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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第一章:ケイの出会い
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会話と呪いとSS

副題はエルフ登場。


ただしそれがどうしたな展開。

 ヌルへと続く道を二頭の馬が駆ける。その最中シェルが口を開く。


「お久しぶりですな」

「ああ、8年ぶりか。私のことはケイでかまわんぞシェル殿」

「ではケイ殿、と。職の辞した後また貴方に会うことがあるとは思ってもみませんでしたぞ」

「私もだ。貴公が当主の座からも退いたとは聞いていたが、あのような場所で会うことになるとは」

「あの村の村長の息子とは友人でして、屋敷を出た後そいつの誘いであの村に住むこととなったのです。もっとも当人は入れ替わりで村を出て行ったのですがね」

「ノエル嬢が原因かね? 貴公に娘がいるなどとは私は知らなかったが」

「…昔の恋人との間に出来た娘でしてね、ナイガンは彼女の姓です。あの事件のどたばたであやつらに知られてしまい、あの子を守るためにあの家から去ったのです」

「ふん、やつらなら腹違いの姉妹も嬉々として道具としただろうからな」

「ええ、我が息子なれどなんとも。私は彼女のためにもあの子を救いたかったのです」

「その彼女は?」

「あの事件の少し前に」

「そうか」


 その後は二人とも会話無く馬を走らせる。そして空が暗くなる少し前に野営の準備を始め、簡単な食事をとる。食事が終わった後今度はケイが口を開く


「ノエル嬢のことだが、呪いとは何だ? 彼女の外見からは特に偏見を生み出しそうな要因が見当たらん」

「でしょうな、あの村の古い言い伝えだそうですから。あの村では緑の髪と緑の目のどちらも持つものは森の呪いを受けたとされているのです。呪いを受けたものは森から害されず、人には害をなすとされているのです」

「森の呪いとはな、下らん」

「ですが今村にいるものは村長以外それを信じております、ゆえにあの子は顔を隠しているのです」

「引っ越せばよかろう」

「私も何度もそう言っているのですが、私の友人の思いが無駄になると」

「ずいぶんと優しい娘だ、自分より父の友か。そういえば彼女は戦う術を持っていると言っていたが魔術か? 貴公は肉体派だったはずだが」

「固有魔法ですよ、私は何も。ノエルは戦おうとしていたのですか?」

「その前に私が片付けたがな。それにしても固有魔法とはな、しかも戦闘用は珍しい。しかし彼女はそれを嫌っているようだったな」

「友人を傷つけてしまったと、めったに使おうとしません。それに村の者には魔術を使うものはいませんから余計に、ということです」

「呪いか。固有魔法はともかく魔術というものは学問だ、魔力があれば個人差はあっても学べば誰でも使える。別に一部の人間にしか使えない力ではなく、呪いとの因果関係など無い。それを理解しろといっても難しかろうな」

「こちらはグリエル帝国と比べると一般人の知識量などにも差がありますから、あのような閉鎖的な村なら特に」

「やれやれだな」


 その会話を最後にケイは見張りにシェルは仮眠につく。三時間ほど寝たあと交代し朝食の準備をし、そのまま食事を済ませ再び馬を駆りヌルへと向かう。


 ヌルの街が動き出してしばし、街門の前に二人はたどり着く。そのままギルドに向かいその扉を開く。朝が早いためかそもそもの人数が少ないのかギルド内に冒険者らしき姿は無く、カウンターで職員があくびをかみ殺しているのが見えるだけだ。


「おっと、朝早くからいらっしゃいませ。依頼ですか? 冒険者登録ですか?」

「依頼だ、キエル村のものだが近くの森の中に魔物化の原因がある可能性がある。それでギルドに調査を依頼したい」

「魔物化!? それが本当なら一大事ですが、何か証拠はありますか?」

「そこで発見した魔獣から得た魔石だ、調べれば純度が低すぎる事がわかるだろう」

「少しお待ちを。イェールンさん魔石の鑑定をお願いします」


 受付の呼びかけに応え奥から男性が出てくる。彼はケイから受け取った魔石をまじまじと見つめると結論を出した。


「間違いなく魔獣の魔石だ、こいつは急がないといけないかもな」

「そうですか、わかりました、支部長に伝えてください。それとお客様、依頼の緊急性は理解しました、内容上依頼料の最低八割はこちらが受け持ちます。その条件で依頼を出しますがよろしいですか?」

