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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第二章:ユウの契約
42/112

盟約、契約

副題は名無しはかませ

「あ、終わりました? 随分と派手にやっていましたが」

「ブル?」


 ユウの連れの男とペガサスが近づいてきた、そういえば居ったのう。


「おう、終わったぞ。それと同行人が増えるぞ」

「はい?」

「ソフィア・トリニティ・ゲオルギウスじゃ、よろしく頼むぞ」

「あ、はい。ザイン・シュッテンベルグと申します…、え?」

「ヒヒン」

「そいつは俺の召喚獣のニッヘレンだ」

「うむ、よろしく頼むぞニッヘレン」

「ヒン」

「ちょっと待ってください? トリニティということはトリニティ公国に縁があるのですか?」

「いや、あの国を治める三家の一つであるゲオルギウス家はエンシェントドラゴンの一族だぞ? あそこ以外にエンシェントドラゴンがいることは普通無い以上今更すぎないか?」

「そのようなこと初めて知りましたよ。つまりソフィアさんは一国を治める貴族の令嬢という事でしょう? そのような人物がいてよく冷静でいれますね?」

「俺はSSだぞ? 貴族の人間に会う事なんざ珍しくもなんとも無い」

「大体それを言えば妾に求婚された時点でもっと焦るだろうよ」

「は? ………もう考えることは諦めます、どうにも私にはついていけない話なようです」

「時には諦めがよいのも重要だからな」

「…はあ」


 くくく、こういうのもなかなか面白いのう。


「それはそれとして、結局件のドラゴンについてはどうすることにしたのですか?」

『あ』


 忘れとったわ、それが発端じゃったのにのう。


「どうする? 正直妾は疲れた」

「なら俺がやるか」

「ドラゴンが疲れたというのにそれに付き合ったあなたはなんとも無いのですか? 大分異次元の戦いを繰り広げていましたが」

「いや? 正直結構魔力を使ったからな」

「万全の状態で挑んだ方が良くないですか?」

「問題ない、正直使う価値はあまり無いが奥の手を使ってさっさと決める」

「奥の手?」


 なんじゃ?


