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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第三章:ナルの再会
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疑問多々

副題は奇妙な諸々


「では、君とミチは別に恋人ではない、と?」

「ええ、あの場をやり過ごすための方便ですよ。大体、本当に恋人ならすでに言っていますよ」

「むう…」


 ですから微妙に睨みつけるのはよして欲しいのですが。


「残念ですねえ、お嬢様の恋人かと期待したのですが」


 さっきのメイドさんか、この人はニル家関係なのかな?


「えっと?」

「あ、申し訳ありません。私はニル家のメイドでニーナ・サッカと申します、今は旦那様の命でお嬢様専属としてこの店で働いております」

「そうでしたか、僕の名前はナル。さっき言った通り冒険者をやっています」

「以後お見知りおきを」


 ふむ、この子は味方と思っていいね。これからは少し警戒していったほうが良さそうだけどこの人はとりあえず気にしなくていいか。


「えっと、先輩?」

「あ、ごめんね伍月さん。勝手なことをして」

「い、いえ。それはいいんですけど、私にとっても良い事でしたし…」

「む?」

「あ、き、気にしないでください、おじ様」

「それ以外なら何だい?」

「えっと、妙に女性慣れしている感じでしたけど、もしかして恋人がいるんですか?」


 泣きそうな顔で聞くのはやめて欲しいなあ、罪悪感がすごい。


「いないよ、別に。そりゃあこの歳まで生きてきたらそれなりに人生経験も身につけるよ」

「そう、ですか? あっちに居たときの先輩はそんなんじゃなかったですけど」

「まあ、人生やり直した所為かな? 前と違って結構自信を持って生きれるようになったからね」


 前の人生は正直余り良いものではなかったからね、伍月さんたちが居ただけましだったけど。もっとも、今の人生だってそこまで良いものかって聞かれると返事に困るけど。まあ、あっちには居なかった親友を得ることができ、今のように充実した生き方が出来るのは良いことだと断言できるけど。


「にしても妙に高圧的というか、威圧的というか、不遜な感じでしたよ?」

「うむ」

「だなあ」

「はい」

「あ、あははは」


 完全にどっかの誰かさん達の影響を受けてるな、これ。ちょっと毒されすぎちゃったかな? ま、いいけどね。



「それよりもギーガについての話をしたいのですけど」


 正直僕としても困ったことになっているんだよね、まったく面倒な。


「…そうだな、まずは謝罪をさせてもらう。私の娘のために余計な苦労をかけることになり申し訳ない」

「いえ、あれは僕の意思でやってことですから」

「すみません、先輩」

「いいよ、別に。後輩が困っていたら助けるのが先輩の勤めってものさ、結局悪化したような気しかしないけど」

「それでも助かりました」

「で、アイツは一体何なんだ?」

「うむ、私も奴があのような真似をする心当たりが無いのだが、一体どういう状況なのだ?」

「ええと、ですね。何処から説明すればいいのでしょうか」

「私が説明しましょう」


 ニーナさんが話を始める、さて、どうなっているのかな?



「あの男がこの店に来たのは一週間ほど前のことでした、グルム男爵と一緒にお嬢様への挨拶に来たのです。その場では特には何の反応もしていなかったのですが、その翌日から度々この店に来てあのようにお嬢様に対して求婚を申し込むようになりました。しかしこちらの都合も考えずに来るため、接客中に強引な行動をすることもありはっきり言って営業妨害となることもありました。私達も辟易していたのですがさすがにグルム男爵に直談判するわけにも行かず、どうしたものかと頭を抱えていました」

「なので、今回のおじ様たちの訪問と先輩の存在は本当に助かりました」


 なるほどね、そういったことがあったのか。どうしたものかなあ、面倒くさい。


「ううむ、どうしたものか」

「グルム男爵に話を聞きに行くのはどうだ? お前の友人なんだろ?」

「そうなのだが、こちらに店を出す土地を用意してもらった手前、あまり事を大きくはしたくないのだ」

「下手を打つと互いの家の醜聞になりかねないと?」


 貴族というのは本当に面倒なものだね、…ま、今更僕が気にするものでもない、ね。


「そうだ、正直に言うと私が大々的に動くのは得策ではない。」

「となると、二日後の決闘でナルが勝つのが一番か?」

「正直決闘が開かれる時点で十分大事な気がしますけどね。…そういえば、何でこの街には闘技場なんてものが有るのですか?」


 確かギーガが闘技場に来いって言っていたよね? 何でこの街にはそんなものが有るんだ?


