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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第四章:三人の合流
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集う三人

副題は、地下での

「さて、と」


 翌日の朝、昨日の尾行で不審者が潜った地下水路への入り口、所謂マンホールの蓋を開ける。少々の確認をした後にナルはその中に身を躍らせた。


「よっと」


 音も無く軽やかに着地して周りを探る、光源等が無いため視界は悪いのだが研ぎ澄まされた彼の感覚はこの周囲に人の気配が無いことを伝える。


「…早々分かりやすくはしないか、【音響調査】【空間把握】【地図描写】」


 その言葉と主に何かが地下を巡る、ここに感覚の鋭い人物が居ればその何かがナルから出て再びナルに戻ったことを感じ取ったかもしれない。少ししてナルの右手には青い光で出来た立体的な地図が現れる、その地図は少しずつ大きくなっていきリアルタイムで更新されているように見える。


 これはナルの詠唱魔術によるもので一定空間内のマップを表示させるものだが、普通の詠唱魔術でこのようなことをするのはまず不可能だ。なのにそれが出来る理由は彼が持つ前世の記憶が関係している、超音波を用いた距離の測定とその結果の把握、それを踏まえた最終的な描写、ナルはこういったイメージを以って魔力を使うことでこういった高度な魔法を行使している。そのため彼の魔術はこの世界の常識では理解が難しいような結果をもたらすことが出来るので、もはや彼だけの独自魔法に近いのかもしれない。


「…なるほどね、こういった構造か。えーっと…、居るね、これかな? まあ、とりあえずはこの辺りまで行ってみるか。じゃあ、【光学迷彩】」


 地図内に人の姿を確認したところで手の上の地図を消す。さらに詠唱魔術を用いて体を透明化させる、そうと知っていても分からないほどナルの姿は観測できない。これもまた彼の知識とイメージによるほぼ独自の魔法だ。


(さてさて、当たりだといいな)


 俊足とまでは行かないが普通に歩くよりは速く移動する、そうでありながら移動音が全く聞こえないのはさすがと言うべきか。まあその気になれば足音を消す魔術も使えるのでそれ関係で失態をさらす可能性は元より零なのだが。


 そうして十数分ほど移動したところで前方に光が見えた、おそらくランタンの類を持った誰かがいるようだ。そのまま相手に悟らせぬように至近距離まで接近をする、そこには二人の人物がおり何かを話し合っている。よくよく聞いてみると誘拐だの発見だのと言った言葉を聞き取れる。


(…居たか、あれが地図で見つけた奴だろう。さて、これは本命と思っていいのかな?)


 そもそもこの場にいる時点でほぼほぼ黒と言えるだろう、話の内容も加味すればまず間違いない。跡をつけてみれば彼らは壁にある扉を開けてその中に入っていった、一呼吸ほど合間をあけてナルも近づく。


(…どうする? ここで突っ込むか、否か)


 相手の知力にもよるがここが本拠地の可能性が高い、つまりここを一網打尽にすれば諸々が解決するかもしれない。しかしそうでなかった場合やトップが席を外していた場合は肝心なところでの解決が出来ない、つまり万全を期すなら静かに忍び込んで情報を得る方が正しい選択なのかもしれないが。


(早い方がいいか、良し)


 まあ色々考えたところで仕方ない、大丈夫だと思って突っ込むことにしよう。そうして思考放棄もどきをしたナルが扉を開けようとした、その時だ。


「失礼する」

(!)


