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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第三章:ナルの再会
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計画的? 短絡的?

副題は決闘前


戯れに予約投稿


 翌日は特に何事もなく一日を過ごした。伍月さんは僕に対して視線こそ向けてきたけれど、何も言葉をかけては来なかった。ニーナさんやキッカさんも僕たちの間に何かがあったことは察しつつも、それを口に出すようなことはしてこなかった。僕が店の手伝いをしている間も、終始事務的な言葉を交わしただけだ。


 そして、いよいよ決闘の日となった。



「ナル」

「クエラさん、どうしました?」


 闘技場の控え室とやらで待っていた僕にクエラさんが話しかけてきた、男爵の警護じゃなかったのかな?


「お前に伝えておくことがあってな」

「何でしょう?」

「お前が言っていた賊の背後についてだ」

「どうでした?」

「おそらく、ギーガで間違いないようだ」


 随分と自信があるみたいだ、この短い時間でそこまでの証拠が出たのか?


「断言できるのですか?」

「ああ、賊の頭にギーガの顔を確認させたら一発だった、そいつの命令で金と引き換えにグエンを襲ったと。ただそれだと色々不可思議な点があるからな、昨日は出来る限りそれの裏を取ってみた。結果としてギーガがクロであると認められる証拠がごろごろと出てきやがった」


 ごろごろと、か。


「つまりギーガが男爵を襲わせたのは確定的ということですか」

「そうなるな、お前の予想は当たっていたってこった」

「…」


 どうにも気になるな、何でこうもあっさりと黒幕が露呈する? 普通ならもう少し隠そうとしないか? 引っかかることが多いな。


「どうした? 考え込んでよ」

「さすがにおかしくないですか? どうしてこうも簡単に奴が犯人である証拠が出てくるんです?」

「誰かが奴を嵌めたとでも?」

「いいえ、まず間違いなく彼が黒幕でしょう。ただそれが分かり易過ぎる、普通ならもう少し隠そうとするものでしょう。いくらなんでも賊の前に直接姿を見せたりしますか?」


 僕なら誰かを間に入れて依頼をする、少なくとも実行部隊に直接顔を見せたりしない、それが金で雇った相手ならなおさらだ。それが直接依頼に行った? どんだけ馬鹿なんだ、仮にも貴族家の一員である以上はそれなり以上の教育をされているはずなのに? 


「確かにな、その辺りに関してはグエンの奴も疑問視していた。どういうこったろうな?」

「考えられることは大きく分けて三つ。一つ目はこれが彼を嵌めるためであるという考え、何者かが彼に罪を被せる為に色々と手を打った可能性。二つ目は彼が本当に馬鹿であるという考え、これだったら僕達の疑問は単なる取り越し苦労で済む。三つ目は彼が捨て駒であるという考え、これだったら彼がいくら疑われてもかまわないから証拠なんか気にしない」


 他にも考えられることはあるだろうけど、とりあえずパッと思いつくのはこれくらいだ。ユウほど割り切っては居ないけど、僕も基本的に頭脳労働はケイに投げっぱだからね。そこまで頭は良くないことは自覚している。


「二つ目はとりあえず考えなくていいだろう、だったら一つ目か三つ目だか…」

「どちらかといえば三つ目ではないかと。言っては何ですが男爵家程度を貶めてもそれほどうまみがあるとは考え難い、だったら彼が使いっ走りと考えた方がしっくりは来ます」


 そう、理屈だけみれば一応は納得がいく。納得はいくんだけど…。


「何か含みがある言い方だな?」

「どうにも、ね。これは彼が自分は切られてかまわないと思っていなければ不可解な動きだ、そうなると彼は何故自分を犠牲に出来るのか? そこが分からないのですよ。それに、印象論になりますが僕には彼が自分本位なタイプに見えました。そんな人物がとる行動には思えないんですよ」


 感情を考えるとどうにも彼は誰かの為に身を粉にするとは思えないんだよな、あれだけ短絡的な行動をとっておいて誰かに仕えているものなのか?


「確かにな、どうにも色々とおかしい」

「この辺りを考えると二つ目もそれなりに納得できるようになるのが困りものです」


 彼が短絡的で、その場の思いつきで動いていると考えた方が得心がいくというのだから面倒な話だ。結局のところ、どれも全て推測の域を出ない。


「んー、とりあえずグエンのところにも持っていってみるわ」

「ええ、お願いします。それで、結局ギーガに関しては何か処理するつもりはあるのですか?」

「ああ、一応グルム家当主には秘密裏に話を通したそうだ。結果としてこの決闘の後に秘密裏に処分するそうだ、万が一お前が負けても約束を守る必要はねえってよ」


 処理、処分、か。こういった会話を何の迷いも無く交わせるようになっている、やっぱり彼女に僕は合わないよ。もう僕は平和な国の出身ではない、命の危機がそれなりにありその上で危険に飛び込む生き方をしている。もはやあちらにはどうあっても適合できない、あちらの世界にも、その住人にも、ね。


