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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第四章:三人の合流
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市場に行こう

副題は、やっと入ったよ

 街に近づいたところでふとノエルが疑問を口にする、ミチ達も引っかかっていたことについてだ。


「どうしてあちらには誰も並んでいないんですか?」

「あちらは商人だったり貴族だったりが利用する特別用だ、旅行者や一般人はあちらの一般用を利用することになる」

「だったら私達もあれに並ばないといけないんですか? …10組は居ますね」


 街に入るというだけで待たなければならない、そう思ったノエルはうんざりとした、とまではいかないがため息を尽きたそうな表情でそう零す。それに対してケイは彼女の肩を叩き、特別用の方を指し示す。


「心配ない、私達は特別用を用いるからな」

「え?」

「私の肩書きを忘れたか?」

「…あ、そういうことですか」


 そういえばこの人もスペシャルだった、遅まきながらそのことに気付いたノエルであっる。


 特別用のほうに迫る二人、門番をしている二人の騎士の片方が制止しようとしたが、ケイの顔を見て驚きの声を上げる。


「止まっ?! ケイさん!?」

「おや? 久しぶりだな」

「お久しぶりです」

「? 知り合いか?」

「ばっ、馬鹿かお前!? この方はな」


 この騎士はかつてケイが王族の依頼を受けたときにも居た騎士の一人で、ケイとも少しではあるが話をしたことがあった。対してもう一人はケイとは一切の面識がなかったので妙にかしこまっている相方に首を傾げる、そんな彼に対して相方は非難しつつも説明しようとしたが、ケイが自らギルドカードを提示することでそれを収める。


「これで分かるかな?」

「ん? …失礼しました!」


 先ほどまでと打って変わって恭順の姿勢を見せるもう一人の騎士、そんな騎士達の様子にノエルは改めてケイに対する尊敬を深め、当のケイは何を考えているのかいつも通りの無表情を崩さない。


「気にするな、ともかくここを通っても良いか?」

「はい、かまいません。お連れの方もどうぞ」

「良いんですか?」


 思わずそう尋ねてしまうノエル、客観的に見て顔もまるで見せない怪しい人物という自覚があるからだろうか。そういえばここまできちんと書いていなかったがノエルの格好は外套で体のラインを完全に隠し、フードを深く被り顔が碌に見えないという不審者感マックスなものだ。ちなみにわざわざこのような格好をしているのは何時ぞや書いた呪い云々が理由だ、彼女的にはかつての髪と瞳の色から謂れ無き敵意を受けてきたことからあまり人に素顔を見せる気になれないということだ。本来であれば無駄に警戒心を集めてしまいあまりよろしくは無いのだが、別の意味での自らの容姿に無頓着なこともあるのでケイ的にはこちらの方が楽かと思い放置している。


「ケイさんのお連れならかまいませんよ」

「助かる、それはそうとして最近王都で何かあったりしたか?」

「そうですね…、最近妙な噂が流れています」

「噂?」

「失踪事件が多発しているという噂です、実際に十数件程度の失踪も確認されたそうです」

「十数件? 王都の規模でそれは」

「ええ、事件として扱われるほどのものではありません。上からも特には何も指示は出ていませんし、噂が勝手に一人歩きしたのでしょう。ただ、ミリア様の直下の騎士達は少々調査を行っているようですね」

「ふむ? ミリア様が? …ふむ」


 かつての依頼人にして自身の友人に懸想している切れ者の王女、彼女が動いているのだから何かあるのだろうかと考えるケイ。とは言えこの時点では可能性を絞り込めないので頭の片隅に放り投げてゆっくりと思考するにとどめるのだが。


「ケイさん?」

「いや、いい。それで他には何かあるか?」

「えーっと、…特に気になるものは無いかと。お前は?」

「俺も特には」


 ちなみにだがケイを知っていたほうの騎士はナルとユウのことも知っている、だと言うのにナルがここにいることをケイに伝えなかったのは単純に彼がそのことを知らないからだ。実のところ現状ナルが今王城に滞在していることを知っているのはミリア及び専属のメイドたち、それと彼女直下の騎士たちという限られた人間のみである。その理由としてはミリアが切り札の情報が独り歩きすることを警戒していたからなのだがその結果それと同等の切り札を引けなくなったのだから皮肉と言うべきか何なのか。