「ああ、それで頼みたい。それとは別件でこちらの方のことで提案があるのだが」

「提案? それはいったい?」


 その言葉を受け、ケイは懐から自身のギルドカードを取り出し受付に受け渡しつつ名乗る。


 「ギルドランクSSのケイだ、その緊急依頼を受けたいがかまわんな?」

ギルドランクはA~Fの通常クラスとSの規格外クラス、SSの常識外クラスが存在しSSはラクセイリア全体で7人しか存在しない。また高位クラスの中でもAクラス以上の者にはそれぞれ二つ名をつけられることもある。


「ダ、SS?!えっ、た、たしかに確認しました。SSクラスが受けてくれるなら心強いです」

「クルル君、魔物化とのことだけど本当?!」


 ギルドの二階から一人のエルフの女性が降りてくる。その服装から察するに彼女がヌルの街の支部長なのだろう。


「はい、キエル村の近くに魔獣が現れたようです」

「そう、ならツーリアにも緊急依頼の連絡をしないといけないわね、そちらが依頼人の?」

「キエル村のシェル・ナイガンだ」

「SSのケイだ」

「SS!?ケイってまさか“疾風両断”の!?」

「知っていたか、それで私もその依頼を受けたい。そもそも件の個体を倒したのは私なのでな」

「それは心強いはね、その個体の特徴は?」

「元はおそらくエイグマで、4メルほどだった」

「4メルのエイグマねえ、強さはどうだった?」

「すぐに斬ったので詳しくは。ただ体表はセーンの背と同程度の硬さだったな」


 セーンとはD級の魔物でその背中は硬く素人の剣ぐらいなら弾き返してしまう。そのためランクの割に討伐が難しく、頭や腹を狙わないと低ランク冒険者では手も足も出ない。全身がそれと同程度の硬さとなるとそれなりの一撃を出せなければと倒すのは難しいだろう。


「セーンレベル…、となるとC以上じゃないときついかしら?」

「魔獣または魔物が何体も出るとも限らんがそれが無難だろう。森も決して狭くは無い、それなりに人数が必要だと思うが」

「ツーリアからここまで馬車を出しても二日はかかる、急がないといけないわね。ククル君、ツーリアに通信機で連絡を取ってくれる? その必要があると見るわ」

「わかりました」


 通信機の使用には魔石を必要とするのだが、ノルのそれは少々型が古く最新機のそれと比べると燃費が悪いためめったに使用しない。しかし今回は例外と言うことだろう。


「それでどうします? あなただけ先行するかこちらと足並みをそろえるか」

「先にキエル村に戻り軽く調査を行う。そちらが到着し村の防衛に人がまわせるようになればこちらも本格的に調査しよう」

「わかったわ、依頼の受領に関してだけど」

「面倒だ、そちらで処理しておいてくれ。依頼料も事後承諾でかまわん、そちらもわかっているだろうしな」

「当然です」

「それと件のそれの解体を頼めるか? 全て換金して依頼達成時に受け取りたい」

「では裏の解体所に運んでおいてくれる?」

「ああ、シェル殿行って来る」

「わかりました」


 そのままケイは裏へと向かう。それを横目で見ながら支部長は口を開く。


「彼がいてくれて助かったわね。それではシェル・ナイガンさん、奥で依頼書の製作に移りましょう」

「わかった」


グリエル皇国:ラクセイリアトップクラスの国家。魔法と科学が共存する国。人材育成に力を入れており、国全体の識字率は90%を超える。他の国家だと地方を含めると50%切ることもある。国の信用も高くギルドを含めた世界的組織の本部が複数存在する。ちなみに刀を作ったのもこの国。


ギルド:一般的には冒険者ギルドのことを指す。グリエルにある本部が各国家の大都市にギルドマスターを派遣し運営させる。さらにそこから周囲の都市に支部を設置し、そこのトップを支部長と呼ぶ。今回のような緊急依頼においては支部がその親ギルドに冒険者の派遣を要請することは珍しくない。ギルドマスターとなるには最低でもAランク以上の戦闘能力が必要となるが支部長にはその制限が無く書類仕事に強い人がなることが多い。ただしヌルの支部長はAランクでありながらギルドマスターの椅子を蹴って支部長になった変わり者。なお、ギルドマスターに戦闘能力が必要なのは各大都市に安定した戦力を在住させるため。

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