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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第二章:ユウの契約
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奇跡と出立

副題は二章完結

「ようやっと着いたな」

「ええ、やっとです。これ地上に降りることが出来ますね」

「何だ、意識が飛ぶことがなくなったから空に慣れたかと思ってたんだが」

「ああ、多少はましになったのですがね。どうにもそうそう慣れないようです」

「くっかか、そいつは仕方ねえな。それじゃジールア、空に弱い同乗者のためにさっさと降りてもらえるか?」

「ギャル!」


 ……ふう、ようやく地上ですね。地上に降りたことでやっと気持ちが上がりましたよ。


「ありがとうな、ジールア」

「ギャルル!」

「ブルル!」

「おっと、お前のことも蔑ろにしているわけじゃないぞニッヘレン。ここ数日よくがんばってくれた、ありがとう」

「ヒヒーン!」

「ふうむ、これで空の旅は終わりか。少々惜しいのう」

「貴方は自分で空を飛べるのではないのですか?」

「そうじゃがな、妾がドラゴンとして自分の力で飛ぶのと、人として他者の力で飛ぶのはまた別物であったからな。普段あまり無い経験だったからなかなか楽しくてのう」

「そういうことでしたか」

「それなら悪いが今後空の旅を楽しむ機会は少ないだろうな。本格的にザインが同行者として加わる以上、それをすると一人が使い物にならなくなりかねん」

「申し訳ありません」


 私がもう少し空に強ければよかったのですが…。


「まあ、ザインはそこまで気にせずとも良いぞ。考えを変えてみれば妾はあまり地上を旅することは無いから、それはそれで面白そうじゃからな」


 そういってもらえると助かりますね。


「で、だ。これ以上ニッヘレンとジールアが居ても正直うまく使ってやれないから還そうと思う」

「ブルル…」

「ギャル…」

「ううむ、さびしくなるのう」

「ニッヘレン、ジールア、今日までありがとう」

「ではまたいつか、俺の声に応えて力を貸せ」

「ヒヒーン!!」

「ギャルルー!!」

「いくぞ、【我と契約を結びし者、我が呼びかけに応じ、我が為に力を振るいし者、汝らが功績は我が胸にしかと刻まれた。今こそ汝らが住まう場に戻り、再び我が呼びかける時まで、その地にて我が声を待て】」


 彼らが呼び出された時と逆回しのように、彼らの周りに陣が現れ、光が彼らを包む。そしてその光が消え去ったときにはもう彼らの姿はありませんでした。


「彼らは元居た場所に帰ったのですか?」

「ああ、今頃は自由に空を駆けているだろうさ」

「ふむ、それは良いことじゃな。それでは我らはそのシュタットという街に行こう」

「ああ」

「そうしましょう」


 さて、数日ぶりのシュタットですが、何か変わったことなどは起きていないでしょうね。ユウさんがお膳立てしてくださったのに退職に時間がかかるのは好ましくありませんからね。



 シュタットの街の前まで戻ってきましたが、当然ながらここは変わりないようですね。


「…ん? サブマスさんですか、お久しぶりです。街の外に出ていたのですか?」

「ええ、ギルドとしての用件で出ていました。入れてもらえますか?」

「はい、あ、そちらの方達は貴方のお連れさんですか?」

「ええ、彼らの身元は私が保証します」

「そうですか、でしたらいいですね。どうぞお通りください」

「ええ、ありがとうございます」

「失礼するよ」

「すまんの」


 さて、シュタットの街中も変わりはなさそうですね。ま、そうそう何か起こる事など無いのですが。


「それではどうするのじゃ? まずはギルドに向かうのかの?」

「そうだな、さっさとアイツに依頼達成を報告するか」

「そうですね、では行きましょうか」


 私の最後の仕事報告です、きっちりとやり遂げることとしましょう。



「ここがシュタットのギルドか、大きいのう」

「仮にも大都市のギルドですからね、これくらいの規模はありますよ」

「さっさと入るぞ」


 ユウさんを先頭にギルドの中に入る、久しぶりの我が仕事場ですか。もっとも、もう辞めるつもりなのですが。


「…ユウさん!? 戻ってきたのですね」


 うん? カーラは一体どうしたのでしょうか、急に大声を出したりして。


「ん? お嬢さん?」

「誰じゃ?」

「ここの職員のカーラです、あのように騒ぐ娘ではないのですが…」

「ああ、間に合ったようですね。お願いします、すぐにラインさんの家まで行ってくれませんか!」

「待て、一体どうした? 事情を言え」

「あ、ああ、はい。実は二日前にラインさんの妹さんのロールさんが急に倒れたのです。それから意識はあるのですが体が満足に動かずに、日に日に衰弱して行っているのです。医者にも診てもらったのですが原因不明だと」