「それは助かりますね、何事にも不測の事態というのは起こり得ますから」

「よく言いやがる、お前が早々負けるかよ」

「はは、そうですね」


 実際ケイ達みたいなチートでも無い限り、僕が負けることなんて無いだろう。それがSSっていうものだからだ、それは断言できる。


「さ、て。そろそろ時間のようです、僕は行きますよ」

「ああ、頑張れよ、王子様?」

「どうにも笑えませんね、貴方に言われると」


 冗談とはいえいまいち流しづらいな、まったく。


「そうか? 何にせよ今のお前はミチにとっては王子様みたいなもんだろ? 悪役に連れさられようとしているお姫様を護る王子様ってな」

「僕に王子様は務まりませんよ、いいとこ騎士ってものですよ」


 王子様はケイに譲るよ、僕はそんながらじゃない。


「そうかねえ、ま、頑張れよ」

「ええ、いって来ます」


 さーて、一体誰が相手になるのやら。



「お待たせしました、皆の衆! これより、一人の女を賭けた男共の決闘の時間だ! さあて、どちらが勝者となってお姫様を手に入れるのか? それはお前達の目で確かめろ!!」


 うるっさい司会だな、まったく。観客もノリノリで面倒だね、こういうのはどうにも乗らない。はあ、伍月さんのためじゃなかったらこんなことはして無いよ、本当に。


「ふん、逃げずに来たのは褒めてやる。だがお前はここで敗れることになるのだ!!」


 こっちもこっちでうるさいな、何一人で突っ立ってんだか。


「はいはい、いいからさっさと代理人を出して下がってよ。君に何時までもこだわっていられないんだ」

「貴様! 無礼であろうが!!」

「だ・か・ら、君如きじゃ僕には張り合えないんだってば。男爵家の息子風情がSSの上に立てるとでも?」


 SSは最低でも伯爵家以上となりえる肩書きだ、それが君風情に頭を垂れる必要がまるでない。


「ええい、喧しい!! もうかまわん、おい!!」


 喧しいのはそっちだよ、まったく。それで、あれが代理人か? …うん?


「久しぶりだなあ、“双剣奏々”?」

「君かい、“血走烈火”」


 まったく、こんなところでこいつに会う事になるなんてね、面倒な話だ。


「お前を殺すためにここまで来てやったぜい? 今日こそお前をぶっ殺してやるよお!」

「はいはい、威勢だけはいいねまったく。誰が君の左目を奪ったと思っているんだか」


 というかいまだに治してなかったのか、仮にもSクラスのはずなんだけどなコイツ。目を治すための伝手の類が無いのか? Sクラスの癖して? 情け無いねえ。


「そうだよ、お前だよ。一日たりとも忘れたことはねえ、この左目はいまだにお前を見続けてるんだ! お前にも同じ痛みを味わってもらうぜい!!」


 ストーカーかなんかかい、まったく。面倒なやつだね、本当に。


「生憎と、君と違って僕は目が無くなった程度なら簡単に治す手段がある。いくらやっても徒労で終わるよ?」

「うるせえ!! いいからとっとと構えやがれえ!!」

「はあ…」


 と言われてもなあ、こいつ相手に双剣を抜く必要性が感じないんだよな。魔法で事足りるよ。


「てか君、どうしてここに居るのさ? まさか元から雇われていたの?」

「ふん、依頼でこっちに来てたんだよ。そしたらナルって名前の男を倒すのに実力者を探してるって話じゃねえか、だったら俺がやるに決まってんだろ?」


 随分とまあタイミングのいい男だ、まさか依頼先で憎んでいる相手を見つけるなんてねえ。僕からしたら面倒な話だけどね。…後から代理人を探していたって事は勝算があって僕に決闘を挑んだわけじゃないのか、やっぱり短絡的だな。案外そっちが真実なのかなあ?


「さて、諸君! いよいよ対戦者が揃った様だ! 片やギーガ・ゲム・グルム氏が代理人、ギルドランクSの冒険者にして“血走烈火”の二つ名を持つ男、キャルア・ベッソス!! 対するは謎の男、ナルだ!! 最早ネームバリューだけを見れば勝負は決まったも同然かー!?」


 そういえばそんな名前だったね、二つ名は覚えてたけど本名はあやふやだったよ。それにしても謎の男って、随分と適当な紹介だ。こっちの情報は出さなかったのか、ギーガはどうにも本気にしている様子は無かったけどそれかなあ。というかいくら僕が憎いとはいえ、よくもまああの程度の男に従う気になるなあ、そこまで大層な依頼料を払えるとも思えないけど。…にしてもねえ。


「よくもまあ本名を出す気になったもんだね、君。結構問題のある冒険者の癖に」

「はん! あれも全部テメエらのせいだろうが!」

「勝手なことを言わないで欲しいなあ」


 あれはそっちが裏づけもせずに護衛依頼を受けたのが悪いんでしょうよ、悪事を働いた商人の捕縛の依頼で動いていたこっちに敵対するからこっちも対処せざるを得なかったんだけ。その結果そっちが負傷してもそれは。


「君が弱いからでしょうよ」

「テメエ!! ぶっ殺す!!」

「端からそのつもりの癖に、今更だよ」


 今更殺気程度で怯む程ぬるく無いよ、僕は。



「さあ、当事者達の準備は整ったようだ! 皆どっちに賭けるかはもう済ませたか?! いよいよ決闘の始まりだー!!」


 キャルアが右手に剣を抜き、構える。僕は両の腰の双剣をポンと軽く叩いた後に手を下ろす。魔法主体で戦うのに構える必要は無い。


「さあ、決闘の開園だ!! いざ、始め!!」


 どうにも会話文をぺーっと書いてから地の文を間に入れ込んでいった方が個人的には書きやすいと気がついた今日この頃。


 そしてなんとなく予約投稿、時間をばらして投稿すれば人の目に付きやすいかと思ったもので。少しの間はこの感じで時間を変えて投稿するつもりなので、元から読んでくださっている皆さんには申し訳有りません。一日一話しか投稿しないつもりなのでその辺りで混乱はしないようにはしておきます。


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