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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第三章:ナルの再会
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決闘決着

副題は氷


「食らえよ!!」

「当たらないって、【風球】」


 キャルアが一気に距離を詰めて首を狙って剣を振るってくる、だけどそんなもの簡単に避けられる、半身を引いて剣をかわすと同時に魔術を放つ。


「効くかよ!」

「問題ないよ、【土の鎖】」


 障壁で風球は防がれたか、だけどこれはあくまで牽制、次は地面から鎖を伸ばして絡め取ってみようか。


「舐めんな!」


 今度は剣で防がれた、結構反応が速いね。だったらこれはどうかな?


「せいっ!」

「ぐおっ?!」

「すごい攻防だー!! ナルがキャッシュの疾風の如き剣をかわし、あまつさえ魔法まで行使したぞ!! Sクラスであるキャッシュの攻撃をいなして吹き飛ばしたナルは、一体何者なんだー!?」


 剣を振って体勢が僅かに乱れた隙に蹴りを放つ、上手くキャルアは吹っ飛んでくれたか。自分から跳んでダメージを抑えたのは感心するけど、そもそもこれに当たっているようじゃまだまだSSを倒すのは無理だね。…にしてもうるさいな、実況。ユウ辺りだったら事故に見せかけて実況席に攻撃飛ばしているだろうな、さすがに僕はやらないけど。


「これで距離は開いたね」

「あ? …テメエ、わざと俺が下がるようにしたのか?!」

「そんなところだよ、距離は開けたかったけど正直この場を動きたくなかったからね」


 こういう手合いは接戦のまま敗北しても素直に敗北を認めてくれないからね、だからこそ。


「友人の言葉を借りるなら、圧倒させてもらおうか、ってね」

「きぃさぁまぁ!!!! 調子に乗ってんじゃねええ!!! 【我が内なる炎よ! 大地を駆け抜け、我が怨敵を焼く尽くせ! 走れ、血走烈火!!】」

「おおっと?! これがキャリアの足元から炎が現れたー! これが彼の二つ名の烈火なのかー?! ナルはこれに一体どう対処するー!?」


 キャルアの足元から、鮮血の如き紅でその身を表す炎が地を走り僕に迫る。彼の代名詞にして切り札か。何と言うか、畏怖を持って対しなければならない力というよりは、どうにも小物臭がする技にしか思えないねえ。この程度の炎で本当にSSを、いや、常識の外に在る者を倒せると考えているなんて。


「見くびられたものだよ。まったく」


 だったら理解させてあげるよ、抗いようの無い圧倒的な力の差というものをね。


「【凍てつけ、世界】」


 キン! と鋭い音が響く、その果てに生じるものは…。


「…は?」


 闘技場の地を覆う氷の海、地を走る炎すらも凍てつく世界。これこそが、僕の固有魔法。


「な、何だこれはー!? 闘技場の地面が一瞬にして凍りついたー?! 一体何が起こったというのかー?!」

「これがSSだ、理解してもらえたかな?」

「…も、もう一度だ! 【我が内なる炎よ! 大地を駆け抜け、我が怨敵を焼く尽くせ! 走れ、血走烈火!!】」


 現状が理解できないのか、すでに敗れた魔法をもう一度行使する。代名詞といえば聞こえはいいけど、結局それ一つしか札を持っていないって事か。キャルアの詠唱によって再び地を走らんとする炎が彼の足元から生まれる、だけど。


「?! 何でだ?! どうして俺の炎が凍る!? 何をしやがった?!?!」


 その炎が走り出すことは無い、生れ落ちてすぐにその身を透明な檻の中に封じられる。いくらやっても最早この空間で炎を使うことは無理だよ、少なくとも君程度ではね。大体一度止められた攻撃が今度は通ると思うなんてなんて、ちょっと楽観的過ぎないかな。


「無駄だよ、この場は僕が掌握した。君の炎は最早何の役にも立たないよ」

「ふ、ふざけるな!! だったら直接テメエをぶった切ってやるよ!!」


 懲りずに剣を以って僕を討つつもりか、面倒だな、まったく。現状をまったく理解していない、むしろ理解したくないのか? …はあ、あんまりやりたくは無いんだけどねえ、こんな場では特に。とりあえずは軽くジャブを放とうか、これで止まってくれると楽なんだけどな。