「…そういうことか、分かった。今すぐに向かおう、お嬢さんとザインも来い」

「え?」

「はい?」


 私は一応ギルドマスターに報告等をしたいのですが、それにそこまでラインさんとも繋がりは無いのですが。


「お嬢さんは当然としても、ザインは以降俺と行動を共にするのだから俺のやり方は見せておくと言う事だ」

「分かりました」

「いえ、私はやはり」

「いいから行って来い」

「ギルドマスター? 何時の間にこちらに?」


 何時の間に出てきていたのか、ギルドマスターもいらしていました。それにしても。


「良いのですか?」

「ああ、報告は後で良い。カーラも行って来い」

「分かりました、行きましょうユウさん」

「おう、全員着いて来い」


 皆駆け足でラインさんの家に向かう、やれやれ、どうにもすんなりとは行きませんね。



「ライン、俺だ。ユウだ」

「…ユウさん!? 戻ってきていたの!?」


 スレイ? 貴方もここに来ていたのですか。


「お嬢ちゃんか、君もここに居たのか」

「ええ、ロールとラインのことが心配だったから。…貴方ならどうにかできるの?」

「俺の予想通りならな、俺に任せろ」

「頼むわ、こっちよ」



「ライン、妹ちゃん」


 ラインさんの家の奥、その部屋のベッドに一人の女の子が横たわっていました。彼女がラインさんの妹さんですか。


「…ユウ?」


 …随分とやつれています、妹さんが倒れたことが随分とこたえているようですね。


「ああ、帰ってきたぞ」

「お願いだ! ロールを助けてくれ! 俺に出来ることならなんでもする、だからロールを」

「安心しろ、友のために動くのが俺の心情だ。とりあえず今はどけ」

「あ、ああ」

「…久しぶりだな妹ちゃん」

「…ユウさん? 帰ってきていたのですね…」

「ああ、ちょっと失礼するぞ」

「はい…」


 ユウさんが妹さんの手を握った後、彼女の頭に手を触れる、彼は一体何を?


「…やっぱりな」

「何か分かったのか?」

「安心しろ、俺が治す」

「本当か!?」

「ああ、だがここは場所が悪い。ザイン、この辺りにある程度の広さがあってまず人が来ないところはあるか?」

「は?」


 何で今そのようなことを?


「いいから」

「え、えーっと、この街の南に大きな川があります。その川沿いに大きな広場のような場所がありますが、あまり人に知られているわけでは無いのでそこなら依頼でも人が来ることは無いかと」

「川か、致し方ないか。全員そこに移動するぞ、妹ちゃんも連れて行く」

「それに一体何の意味があるんだ?」

「向こうで説明してやる」

「しかしこの人数では向こうまで時間がかかりますが」

「かまわん、デカブツを呼ぶ。そいつに乗っていく」

「呼ぶ? 何のこと?」

「召喚獣のこと。妹ちゃん、暴れるなよ」

「え? わっ」


 ユウさんが妹さんを抱き上げる、お姫様抱っこというやつですか。


「ほら、さっさと街の外にまで行くぞ。ここで呼ぶよりは多少ましだ」

「お、おう。皆行こうぜ」


 ユウさんが全部持って行ってますね、彼は一体何をするつもりなのでしょうか?


「ソフィアさん、ユウさんは何をしようとしているのでしょうか?」

「わからん、あの少女の症状が分からんからのう。少なくとも主様のことじゃ、どうとでもするじゃろう」

「そうですね、ここは信じましょうか」




 ユウさんが少女を抱きかかえていたことで少々トラブルも起きましたが、私の地位でごり押ししました。それで街から少しはなれたところまで来ましたが、彼は何を呼ぶつもりなのでしょうか?


