだが…」

「何かありましたか?」

「すまん、兄上に見つかった。お前達に夜会への出席要請が出ている、悪いが調査に出すのは難しい」


 ミリアが兄上と呼べばそれはトルキア王国第一王子、コラワ・ロル・トルキアのことを指す。しかしこの男、少々どころではない問題を持っていたりする。


「え? それは本当ですか?」

「それは、少々困るな」

「よりにもよってあの野郎かよ」


 コラワを嫌っている、というかこの場で空いている奴も居ないのだが、ユウは露骨に嫌な顔をする。基本的にSクラス以上であれば王族に多少無礼を働いたところで罪に問われることは無い、SSともなれば王相手でも一応問題は無い。とは言えいくら常識外と呼ばれる彼らであっても王族に対してここまでの不敬を働くことは早々無い、だからこそユウをたしなめようとナルは口を挟む。


「ちょっとユウ、仮にも王族相手に」

「うむ、あの野郎だ」

「ミリア様…」


 が、王族の一人であるミリアまでがユウに同調したためにがっくりと肩を落とす。まあコラワがどのような人物なのかというのはこれで何となく分かったのではなかろうか。それはそれとして、そんなナルを余所にケイは自分達の情報が漏れた経路を訊く為に口を開く。


「情報が漏れたのは騎士からか?」

「いや、メイドからだ。私は知らなかったが兄上はうちのメイドの一人に手を出していたようでな、そのメイドからもれた。まったく、地位に物を言わせて迫るなど」


 SSという常識外な戦力が居る事を下手に知られると碌でもないことを企む輩が現れる可能性がある、そう危惧したミリアはナルが、正確にはSSが城に居る事を秘匿していたのだが意外とあっけなく情報が漏れてしまった。それにしても方法が方法だ、皆露骨に嫌悪感を見せている。


「ちっ、碌な事しねえなあの男」

「王国の未来が心配だな」

「公人としてはともかく私人としては同意せざるをえんな」


 思うところは同じだが議論の行き先がずれている、そう思ったナルは話の軌道修正をする。


「…いいから今は出席要請について語ろうよ」

「それもそうだな、さてどうするか」

「しらばっくれるってのはマズイか」

「私達は良いがミリア様が叩かれかねんな、私達とのコネを独占しているなどとでもいちゃもんをつけられたら面倒だ」

「んな理屈が通るわけねえだろ」

「あの男なら言いかねんだろう?」

「…あー」


 あまりに稚拙な論だがあの男なら言いかねない、その言葉にはこの場にいる全員が納得してしまう。


「確かに、言いかねないかも」

「うむ、だからあまり言いたくは無いのだが…」


 口ごもるミリアよりも先にケイは言葉を紡ぐ。


「分かっている、私達も夜会に出席しよう、それで良いな?」

「ま、しゃーねーわな」

「状況が状況だからね」

「すまん、恩に着る」


 無理を言っているのに快諾してくれた三人にミリアは軽く頭を下げる、彼女が頭を上げたところでケイがある提案をする。


「そしてミリア様、当日はナルにエスコートを任せてもらいたい」

「む?」

「僕に?」

「ああ、この際私達とミリア様の間に繋がりがあることを周知の事実にさせる。こうすれば奴も裏からどうこう言うことは不可能だ」

「独占すんなって言う脅しに、独占している私をよく非難できるなって形にすんのか」


 こうすれなば裏でひっそりと非難することは出来なくなる、公的に関係を露にすれば彼女に表面上は敵対する人間は減るだろう。何しろ彼女を敵に回せばSSの怒りを買うかもしれないのだから、まあそう単純な話でも無いし上手く行くとも限らんが意趣返しにはちょうどいい。


「そんなところだ、二人ともかまわんな?」

「…私からすれば願ったり叶ったりだな」


 この提案、ミリアにはメリットが多いがナル達にはそうでもない、公的な人間が擁護せずとも生きていける力や立場を彼らは既に持っているからだ。むしろこのことでミリアからの依頼等を断りづらくなるのだが、その辺りは信頼関係が築かれているから問題ないということか。


「僕も問題ないよ」

「ならば当日はそれで通すぞ、片時も傍を離れるな」

「分かった、ミリア様もそれでよいですね?」

「うむ、個人的にもそれで良い」


 傍にずっとナルがいる、彼に恋慕する彼女としてはそれも中々に良いことなのだろう。


「で、肝心の夜会は何時なんだ?」

「明日だ」

「おいおい、急過ぎねえか?」

「すまん、夜会そのものは元々予定されていたものだったからな」

「ミリア様に言っても仕方あるまい、こんな急な要請が非常識なのは確かだが今更だろう」


 悪いのはコラワ、そう言うことだ。


「そりゃあそうだがよ、…ダチ公」

「何だ?」

「あの野郎のことだから俺たちの出席は自分の呼びかけによるものだとか何とか言い出すか?」


 自分にはSSを出席させるほどの力がある、そう他者にアピールできれば大きな利となる。そんな風に利用される可能性があることをユウは指摘するがそこはケイ、既に考えはある。