「ああ、それか。何代か前のグルム家当主が作らせたものだと聞いたことがある、民衆への娯楽提供と収入増加を目的として造ったと。結果としてそれは成功し、この街はさらに発展できたそうだ。もっとも、ここ数年は大規模な試合は行われていないそうだがな」


 なるほどね、…あれ、僕見世物になるの? それは面倒だなあ、あんまり顔が売れるのは遠慮したいんだけど。


「いくら男爵家の息子だからってそんなもんを簡単に使えるのか?」

「決闘用としてなら使用申請は通るのではないか? さすがに使えないのにそこに来いとは言わんと思うが」

「でしょうね、結局のところ使用可か不可かは関係ないです」

「で、だ。勝てるよな、ナル?」

「当たり前です、いくらなんでもSSクラスでも無い限り人間相手に負けませんよ」


 さすがにそれぐらいの自負はある、あまり謙遜しすぎるのも宜しくないと二人にも言われたし。


「えっと、そのSSって結局どういうことですか?」

「え? ってお嬢様はご存知ないですよね、そう言えば」

「あまりそちら関係については教えていないからな、生きていくのに必要な最低限に色が着いた程度しか教えていない」

「冒険者は知っているよね? 冒険者は主に強さを基準としてランク付けされていて、SSっていうのはそれの最上位だよ」

「常識外クラスとも言われるな、基準としては国に喧嘩を売れるかだったか?」

「ええ、Aクラスまでは強さ以外の要素も加味しますが、Sクラス以上となると完全に強さのみで判断します。ハザード級を相手にすることが出来ない程度ではどう足掻いてもS以上には成れません」

「先輩がそうだと?」

「うん、まあね」


 あの零の戦場のせいでこんな肩書きを得ることになっちゃったんだよね、あれは本当に厳しかったなあ。緊張と恐怖が常にあった、ケイ達はともかく僕は元々が普通の人間だからね、あんな戦場は二度と経験したくないな。


「だったらおかしくないですか? そんな人に決闘を挑むものでしょうか?」

「だよねえ、僕もそこが気になってるんだ。男爵、彼はそれほどまでの愚か者ですか?」

「う、む。そこまで頭が回らぬ人間ではないと思うが、私もそこまで自信は無い。正直奴とは会話など碌に交わしたことが無いからな」

「かといって仮にも貴族家の跡取りがSSの強さを知らないとは思えないのですが」

「だよなあ、どうにもおかしいぞ」

「決闘は当人が出ないといけないのですか?」

「いや、代理人を立てることは可能だが…」

「SSと戦う依頼を受ける奴が居るとも思えないな」

「同じSSなら可能では?」

「うーん、僕のほかにSSは6人居るけど、わざわざそんな依頼受けるかなあ?」


 ケイ達はまず無いし、他の4人も理由はどうあれ代理人に立つとは思えないなあ。


「それにSSへの正当な報酬を奴如きが払えるとも思えねえな」

「そうだな、当主ならともかくその息子が動かせる金額では無いと思うが」

「…この辺りは考えても仕方が無いですね。それよりも男爵、一つ調べて欲しいことがあるのですが」

「何だ? ミチを護る為であるのなら協力は惜しまないが」

「感謝します、午前に貴方達を襲った賊の背後に何かが無いか調べてもらえませんか?」

「賊の? 何故だ?」

「…まさか、アレが奴の仕込みだと言う気かよ、ナル?」

「ええ、先ほど彼が男爵と会った時の反応が気になります。彼の反応はこの場に男爵がいたことに驚いているというよりは、この場に居る筈の無い男爵に驚いたという風に見えました」

「…申し訳ありませんが、その二つの違いとは何ですか?」

「ええと、ここが男爵の娘のものである以上男爵がいらしてもおかしくは無いですよね? でも彼はその可能性を考えていないように思えたので」


 言語化しづらいな、何と言ったらいいのか。


「言うならば、死人が何故ここに居る? という感じに見えました」

「ふむ、調べておこう。事実ならただでは済ません」

「だったら俺もそれに付き合うか。ナルはここに居てくれ」

「え? …ああ、僕はここの警護の方が良いですね」


 僕が動くのは彼の目に留まりかねない、それに僕がここ居れば大抵の事には対処できる。そう考えると僕が彼女たちの護衛にまわった方がいいか。


「えっと?」

「二日間僕がここで君たち二人の警護をする、彼が何かをしてくる可能性もあるからね。居る間は出来ることが有れば手伝うよ?」

「お嬢様、ここは受けた方がいいかと」

「そうなの? …でしたらお願いできますか、先輩?」

「心得たよ」


 伍月さんの警護を受けることがあるとはね、奇妙な運命だよ。



 前々から分かっていましたが、タイトルと副題を考えるのが難しくなってきましたよ。話が長くても短くても考えるのが難しい、気力が薄い今は特に出てこない。どうしたものかな。


 ナルに関して、なにやら面倒と言う台詞が多かったのでもう口癖にしようかな。どうにも彼の地の文を書いていると出てきやすいもので。


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