「ここでいいか、【我と契約を結びし者、我と共に生きると決めし者、我が呼びかけに応じ、汝の名を呼びし我の元、疾く来たれ。来い! 獰猛なる空の覇者、ガラッハ!】」


 彼の召喚によってまた何かが呼び出される。ニッヘレン達と違って召喚陣が大きい、直径10ムルはありますか? そして呼び出されたのは、ドラゴンの姿のソフィアさんよりは多少小さいかというほどの大きさの巨大なワイバーンでした。


「ギャオーー!」

「こ、これは?」

「ギガントワイバーンじゃと!? 主殿はこのようなものまで従えておったのか」

「ギガント?」

「S級の魔物じゃ、まず間違いなくこれを召喚獣に出来るような奴などおらんぞ」

「S!? ユウの奴マジでどうなってるんだ?!」

「いいから乗れ。ガラッハ、南に向かって川沿いに飛べ、広場を見つけたらそこに下りる」

「ギャオ!!」

「の、乗っても大丈夫ですよね」

「いいから急げ」

「は、はい」



 ガラッハの背に乗り川沿いを飛ぶ、時折記憶から私が案内をしつつ飛んでいるとすぐにそこまで着けました。


「あの大きさなら、このまま降りろガラッハ」

「ギャオ!」




「っと、全員降りたな」

「それでどうするのじゃ、主殿?」

「喜べソフィア、お前に面白いものを見せてやる」

「うむ? …まさか」

「それじゃ、全員下がっていろ」

「彼は何をするつもりなのですか、ソフィアさん?」

「もしかしたら、ここに居る全員が歴史的な体験をするかもしれんぞ」

「はい?」


「ふー、【我と盟約を結びし者、我に加護を与えし者、我が呼びかけに応じ、汝の名を呼びし我の元、疾く来たれ。来い! 炎の大精霊 フーリア! 風の大精霊 ウィンディア!】」


 …はい?


 彼の詠唱が終わったとき空には六人の何かが浮かんでいました、これほどの存在感と圧力、そして彼の詠唱。もしかして、この方々は…!


「炎の大精霊 フーリア」


 赤い瞳と赤い髪、赤い衣を纏った女性が言う。


「水の大精霊 アキュエ」


 青い瞳と青い髪、青い衣を纏った男性が言う。。


「地の大精霊 グラナーデ」


 橙の瞳と橙の髪、橙の衣を纏った女性が言う。


「風の大精霊 ウィンディア」


 緑の瞳と緑の髪、緑の衣を纏った男性が言う


「光の大精霊 シャルア」


 金の瞳と金の髪、金の衣を纏った男性が言う。


「闇の大精霊 ダルーナ」


 黒の瞳と黒の髪、黒の衣を纏った女性が言う。


『我ら精霊神、我らが盟友の呼びかけに応じ、今ここに顕現せん!』


 この方々が、ラクセイリアを生み出し維持する神々の一柱、六体の大精霊を一つの神とする唯一の存在、精霊神…!!


「まさか、精霊神の顕現など…」

「ハ、ハハハハ!!これが精霊神! やはり主様は最高じゃ!! この目で精霊神を見ることが出来るなどとはな!!」

「え、え? 一体何が起きたんだ?」

「気付きなさいよ、ライン!」

「あの方々が、精霊神。ラクセイリアの神々の一柱です!」

「は、はあ!?」


「おいこら、盟友共」

「どうしたよ、盟友?」

「何で来てんだ? 俺が呼んだのはフーリアとウィンディアの二柱だけだ、何で他のも来てんだ」

「そうだぞ、盟友はアタシと風のを呼んだんだ。何で光の達まで来てんのさ?」

「お前たちだけが呼ばれるなど不公平ではないか、なあ闇の」

「ええ、私達にも盟友の力になりたいですからね」

「お前ら全員呼ぶとかどんだけ広域破壊をしたいんだ、まったく。…まあいい、来たからには働いてくれ」

「うむ、それで俺達は何をすればいいのだ?」

「あの女の子をどう見る?」

「うん? …なるほど、これは火のと風のを呼ぶわけね」

「そうだな、どうにも生命の流れが悪い」

「えっと? ユウ、一体どういうこと何だ?」

「妹ちゃんは生命力がうまく作られていないんだよ」

「え?」

「だからぶっ倒れた、今からフーリアとウィンディアに治してもらう」

「?」

「なるほどのう」

「どういうことです?」


 よく状況が分からないのですが。


「本来生命力は常に作られ続け、余剰分が原魔力に変換されるのは知っておるな? あの少女の生命力はきちんと作られておらんのじゃろう、それで体を動かす原動力無くなったから少女は倒れた。だから主様は大精霊の力を借りてそれを治すことにしたということじゃろう?」

「そうだ、その辺りはかまどで考えれば良い。彼女の場合は薪が少ないのか空気が足りないのかは分からないが、かなり火が弱く何時消えてもおかしくは無いのさ。だから火のの力で薪を燃やし、風のの力で薪が燃えやすくする、そういうことさ。さて、来ちまったんだからお前達も働いていけ」