「…あ? どうして足がう!? な、何だよこりゃ?!」


 キャルアの右足が凍りつき、大地と離れるのを拒んでいる。別に炎を凍らせることだけが僕の魔法じゃない、むしろ氷の魔法といえばこういったものが頭を過ぎる。それに思い至らなかった時点で、君の勝利は存在しない。仮にもSクラスならその可能性ぐらい思い至るはずだけどね、SSだったらくらった上でも打ち勝てるけどコイツはそうじゃないしねえ。


「これ以上やるかい? 君の足は封じた、確か君には炎属性以外の適性はなかったと聞いている、遠距離攻撃手段も無いのにこの状況で僕に勝てるかい?」

「だったらこの氷を砕きゃいいんだろうが!」


 今度は右手の剣で足の氷を砕こうとしている、その程度で壊れるような氷じゃないよ、無駄なことだね。…さて、どうしようか? これでも諦めないというのは実に面倒くさい。…やっぱりやるしかないのか。はあ、面倒くさいうえに気乗りがしない。でもやらないとこれからも付きまとわれそうだしな、…伍月さんから引かれる可能性があることからは目を背けようか。大体僕は彼女に嫌われた方が都合がいいんだから、…はあ。


「そろそろやめないかい? そうしないとこっちもそれなりの手段をとらないといけないんだけど」

「うるせえ!! いいな、そこから逃げんじゃねえぞ!!」


 …なんでこれでSSになれたんだろ? それとも敗北で格が落ちた? ま、何でもいいか。


「それじゃ、これでチェックメイトだ」


 いまだに無駄な抵抗を続けるキャルアの右手を肘の辺りまで凍らせる、その上で…砕く。


「…は? おい、おい、おいおいおいおいおいおい!??! 何で俺の腕が無いんだよーー?!?!」


 別にこの魔法はただものを凍らせるだけが能じゃない。凍らせる度合いを変化させることぐらい簡単に出来る。日本に居たときに見た液体窒素の実験、あれはより低い温度でものを凍らせればそれが脆くなる事を僕に教えてくれた、つまり一定ライン以下まで温度を下げれば人体すらも簡単に砕けるということだ。それに魔法というものは発動させた者のイメージしだいである程度は強化できる、微かな振動で壊れてしまうほど脆くなる様に人体を凍らせることもそこまで難しくはない。ま、固有魔法だからある程度は融通が利くのかもしれない、このレベルにはケイ達も上手く至らないと言っていたし。


「これ以上やるなら他の四肢も砕くよ?」

「…は! ちょっと上手くいったからって調子に乗るなよ! こんな魔法そう何度も使えねえはず、だったらその隙に」

「その足でどうするのさ? と言っても、今から砕くけど」

「…え? …は?」


 再び魔法を行使する、なんだか面倒になってきたので一気に両足を砕いた。彼の体は氷の地面に投げ出され、僕を見上げる形となった。これで完全に彼は動けない、これ以上やるって言うのなら左手もかな?


「さ、まだやる? いい加減に負けを認めて欲しいんだけどねえ」

「ふっ、ふざけ!?」

「まだ、やる?」


 彼の体を氷が覆う、その氷が顔にすら辿り着き、その左半分を完全に凍らせる。彼の残った右目には、自分の顔が凍りついている様がまじまじと見えていることだろう。


「なっ、あっ」

「もう一度だけ聞いてあげる。まだ、やる? これ以上やる気なら」


 殺気を纏い再び問いかける、これ以上抗うならもう付き合っていられない。決闘では相手を殺してもかまわないことにはなっている、だったら。


「殺すよ?」

「ヒ、ヒィィ?! わ、分かった! 降参する、だから、だから殺さないでくれえ!!!!!!」


「…は!? ど、どうやら勝敗は着いたようだー!! この決闘の勝者は、ナルだーー!!」


 実況の男の声が響く、途中から何も言っていなかったのはこの状況に呑まれていたからかな? 観客も静まり返っているのは、…まあ、そういうことなんだろうね。




 実況が黙っているのはおかしいので後から突っ込んでみましたが、どうにもテンポが悪いか? でも実況をしていないのもおかしいし、ナルが実況が聞こえないほど集中するような相手でも無いし、闘技場は良くなかったか?


 ーを使うと何かわざとらしい文に見えるなあ、何でだろうか? 実況の話し方で語尾を延ばさないのはおかしい気がしたので長音符(だっけ?)を入れてはみましたがなーんかしっくりこない。何でだ?


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