「妾には手加減しておったのか?」

「三黒と違ってあれはそうポンポン切る札じゃないんだよ、勘弁してくれ。大体あれを使ったら確実にお前は死んでいたぞ?」

「む? それほどなのか?」

「手加減とか出来たのですね、ユウさん」

「ぶちまけるぞ?」

「ごめんなさい」

「あのな、エンシェントドラゴンのお嬢さんを殺したとかトリニティ公国に知られてみろ? マジもんの国際問題になるわ」

「あ」

「なるほどのう」


 冷静に考えれば妾の生死は存外大事になりかねんか、面倒じゃのう。


「納得できたならいい、それじゃ行くかね。ソフィア、案内を頼めるか?」

「うむ」


 それじゃ愚かな同族に裁きを下しに行こうかの、もっとも妾がやるわけではないが。


「そういえば疲れているのに人化したままなのですね?」

「む? ああ、そういうことか。我らのような上位のドラゴンはどちらかというとこちらの姿の方が素じゃからな」

「え? ドラゴンの姿の方が素だと思っていました」

「魔法等で人化する下位のドラゴンと違って、自分の意思のみで人化する上位のドラゴンはむしろドラゴンの姿に変身しているといった方が近いそうだな」

「そうだったんですか」

「うむ、じゃから基本的には皆人の姿のままじゃ。ドラゴンの姿になるのは長距離移動じか戦闘時くらいかの、戦闘もこの姿のままでも強いからのう」

「そうじゃないと国なんて作れないさ、ドラゴンの姿のままじゃ土地がどれだけいるか」

「ああ、そうか。そうじゃないと国家経営は難しいですか」

「うむ、じゃからユウも心配せずとも良いぞ」

「何が?」

「無論夫婦の」

「ああ、そういうことね。はいはい」

「むう、随分と軽いのう」

「むしろこのような場で真面目に話すことでも無いだろう」

「ふむ」


 一理あるのう、ここは納得しておこうかの。


「あの、脱線させた私が言うのもなんですが、そろそろ行きませんか?」

「だな」

「そうじゃの、こっちじゃ」


 さっさとすませるかの。




「おそらくこの辺りにいるはずじゃ」


 先ほどの場所から山の反対側、昨晩に奴がいることを確認した場所に案内する。それなりの大きさの広場になっておるの。


「今は、居ない様だな」

「うむ、まだ帰っておらんようじゃな」


 さっさと戻って来んかのう。


「…お二方」

「うん?」

「なんじゃ?」

「お二人の戦闘を察して帰ってこないという可能性はありませんか?」

「…その可能性があったか」


 あー、そうか、…いや。


「たぶん大丈夫じゃと思うぞ、どうにもあやつはその辺りの危機感は無いように見えたのう」


 実際、妾が昨日偵察に来たときも特に周りを警戒している様子ではなかったからの。


「ふむ、…考えてみれば自分が討伐されることも考えないでいくつもの村や町を襲うようなドラゴンにまともな危機感があるかね?」

「…なるほど、まあ来てくれたらいいですね」

「だな、二度手間は勘弁だ」




 待つこと1時間ほど、空の向こうから覚えのある臭いがしてきた。


「来たか」

「うん? …あの遠くの奴か?」

「じゃろうな」

「どれです?」

「あれじゃ」

「…ああ、あれですか。良くあれが見えますね」

「目は悪くないからな」

「妾は鼻が良いからの。」

「はあ」

「とりあえずどうする? 一度隠れるかの?」

「面倒くさい、ここで仁王立ち一択だ」

「え? …じゃあ私は隠れていますね」

「ヒヒン」

「じゃあ、妾はここで高みの見物と行こうかの」



 さらに十分ほど、ようやく奴がこの場に降り立つ。我らが居るのに何の警戒もせずに来るとはやはり頭が弱いようじゃな。


「グレイドラゴンか、これは楽だな」


 グレイドラゴンはドラゴンの中では最下級に位置するドラゴンじゃからな。人化はおろか大した魔法も使えん。ブレスと自身の肉体のみが頼りのドラゴンではユウに蹂躙されるだけじゃな。


「貴様らは何者だ? この俺に何のようだ?」

「冒険者だ。お前が人に害をなすやつなら滅ぼす、違うなら見逃す。さあどっちだ?」

「何? 俺を滅ぼす? 人間如きが舐めた口を利くものだ。いいだろう、貴様らを滅ぼしてやる!」


 随分とかませっぽいのう、分かってはいたがこれはやらずとも勝敗など決まったな。それで、と。


「ユウよ、お主の切り札とは何なのじゃ?」

「時間が少し要るからな、まずは準備だ。【地の精霊よ、目の前の木偶の坊の動きを封じてくれな】」

「むお!? 小癪な!」


 奴の体を土の縄が縛る、あれでまず動きを封じるということか。


「さて、いこうか!」


 ユウがニヤリと不敵な笑みを浮かべる、よく似合っておるのう。そして右手を、甲を奴に向けて掲げる。む? 甲が光って居るのか? しかし今更契約獣何ぞでけりをつけるか? そもそも移動中に見せてもらったがユウの契約陣は左手じゃったはず、一体何を?


「【盟約に基づき我は求む。彼の者らと交わせし、盟約の証たる汝を、今ここに呼び出し、我が意志を持って振るわん。来たれ! 盟約武装、アクス・オブ・シックスエレメンツ!】」


 盟約武装? 詠唱の終わりと共にユウの前に光が集う、この光は精霊によるものか? しかし光の精霊の気配だけではない、他の精霊の気配も等しく感じるのう。そして光がおさまったとき、ユウの目の前に戦斧が浮かんでおった。大きさは黒斧と同じく身の丈を超えるほどので、色は無く透明であり、その周りを白、赤、青、緑、橙、黒の光が回っている。いや、そんなことよりも。


「精霊が、集まってきている?」


 あの斧の登場で、妾が認識できる範囲内の全ての精霊がユウの元に集まってきている。これは…引き寄せられているのではなく、自らの意思でユウの元に集まってきておるのか? …もしや、先ほどの盟約とは?!


「ユウ、お主は…」

「さあ行こうか、相棒! 4年ぶりのタッグだ、祝杯を挙げるにはつまらねえ相手だが、今は新たな仲間に俺たちの力を見せつけようぜ!」


 ユウが斧を掴みブンと大きく振り回す、それだけで妾には世界が震えたようにも感じた。あれはやはり…。


「ええい、この程度で!」


 奴がその身を捕らえていた拘束を破壊する、そのまま羽ばたきだす。ユウと距離をとるつもりか。


「逃がすかよ!」


 周りを回っていた緑の玉が斧に飛び込み、斧の色を緑に染める。ユウが色の変わったそれを振るうと刃から風の刃が放たれて奴の翼を切り落としおった、ああも容易くでドラゴンの翼を切り落とすとはな。それもあれは精霊魔法、妾との戦いでユウは無詠唱で精霊魔法は行わなかった、つまりあの斧の力でユウは無詠唱精霊魔法を使っているというのか?


