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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第一章:ケイの出会い
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魔物化

副題は知り合いなのかな

 解体場には男性が二名おり、急に来た村長と見たことの無い男に困惑し再びフードを深くかぶったノエルには眉をひそめた。


「村長どうしてここに? それにそちらは?」

「彼はケイ、冒険者だそうでのう、村の者がクマに襲われたところを助けてもらったじゃ」

「クマ? エイグマですか?」

「よくわからんから見せてもらうことになった。ケイ殿お願いします」


 ケイが解体場の地面に手を向けるとそこにあの巨体が現れる。そのあまりの大きさに村長達も驚愕の声を上げる。


「これほどとはのう、しかし確かにこれはエイグマには見えんな」

「頭がねえな、あんたこいつの頭は?」

「これだ」

「ずいぶんと凶悪な面ですのう」


 その顔を覗き込んでいた男のひとりが声を上げる。


「ってあれ、こいつの顔ってエイグマじゃね?」

「え、…確かにエイグマの面影はあるな。でもなあ」

「むう、確かにそう見えなくも無いのう。しかしのう」


 自分達のものとあまりにも違うため三人も判断に困っているようだ。


「私の予想だがこいつはエイグマとやらが魔物化したものではないだろうか」

「魔物化ってなんだ?」

「魔物のことは知っているな?一般的に魔物と呼ばれるものは生まれながらにして体に魔石を持ち魔力を何かの形で使っているのだが、普通の動物が魔力の濃い地帯に迷い込むなどして後天的に体内に魔石を作り出してしまうことがあるのだ。その結果もとのそれと姿かたちが変わることがある。そのことを魔物化と言い、変異した動物の中で魔力を扱えないものを魔獣という。この予想があっているのならば体内に魔石があるはずなので解体をしたい」

「へー、そんなんあんのか。解体は俺達がやんのか?」

「いや、ここでやっていいのならば私がやる。道具も技術も問題ない」

「かまいませんぞ」


 その言葉を受けケイが解体を開始する。彼がクマの胸を開き心臓を取り出したところ、中に直径10シムルほどの魔石が入っていた。


「そいつが魔石ですかの?」

「ああ、大きさはそれなりだが純度は低い、やはり魔獣か」

「あれ、だとするとそいつが魔物化?した原因が近くにあんのか?」

「どこかから来た可能性もあるが、この辺りの生物であることを考えると森の中に何かがある可能性はある」


 その言葉にケイ以外の顔がこわばる。自分の村の近くによろしくないものがあるかもしれないと聞けばそうもなるだろう。もしかしたらまた同じようなことが起きて次は自分が襲われるかもしれないのだから。


「…ケイ殿、そういったものの調査はギルドもやってくれますかの?」

「確実にな。魔獣は魔物と違い魔力を用いることは出来ないがその身体能力は十分高い。後天的、突発的に生まれたものである以上どうしても情報不足となり対応に苦労しかねん。今回魔獣だったが魔物が生まれる可能性もある、そうなるとさらに危険性は上がる。それを防ぐためにも緊急依頼として迅速な対応をするだろう。ヌルの街に知らせて至急ツーリアにも連絡してもらうしかない」

「ケイ殿は手伝ってくれますかの?」

「さすがにそうなると私も依頼という形をとって貰うしかない。これでも高ランク冒険者なのでね、それなりにかかるぞ。ギルドを経由すればあちらが依頼料の大半を持つだろうが、ここで直接依頼をするとなるとこの村ではきついと思うが」

「おい、金取んのかよ!?」


 男の一人がケイに迫る。ここにきてがめついとでも思ったのか、人情が無いとでも思ったのか。そんな男の剣幕を気にも留めずケイは淡々と返す。


「高ランクが下手に安売りをするのも問題がある、というだ」

「けどよ!」

「よさんか。しかしケイ殿、こちらがギルドに依頼しそれをあなたが受けるというのは問題ないのですかの?」

「あまり時間を無為に過ごしたくはないのだがな、どうやらここには縁があるらしい。依頼が出されれば受けよう」

「では急ぎヌルの街に使いを走らせなければならんようじゃのう」

「私も同行しよう、そのほうが話も早く進む」

「ならば…ノエル、シェルのやつは大丈夫か?」

「父に?かまわないと思いますけど」

「ではシェルの元に行こう、ケイ殿。それとおぬしらはここの後始末とほかの者たちを集めてくれるか」

「了解した」

「わかったぜ」


 村長、ケイ、ノエルはノエルとシェルの家へと向かう。ノエルの家はほかの家と比べると新しく、十年もたっていないかといったところか。


「シェル、わしじゃ」

「…どうしたんだ村長、とノエルか。っ貴方は!?」


家の中から出てきたのはノエルと同じく緑色の目を持つ四十代ほどのがっしりとした男だった。呼び変えに応じて出てきた彼はケイを見た途端驚きの声を上げる。


「後にしてもらおう、今は先にやることがある」

「…わかりました」


彼らを家に招きいれたシェルはノエルにお茶を頼む。そのお茶を潤滑剤にして要件を伝えることとなった。


「そういうことか、わかった村長、その使い引き受けた」

「すまんのう」

「では今すぐ発ちましょうか、ノエルお前は村長のところで世話になれ」

「えっと、今すぐ行くのお父さん?」

「早いほうが良いだろう。今が大体三時、馬を使えば明日の朝には着ける。かまいませんよね?」

「そちらが良ければな」

「では頼むぞシェル、ケイ殿」

「ああ」


 そのまま二人は準備を整え、村の馬に跨り駆け出した。後姿を二人に見つめられながら。


「シェルの様子がおかしかったのう」

「ケイさんと父は知り合いのようでしたけど、いったいどんな関係なんでしょうか」

「心当たりがないこともないが、気にしてもしょうがないじゃろう。今は村の皆への説明をせねばのう。ノエル、お主はわしの家に戻ると良い。皆の前に出るのはつらかろう」

「すいません」

「よいよい、むしろわしが謝らなければならん。あやつらも根も葉もない噂を信じおって」

「呪い…」

「そんなものは無いというのにのう…。さて、行くかのう」

「はい」



魔石:これを体内に持ち魔法を使える生物を一般的に魔物と呼称する。この世界においてさまざまな道具のエネルギー源となる。魔石は魔物が体内に取り込んだ空気や食物に含まれる魔力を糧に成長する、そのため長く生きた魔物ほど魔石は大きく、強力な魔物であるほどその純度は高い。魔物の体内から出されるとその時点でそれの大きさは固定されるが、その状態でも減少した魔力を大気中から吸収する性質を持つので大きく保有魔力の多い魔石ほど価値が高い。


魔物:魔石を体内に持ち、魔法を使える生物。炎を吐いたり空を飛んだり出来る、ただし下位の魔物は身体強化の魔法くらいしか使えない。魔獣はこれのなりそこないで魔法が使えない。



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