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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第四章:三人の合流
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ようやく街中

副題は、新たなそれ。

「お前達! 入るのならば早くしろ!」


 そんな風に進まぬ問答をしている彼らに声がかけられる、それは一般用を担当している門番のもので、その声にはまぎれもなく苛立ちが混じっている。門番にとっては入り口近くで内容は聞こえないが何やら問答をしており、入るのか入らないのかもはっきりとしない彼らにはどうしても苛立ちを覚えてしまったからだ。


「ちょっと待ってください、僕達はあちらの」

「あ、はい。どうぞ」


 ナルの声を意にも介さず、男は暢気に門番に対して身分証明書を提示する。遠目ではあるもののその身分証明書はギルドカードであることが見て取れたので、おそらく男もまた冒険者であるのだろう。…それで怒気を発しているナルへの対応があれだと言うのならば、正直この男には冒険者としての才能は乏しいのではないかと思うのだが。


「…良し、通れ。お前達も早く!」


 そして男の確認が終わった門番はナル達にも提示を迫る、男が素直に街に入ったことからナル達も目的は同じであるのだと思われたようだ。別にここで断ってもかまわない、というかナル的にはむしろ断った方が都合は良いのではあるが、そうなるとまず間違いなく目の前の門番の怒りを買うことになってしまうだろう。いや、だからといってその程度では時間的なそれ以外の損をナルに与えるわけではないのだが、もしかしたら後から門番の方が処分されてしまうかもしれない。それはそれでナルの精神上あまり許容したくは無いのでしぶしぶナルは現状に甘んじることにした。


「…チッ、仕方ないか」


 …まあ、不満が口から漏れてしまうのはしょうがない。ただそれを気に病む人もいたりするものだ。


「申し訳ありません、ナル様」

「ごめんなさい」


 勿論この二人、特にニーナはかなり落ち込んでしまっている。自分の発言が引き金になったと気付かないほどナルは鈍くないのですぐにフォローを入れるのだが。


「あ、気にしないで。君達の所為じゃ無いから」

「ですが…」


 ニーナの気落ちっぷりはなかなか治るようなものでもない、しかしニーナと比べるとミチのほうはそれが浅かったので彼女もフォローにまわる。…いつものお返しもかねた手段ではあるが。


「…それよりも、ニーナ? いつまでそうしているのかしら?」

「え? …失礼しました!?」

「ん? ああ、そうか。ごめんごめん」


 この二人、結局今の今まで抱き合ったままであった。…もしかしたら門番が不機嫌であったのはこれが? いや、ないか、……たぶん。それはそうとして、ナルの横ではいつもと違ってミチがニーナをいじる形となっている。ナルとしてはそれもなかなか面白いのでもう少し見ていたい気持ちもあるのだが、さすがにこれ以上待たせると門番の怒りが爆発しかねないのでさっさと彼の所に行くことにした。


 そんなこんなで後ろでじゃれている二人は置いておいてナルは門番の前に着く。見るからに機嫌の悪い門番にこれからの面倒を憂鬱に思いつつも、ナルは彼にギルドカードを渡す。


「…ほら、これですよ」

「…む? ……」


 ギルドカードを受け取った門番の顔が徐々に青ざめる、目の前の人物の正体に気づいてしまったが故に。


「し、しし、失礼しました!! よまやSSの方とは思わず、申し訳ありません!!!」

「ああ、もう。それはいいから大声で言わないで」


 やはり予想通り、こういったことになれていないその門番はナルの正体を知って驚きの声を上げてしまう。こうなることを予期していたナルは軽く呆れたような調子で返したが、それが功を奏したのか門番も一応は平静を取り戻すことが出来た。


「あ、し、失礼しました」

「それで、急いでここを離れたいから彼女たちのチェックは免除してもらえる?」

「分かりました、お急ぎを」


 門番としても自分がしでかしてしまった事は理解できた、ここで時間をかけてしまえば彼らが望まぬ事態を引き起こしてしまうということと、もしかしたら自分が処分されてしまうかもしれないということを。だからこそ彼はナル達が急ぎここを離れられるように配慮してナルの要求を呑む。


「助かるよ、行くよ二人とも」

「あ」

「はい」


 …そして二人はどうやら結局互いをいじり合っていたようだった、今の状況をほったらかしにして。



「…はあ、まったく」

「いやあ、君ってSSだったんだね! びっくりだよ!!」

「あ?」


 何だかんだで街の中に入ることが出来た三人、そんな彼らを待っていたのは変わらずに笑みを浮かべたあの男であった。男は明らかに三人の様子が険悪なものになったというのにいけしゃあしゃあと自己紹介をする、自分が原因で彼らが迷惑を被ったというのにも関わらず。


「あ、僕はザイウ・ドウメ。君達は?」

「行くよ、二人とも」

「ええ」

「そうしましょう」


 無論ナル達にはこれ以上コイツに付き合ってやる道理など存在しない、だからすぐさまにこの場を離れようとするのだが男はまだナル達に絡もうとする。


「あ、ちょっと!」

「【震】」

「うわっ!? 何だ」


 突如男はその身に揺れを感じる、それはかなりの大きさで立っていられなくなるものであった。しかしそれに反してナル達は何も起きていないかのようにこの場を走り去る、これはどういうことなのか? 実は男が感じている揺れはナルの魔法であり、彼の足元だけに限定させてゆれを発生させているのだ。だから男の様子は傍から見ると滑稽極まりないものでもあるのだが、どういうわけか現在この場には人がまったくおらず、男はその醜態を誰かに見られるという事態を避けることができてしまった。