「ぐおお!? よくも我が翼をお!!」

「だったらもう片方も落としてやるよ!」


 斧から緑の玉が出て行き、次は橙の球が飛び込む。橙に染まった斧を振るうと無数の土の槍が生まれ、奴の翼にいくつもの穴を空ける。もはやグレイドラゴン風情では空をとぶことなど出来まい。


「き、貴様ああ!!」

「やっぱ物足りねえがこれで仕舞いだ。その首、貰い受ける」


 斧が赤く染まる、ユウはそれを肩に担いで奴に向かって跳ぶ。奴がブレスを吐こうとするよりも速く奴の首元に行き、炎を纏った斧でそれを切り落とす、一撃で決めおったか。そして斧が霞のように消え去る、あれはもはや妾達の常識とは別の次元に居る武器じゃな。


「随分と早かったですね、それにしてもあそこまで強いと最早嫉妬も生まれませんねえ」

「ザインか、お主はアレについてどう思う?」

「アレ? あの斧のことですか? さあ、私には皆目見当もつきません」

「そうか。ユウ!」

「さすがにこうでかいと面倒だな。うん? 何だ?」


 奴の死体をアイテムボックスに納めているユウの元に走る、もしかしたらユウがそうなのか? だとしたらこれは運命という奴じゃが…。


「ユウ、聞きたいことがあるのじゃ」

「こいつの事か? だったら」

「16年前」

「!」

「おぬしがそれを手に入れた、いや、お主が彼の者らと盟約とやらを結んだのは16年前ではないのか?」

「…何故知っている? 何故ピンポイントで16年前と言い切れた?」


 やはり、そうなのじゃな。


「16年前のあの日、妾は公国の精霊の間にて精霊と語り合っていた」

「精霊の間、精霊が実体化し人の言葉で以って語り合える場か。トリニティ公国に精霊の集いし場所があったとはな」

「そこで妾は感じたのだ、精霊の喜びの感情と精霊と契約を結びし者の誕生を。それもただの精霊とではなく、あれは間違いなく」

「あの場には結界が張ってあった。盟友達を除けばあれを実感したのは俺とアイツだけだと思っていたが、まさかそのタイミングで精霊と語り合っていた者が居たとはな。本当に、世界というものは面白い動きをするものだ」


 そうか、そうか。


「くくく、はっはっは! 妾が婿に迎えたいと思ったお主が、妾が求めていた人でもあったとは、ははは、運命というものはあるものじゃのう。これで悩むことは無くなった!」

「どういう意味だ?」

「なに、簡単なことじゃ。ユウよ、妾の主となってくれんか?」

「…お前と契約を結べと? 仮にもエンシェントドラゴンの姫が人の所有物になる気か?」

「ほう? お主の手に描かれた契約、それもまた妾と同じような存在ではないのか?」

「…気付くか、何故だ?」

「なんとなくじゃ、お主こそが妾の求めていた人だと悟った時にそんな気がしたのじゃよ」

「……やれやれ、どうにもお前達はどいつもこいつもそんなことを言いやがる。まったく、どんなご都合主義な物語だ。…最後に聞こう、どうしてお前は俺のものとなりたがる?」


 どうして、か。正直妾にも正確にはわからん、じゃがのう。


「あの時妾は感じたのじゃ、あの圧倒的な力を。そしてその力を持つ者にの元に在りたいと思った、おそらくはその場に居た精霊たちの感情の影響を受けたからであろうな。だとしても関係ない、それがあの時からの、そして今の感情である以上、妾は自分の心に従うのみじゃ。この答えでは不満かの?」