 聞き覚えのある声が扉の向こうからした、これは…。


「何だ!?」

「誰だお前!?」

「私か? 通りすがりだ」


 ふふっ、この物言いは間違いないね。まったく、何でこんなところにいるんだか。


「通りすがりでこんなところに来るかよ、お前ら!」

「おう!」


 じゃあ、必要ないだろうけど一応援護してみようかな。


 扉を開け放ち彼の近くに居た男に向かって取り出したナイフを投げる、ナイフはまっすぐと男の背中に飛び男の命を奪う。


「ぐっ?!」

「ほう」


 突如倒れこむ男とその背中に生えている見覚えのあるナイフ、そしてその先にいる友の姿を確認して満足げな表情を浮かべる。


「何だ!?」


 そんな周りの動揺など何処吹く風といったように彼らは穏やかに再会の挨拶を交わす。


「やあ、久しぶり」

「うむ、息災のようだな」

「増えやがった!?」

「関係ねえ、纏めてぶっ殺せ!!」


 その指示に彼らの周りに居た奴らが一斉に武器を取る、それに対して二人はアイテムボックスから獲物を出そうともせず悠然と立っている。


「頭以外は良いよ」

「承知した、とは言え一応は生かす方針で行くとしよう」

「そうだね、そうしようか」

「舐めんじゃねえぞ!」


 まるで自分達を脅威と思っていないかのような彼らの言葉に、一人が剣を構え怒りのままに突っ込む。しかし、彼らにそのような鈍らが当たる道理などありはしない。


「よっと」

「な?! ぐはっ…」


 振り下ろされた剣の腹に裏拳を当てて機動を逸らし、すぐさま男の手を取り足払いをかけてその体を思いっきり地面に叩きつける。その衝撃に男は脳が揺れたのか一撃で意識を失う。


「さすがだな」

「やめてよ、このくらいで。それにしても弱いね、思いのほか弱い」

「まあピンキリだろう、こやつが弱かっただけでこれが基準でもあるまい」

「そうだね、気を引き締めないと」

「うむ、期待しておかねばな」

「…相変わらずだねえ」


 久しぶりの親友の言葉に苦笑する、自分と違って彼らは戦うことそのものを好んでいる。と言っても戦うことだけを好んでいるわけでは無いからそういった意味での心配などしていないが。


 そんなその場に合わない和やかな会話に業を煮やした奴らがまたもや剣を、ナイフを、それぞれの獲物を構えて突っ込んでくるが何の被害も与えられずに一蹴される。二人としてはかなり手加減をしているのだがそれでも隔絶とした圧倒的なまでの差が存在する、どう足掻いてもその差は埋められないのだ。二人が未だに誰も殺していない所為か馬鹿どもはいけると勘違いしているが、実際は殺さず無力化する方が技量を必要とするのである。


 まあ全部が全部馬鹿の集まりではないようだ、現に力量差を悟った一人の男が踵を返して奥に走りだす。


「くそっ! やってられるか!」

「逃がさ、必要ないか」

「え? ああ」


 それを追おうとした二人だったが何かを悟ったのかその足を止める。


 …そして、男の頭上の天井が崩れ落ちてくる。


「な!? ぐぁ!!」


 まさかの事態に硬直した男が瓦礫の下敷きになる、二人を除いたその場の全員が硬直する中、その瓦礫の上に何者かが着地する。


「俺、参上っと。…やべ、人が居たのか」

「かまわんさ、悪人だからな」

「よくもまあ、何時ものとことはいえ本当にタイミングの良いねえ…」


 彼のいつも通りっぷりに一人は平然と、一人は呆れながら感想をこぼす。そこで彼も二人の存在に気付き、久方ぶりに会った友人たちに暢気に手を振る。


「ありゃ? 何か知らんけどおひさー、こんな所で会うなんて奇遇だねえ」

「はいはい、いいから手伝って」

「ん? 良く分からんけど分かった、こいつら纏めてぶっ飛ばしゃあ良いんだろ?」

「それで良いよ、その方が早いし」

「殺し過ぎるなよ、極力気を失わせろ」

「あいあい、がんばりまーすよ」


 こんな適当な会話を交わして彼らは敵に向き直る、浮き足立った奴らもはっとした表情で三人のうち近くにいる一人に対して敵意を向ける。それに対して三人は、一人は見下した目を向け、一人は不敵な笑みを浮かべ、一人はやれやれと言いたげな顔をして、それぞれの敵に向き直る。


 これがこの三人の日常、不測の事態で離れようとも何だかんだと合流できる。何があっても互いに連携する、理由も何も無く互いが求めていることを援護する。細々とした理屈など関係ない、これが彼らにとっての当然。



 今、ここに、ナル、ケイ、ユウの三人が集ったのであった。


 はい、ようやくの合流です、今話はそれぐらいしか言うことが無い内容です。そして短めです、ここで切る方が良いと思ったのでこうしましたがやっぱり短いですね、これでも出来るだけ途中の文を増やしたんですけどね。


 …本当に書くことが思いつかない、まあ今回は良いか。ではまた。

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