「そうか。すまなかったな、業務の邪魔をした」

「いえ、気にしないでください。先の噂の所為か人の流れが少なくて、あっちはともかくこっちは暇なんですよ」

「そうか、それならこの後商隊がこちらに来るようだから仕事が出来るかもな」

「そうですか、だといいですね。それでは王都をお楽しみください」

「そうさせてもらおう」

「お仕事、頑張ってくださいね」



 門をくぐりようやく街の中に入った二人、ノエルは子供の時分以来となる人ごみに目を丸くているが、ケイはかつての記憶と比べて幾分か人が少ないことに先ほどの噂について頭の片隅で思考を回し出す。しかし表面上はそんなそぶりも見せずに一先ずの方針をノエルに問いかけることにする。


「さて、まだ時間も早い上に当てもある、宿を取るのは後で良いとして…。ノエル、どこか行きたい場所などあるかね?」

「え?」

「ここには今日を除いて最低一日は滞在しようと思っている、だから今日は君が希望する場所に行こうと思う」

「良いんですか? 速くお仲間さんと合流しないといけないのでは?」

「少しくらいはかまわん、どうせアイツらも寄り道の一つや二つはしているだろうさ」


 おそらくナルはまだ真面目に合流しようとするだろうが、ユウはここぞとばかりにふざける可能性がある。いや、むしろ一人で行動するとナルの方が何かに巻き込まれやすいか。だから少しくらいはかまわないだろう、ここで少しばかりノエルに観光させても。妙な噂という不安要素はあるものの自分さえ居ればどうとでもなる、それは確かで絶対な事実だ。


「はあ」

「で、どこか行きたい場所はあるか?」

「うーん…、よく分かりません」

「かつては帝都に居たのだろう? その時の記憶からどこか行きたい場所は無いのか?」

「そう言われても…、私は市場へのお使いぐらいしか行くところが無かったので」


 帝都に居た頃、ノエルの母は多少なりとも自分達の関係に負い目を感じていたのかあまりノエルと共に外に出ようとはしなかった。父のシェルもその秘さなくてはならない関係上家族で外に遊びに行くということは出来なかったし、村に来てからは言わずもがな。ノエルには学校や生活上必要だったところ以外には出かけた経験がほとんど無いのだ。


「そうか…、ならせっかくだから市場に行くとしよう」

「何か買うのですか?」

「市場を見ればその街が分かるものだ、それに情報を得るのにも意外と市場というものは適しているのさ」


 結局のところ情報は人が生み出し動かすものだ、だから人の集まる場所に行けばそれなりの情報は手に入る。無論所詮は市場で手に入る程度の情報、本業の集めた情報には敵わないだろうが、市民目線の情報と言うのも意外と馬鹿に出来ない価値がある。地元の者だからこそ出来る考え方というものもある、とりあえずどうという指標が無い今にはちょうどいい。


「? 情報って何のですか?」

「先ほどの失踪事件のだ、ともかく行こう」

「あ、はい」



 そうして着いたのは市民の生活を支える露店市、数多の人間がそれぞれの商売道具と売り物を広げ、しのぎを削るそんな場所。その活気あふれる様にかつて自分が居たところを思い出すノエルと普段と客層が異なると感じるケイ。思うところがある故に見本ついでにノエルに情報収集のやり方を見せることにする。


「さて、今からちょっとした情報収集のやり方を見せる。少々いつもと違った喋り方になるかもしれんが気にするな」

「分かりました」


 さて、どれで示そうか、…何か食品を売っている露店が良いか。そんな風に考えながら適当な露店を見繕うケイであった。


 はい、何と言うかパッとしない回ですね。基本的に一回の投稿で3000字以上4000字以下を目安にしているので今回のようにパッとしない所のみで終わってしまう事が多々あります。あんまり長いよりは良いんじゃないかと思っての投稿ですがこういう時が本当面倒ですね。実際情報収集のところまでいこうかと思ったのですがそこ含めてきりの良い所まで行くと長引きそうなんで止めました。こういうときは本当にタイトルと副題が考えづらいんですよ、まったく。


 で、ちょっと思うところがあるのでこれから週二回の投稿にしようかとも考えています。そうしないとちょっと他に時間が回せないんですよね、別作品の執筆とかに。本来ならこれ一本に絞った方がいいのですが私の場合は時々は別にも触れないと頭の中をそれがぐるぐるして邪魔なんですよね、ええ。まだ本決定ではないのですが日曜は継続で後は水曜辺りの投稿に変更しようかなとか思っています。とりあえず早ければ次回投稿時にでも決めようかと、どうしましょうかね。


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