「可能性は高いな、だから私達はそれを徹底的に否定するぞ」

「あくまでミリア様の為に出席したってことにするんだね?」

「ああ、むざむざ利用されるのは癪に障るからな。…いっそのこと奴に対しては一切の敬意も払わずに対応して良いぞ、ユウもいつもの調子でかまわん」

「良いのか? さすがに後々が面倒そうだけどよ」

「良い機会だ、私達を敵に回すということを理解してもらうとしよう」

「くっかか、良いねえ」


 冷静だが怒りを示さないわけではないケイと良いと判れば躊躇なくやってのけるユウ、二人がやろうとすることを想像してナルはミリアに先払いで謝罪をしておく。


「…先に謝っておきます。ミリア様、迷惑をかけます」

「いや、かまわん。この際だ、ナルもそうしろ」

「え? いいんですか?」

「ああ、その方が良いだろうさ」

「そう言うことなら良いですけどね」


 まあナルも思うところはある、良いというなら遠慮なく、だ。


「さあてと、他に夜会について話し合っておくことってのはあったか?」

「私達の連れをどうするかだな、それについても決めておこう」

「あー、そっか。僕はミリア様についておかないといけないからミチさんたちの面倒が見れないのか」

「そうなる、かといって私達もミリア様も居ない状況に置いておくのも少々考えどころだな」

「言っちゃ悪いがいつ敵地になってもおかしく無いからな」

「そうだな、兄上や姉上なら何ぞ企みそうでもある」


 他の王族は関係が良くなかったりそもそも良く知らなかったりで友好関係は無い、この城で信頼出来るのはミリアだけだ。そんなところに身内を置いておくのは気が引ける、早々しないとは思うがナル達への人質として利用される可能性があるからだ。まあ、そんなことをすればこの城が消滅しかねないのだが、力を持つ者を利用しようとする輩は得てしてその力の強さを知らないものだ。


「とすると俺かダチ公が引き取っておくことになるか?」

「その前にミリア様、今回の夜会の出席者は分かるか?」

「うん? ああ、このリストだ」

「失礼」


 受け取ったリストを一瞥し、ケイはミリアにリストを返す。


「助かった」

「もう良いのか?」

「ああ、把握させてもらった。それで、私は今回の夜会で単独行動をしたい」

「ん? 出席者になんかあったか?」

「ああ、ライトヘルト伯爵が出席するようだから話をしてくる」

「ライトヘルト伯爵が?」

「成る程な、そう言うことならしゃあない」

「知り合いだったのか?」

「私達がグリエル帝国の出身だとは話していたな? こちらに活動の場を移す前に知り合った相手だ」

「そうだったか」


 正確には少し違うが、ここで詳しく話すわけにもいかない。このあたりの事情を知っているのは限られているのだから。


「てことはフリーなのは俺だけか?」

「そうなるな、すまんが頼めるか?」

「僕からも頼むよ」

「状況が状況だ、かまわねえ。…じゃねえや、こっちも問題あったわ」

「お前の連れのことか、トリニティの関係者はいないぞ?」


 各々の連れについてもここに向かうまでの道中で軽く話しているから把握している、リストを確認したのはそちら関係も探る為だ。というよりはリストを確認した主目的はそちらだ、ライトヘルト伯爵の件はついでに過ぎない。


「つってもな、微妙だろ?」

「分からなくは無いけどね」

「トリニティ公国がどうかしたのか?」

「俺の連れの一人がゲオルギウスの娘なんだよ」


 その発言に珍しく目をパチクリさせたミリアだったがすぐに我に返り、軽く咳払いをした後に呆れたように言葉を漏らす。


「…どうしたらそんなことになるんだ?」

「成り行きだよ、しっかしなあ」

「基本的には名乗らせない方向で行けばいい、訊かれたら肯定するでかまわんだろう。それに何かしらでお前が離れたときの盾として申し分は無いだろう?」

「それもそうか、だったらそうすっか」

「今のうちに聞いておくが、お前達の連れはどのような奴らだ?」

「私のほうは新米冒険者の小娘だ、私の推薦ということで特例を通したからDクラスにはしてあるが」

「こっちはさっき言ったのとAクラスで二つ名持ちの男だ、さすがにA程度じゃ城の夜会は格不足だな」

「ユウ、Aだってそんなに数居ないんだからね? ああ、僕のほうの説明は要りませんね?」

「うむ、…しかし何と言うかだな」

「そんなもんです、ミリア様」


 そんなもんだ、それで納得しないとこいつらにはついていけないだろう。


「…で、まだあっか?」

「そうだな、お前達服は?」

「私達三人は問題ないが」

「うちのお嬢様は大丈夫かもしれんが、他か」

「まあ無いよね、ミリア様」

「分かっている、準備をしておく。後で人をやるからその時にな」

「承知した」

「では何かあれば後で別個対応しよう、明日は時間になれば使いをやる。それと調査に関しては私達に任せろ、ここまで来たら大々的に動けるからな」

「分かりました。じゃあ行こう、ケイ、ユウ」

「うむ、失礼するミリア様」

「顔見せ顔見せっと、それじゃまた」

「ああ、では夕食の場で会おう」


 色々と面倒は増えたがまずは顔見せ、そういうことでケイとユウは連れを迎えに、ナルはミチたちの待つ部屋へと向かうのであった。



 はい、割と説明することの無い回です。夜会云々は章を変えてからの話にしようかとも思いましたがこの章の中で片付けることにしました。こうなったら王都で起こるイベントは今章の中で済ませてしまいましょうかね。次回は顔見せアンド説明回、ようやくそれぞれの連れ達も紹介し合うこととなります。ではまた。


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