「…ふう、急に何だったんだろうね? …あれ?」


 そして男が揺れを感じなくなったとき、もはやこの場には男以外の誰もいなかったのである。



 数分、ようやくナル達は駆け足を止めてゆっくりと街を歩きだす。


「ようやく離れられたか、まったくもう」

「申し訳ありません、私の所為で」

「さっきも言ったけど気にしないで、むしろ僕のミスだから。ミチさんだけでなく君も護るのが僕のやるべきことだってのに、本当にミスった」

「しかし」


 いつ終わるか分からないそんな謝りあいを、ミチが強引に割り込んで止める。


「それにしても、さっきの人は何だったんでしょうか?」

「知らないよ、そんなこと」


(あ、結構本気で怒ってる…)


 正確には違うのかもしれないが、ナルとは一年以上の付き合いであるミチには彼があの男に対して本気で腹を立てていることが分かった。昔のナル、かつて日本で生きていた頃のである、は今よりも感情をあらわにするようなことは少なく、彼は人前では仮面を被っているような生き方をしていたのではあるが、不思議とミチ達の前では生の感情を見せることも多かった。だからこそミチには今のナルが非常に珍しい状態であることを察することが出来たのであるが、それゆえにこういったときの対処法にはそれほど心当たりが無いのでとりあえずは触らぬ神にたたりなしでいくことにした。


 それに感づいているのかは定かではないが、ナルは一先ず頭を切り替えて今夜の宿を探すことにしたようだ。


「とりあえず今夜の宿を探そうか」

「今の時間で空いているでしょうか?」

「何か人が少ないっぽいし、どうにかなるんじゃない? とりあえず僕のなじみの宿に行ってみようか」

「はーい」

「分かりました」


 そしてさらに歩くこと数分、大通りから一つ外れた通りに面している宿に彼らは着く。ここ、ナサッカの宿と書かれた看板を掲げたこここそがナルの友人である元冒険者が営む宿であった。宿に入った彼らをナルにとっては見知った顔が驚きと喜びの声で出迎える。


「いらっしゃ、ナル!? 久しぶりだな!」

「久しぶり、早速だけど部屋はある? 三人なんだけど」

「三人だな、って大将達じゃないのか? その別嬪さん達は?」


 彼はケイ達とも面識はあり、特にユウには結果的に命を助けられたためにユウのことを大将と呼んでいた。予断として、ユウは妙に人から大将だの旦那だのと呼ばれて頼りにされる生き方をしているのだが、本人的にはそういった思惑は無いらしい。実際彼は積極的に人助けをするほど善人ではないので全て偶然ではあるのだが、そういうことになってしまうのは彼のもともとの気前の良さなどが影響しているのは間違いないのだろう。


 閑話休題。


「ああ、ケイ達とはちょっと別行動でね。彼女達は新しい僕の仲間だよ」

「ほー、いいねえモテモテで」

「彼女に怒られるよ?」

「はっはっは、あいつはこの程度で怒るようなたまじゃないさ」


 この男、先ほども書いたが元は冒険者であった。だが今の奥さんに出会い、彼女の実家を継ぐために冒険者を辞めたという経緯がある。ちなみに彼はいまだに当時の仲間からこの辺りのことでからかわれることがよくある。


「それで部屋はあるかい?」

「…あー、四人部屋一つしかねえな。どうする?」

「私達はかまいませんよ?」


 宿の主人の申し訳なさそうな答えに対して、ミチは間髪入れずに承諾の意を返す。彼女達としてはこれまでの旅で慣れたというのもあるのだが、それ以上にナルに対して絶対の信頼を置いているためでもある。


「だったら」

「悪いがそれは却下だ」


 ミチの答えを受けたナルは主人に対して今夜の宿を頼もうとしたのであったが、その声は更なる別の声に遮られた。それは女性の声であり、彼らの後ろから聞こえた。


 はい、結局土壇場になって書き上げてしまうのはどうにかしないといけませんね。会話文自体は一話分くらい進めてはいるのですが、あとから差し込む地の文に時間が掛かってしまいます。もう少しバランスよく書き進めないといけませんね。あとこういった話はタイトルが非常につけにくい、どうにかならんものか。


 さて、例の男の名前が出てきましたね。なんとなく名前からどういった感じのキャラかは分かって貰えるとは思いますが、これからどうなっていくでしょうかねえ。そして最後に出てきた謎の声、ぶっちゃけてしまうと新しいハーレム要因です。どんな人物かは次話以降で書いていきましょうかね。それよりも、これからどうしようか。首都では合流せずにノックスかその手前で全員集合としたかったのですが何かこのまま首都で合流させた方がいいような気がしてきましたよ。どっちにしようかなー。


 ブックマークや投稿日のアクセス数がゆっくりと増えていっていますね。有名どころとは比べるまでもありませんが、じわりじわりとこれを読んでくれる人が増えているというのは本当ににやけてしまいます、気力も上がっていきます。この調子で精進していくつもりです、……他作品も書かないとなあ。



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