「…やれやれだな、まったく。…______だ」

「え?」

「俺の本名だ、覚えておけ」


 それがお主の名か。


「…妾の心に刻もうぞ」

「ではやるぞ、【我、この者と契約を結ばん。この契約は絶対なり、この契約は如何なる者にも侵されぬものなり】」


 ユウの左手の契約陣が光る、契約が始まったか。ならば妾も返そう。


「【我、この者と契約を結ばん。この契約は絶対なり、この契約は如何なる者にも侵されぬものなり】」


 召喚陣が妾達の足元に現れ妾達を囲み、そして回り出す。


「【我が名は______、この名の下にこの者を従えん】」

「【我が名はソフィア・トリニティ・ゲオルギウス、この名の下にこの者を主と認めん】

「【この契約はこの身が潰えるまで終わらぬものなり】」

「【この契約はこの魂が潰えるまで終わらぬものなり】」


 ユウがその目を見開く、ふふん、これが妾の覚悟じゃ。


「【契約は成った、これより我は汝を従え、共に進まん】」

「【契約は成った、これより我は汝に仕え、共に進まん】」


 召喚陣が収束し消える、これで妾達の間に契約は成された。これより妾はユウを主として生きていくのじゃな、うむ。…ふむ。


「これで妾達は一蓮托生じゃな、主様」

「ああ、…主様?」

「契約を結んだ以上そういうことじゃろ?」


 気安く名前を呼び捨てるわけにもいかんと思うが?


「いや、…まあいいか。それよりもどうして勝手に契約の文言を変えた?」

「こちらの方が置いて行かれないような気がしたからじゃ」


 実際は少し違うがの、たとえ万が一妾が先に死んでもその力になれるようにしたかったからじゃがのう。


「ふん…、それにしても本当に運命と言う奴かな」

「何がじゃ?」

「これだ」


 主様が見せる左手の契約陣、先ほどまでは空白であったその左側に今はドラゴンの羽を模した絵が描かれていた。これは…。


「つまりお前が俺の残りの空白を埋める者であったということだ」

「なるほどのう、互いにとっての運命であったということか」


 嬉しいのう、主様の運命にも妾が居たというのは。


「えっと、私にはよくわからないのですが、契約って魔物とするものでは無いのですか?」


 あ、ザインも居ったんじゃった。何かすっかり忘れておった。


「アンタ、俺の名前を聞いたか?」

「ユウさんの? いいえ、契約をしていることは分かりましたが、言っている内容までは聞こえなかったもので」

「そうか、ならいい」

「? それで結局どうなのですか?」

「ああ、別にできないわけじゃない。ただ前に言った器の大きさがかなりでかくないと無理だな。それと多少互いの存在を感じることは出来るが召喚なんかは無理だな、正確には一般的なそれよりも出鱈目な量の魔力が必要となるからだけどな」

「…それならやる意味は無いのでは?」

「悪い言い方をすれば奴隷契約と同じく相手が自分のものだと示しているに過ぎんよ、あとは契約によっては恩恵が生まれることもあるがその辺りを説明するのは面倒だ」

「なんにせよ妾達が納得しておるのじゃから問題なかろう?」

「まあそうかもしれませんね。それでどうします? もう山を降りますか?」

「ああ、とっとと降りて休むか。さすがに疲れた」

「妾もじゃな、早く宿か何かで一眠りしたいのう」

「そうしましょうか。それと提案なのですが」

「宿は変えるぞ」

「ですよね、私もそのつもりでした」


 何ぞ宿に不満でもあったのかの? 別にその宿に泊まるわけでは無いのだからかまわんが。



これは明日は複数投稿することになりそうな感じ、そもそも昨日の奴も二回に分けて投稿すれば良かった。今回出てきた武器について、漢字の名前を当てて振り仮名を振る形式にしようかとも思ったのですが、振り仮名を振るのが面倒になったので没に。これからも振り仮名を振ることは基本無いと思うので説明しておくと、三黒はさんこくと読みます。ついでに主様はあるじさまと言っています。


前回書き忘れたので書いておくとユウが付けていた小盾について、左手のはワイヤーアンカーでしたが右手のはパイルバンカーだったりします。この辺は完全に私の趣味ですね、某ロボット大戦とか大好きなんです。それと戦い方に関してはケイは効率的で手数優先のリアル系、ユウは非効率的で大技ブッパのスーパー系のイメージで書いています。ユウが一々技名を言ったりするのは完全に趣味ですね、普通は黙ってやった方が相手に情報が行きませんから、ただの伊達や酔狂ですね。

それとして主人公の戦い方はどうなるかな? いまだに書いていないので確定して無いんですよね、たぶん両者の中間、少々ケイ寄りになるとは思いますが。その辺りは三章で明らかになるでしょう、まだ私にも分からないんですよね、これが。



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