「おう、やってやるぞ」

「よっしゃ、やろうか」

「そうね、やりましょう」

「うむ、最善を尽くそう」

「ああ、無論だ」

「ええ、そうしましょう」


 彼らが妹さんの周りを囲む、そして彼らが彼女に手をむけそれぞれの色の力を注いでいく。10秒ほどでしたか、彼女は体を起こし自分の足で立ち上がりました。


「ロール?」

「お兄ちゃん? 急に体が軽くなって…」

「ロール!」

「うわ! いきなり抱きつかないでよ」

「良かった、お前が無事に戻って…」

「ロールちゃん!」

「ロールさん!」

「スレイさん、カーラさん…」

「大丈夫よね?」

「体に何か違和感などは?」

「ううん、なにも。むしろ前よりも調子が良いくらい」

「そう、良かった」

「ええ、本当に」

「って、二人まで抱きつかないでよー!」


「…良かったですね」

「ああ、お前達もよくやってくれた」

「なに、盟友の頼みを断るものかよ」

「ええ、それでは私達は戻らせてもらいます。また会いましょう」

「ああ、またな」


 唐突に彼らが消える、この目で精霊神の奇跡を見ることが出来るとは。


「本当に、貴方は出鱈目ですね」

「うん? 今更かよ?」

「…はは、そうでしたね」


 この人なら何をやってもおかしくないですね、失念していましたよ。


「ユウ、ありがとう。お前のおかげでロールが元気になった」

「ユウさん、ありがとうございました」

「いいさ、友人のためだ」

「俺はお前にとんでもない借りが出来ちまったな」

「かまうなよ。もし気になるのなら強くなれ、そしてお前の力を俺に示してみろ。それが俺を楽しませる方法の一つだ」

「ユウ…。ああ、俺は強くなる! お前をぶっ飛ばせるぐらいまで強くなってやる!!」

「くっかか、そうしろ。そして、それだけでなく幸せになれ、友人の幸せもまた俺の楽しみだ」

「ああ、そうするさ」


「さ、て。諸君、再びガラッハに乗れ。帰るぞ」


 そうしましょか、私の仕事もしないといけませんから。




 そうして、行きと違って帰りは皆明るい雰囲気で過ごせました。そんなこんなでシュタットのギルドに戻り、ギルドマスターに報告などを済ませそのあとは仕事に引継ぎ準備などを行いどうにか今日中に全てを終わらせることが出来ました。そしてユウさん達と話した結果、明日の朝ここを出ることとなりました。



 そして、朝。



「さーて、行くか」

「足はどうします?」

「こいつを使う」

「うわ!? 何ですかこれ?」

「金属の固まりかの?」

「グリエル帝国製の魔道四輪車という奴だ、こいつに乗っていくぞ」

「すごい物もあるのですね」

「それで目的地は何処にするのじゃ?」

「ああ、セントラルトルキアを経由して東の大都市ノックスに向かう、異論は無いな?」

「無論」

「当然です」

「よし、行くか」

「そういえばラインさん達は?」

「すでに昨日別れは済ませたさ」

「ならかまわないですね」

「それでは出発じゃ」

「おう、ちゃんと掴まっていろよ」

「…うお!? 結構速いですね!」

「うむ、これは気持ち良いのう」

「ああ、そうだな」


 私は彼らと共に進む、この先に何があるかは分かりませんが必ず乗り越えて見せます。…____、俺のことを見守っていてくれよ。当分俺はそっちには行かないけど、私は全力で生きていきます



間に合った! 精査は明日!!


追記

本文自体は何とか間に合いましたね、かなり突貫作業で仕上げたので二章後半は色々と無理のある話になったかもしれません。とはいえ、私が書きたかった事は大体書けたと思いますがね。むしろ書かなくていい部分を書き過ぎた気がする、一章と違って二章は投稿が始まってから書き出した章だからか、キャラが勝手に動きまくったのですよね。視点主をポンポン変えたのもその一因だろうな。二章のコンセプトとして、主役を他者の目から見たらどう映るか、を採用していたのでその分それぞれのキャラの物語が出来すぎたのですよね。元々、一章は三人称視点で世界の外から、二章は登場人物目線で、三章は主人公視点から物語を、と考えていたのですが、存外大変ですね。結局は三人称視点の方が書き易いのかな? いや、視点主の元々持っている情報量しだいか。視聴者に与えていい情報がおそらく適切な主人公視点の方が準レギュラー視点とかよりは書き易いんじゃなかろうか。まあ、以降の文を見といてください。




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