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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第一章:ケイの出会い
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飛ばされた男

副題は一人目のチートは尊大。


この章は三人称視点で進めます。ケイが主役の回は三人称固定です。次の章は二人称視点で行くつもり。



二人称とどっちが書きやすいかな。

 とある森の中、唐突に光が集まっていく、それが収まった時一人の男が立っていた。

 年は二十代中ほどといったところか。背は高く、銀髪に銀の瞳、腰まで届く長い髪を肩の辺りでくくり、顔立ちは整っているがその眼光は鋭く、けして甘い雰囲気など見せていない。手甲以外に防具は見えず、その腰には一振りの刀が差してある。


「ちっ、やはりはぐれたか。ここは…、北のほうか? 現在位置を把握しなくてはな」


 どこかから取り出した外套を着た後男はそう呟き歩き出す。周りの風景から道のある方向にあたりをつけたようだ。その足取りには迷いは無いが、もし外れていてもそれはそれで問題は無いと考えたのだろう。歩けばどこかに着く、ただそれだけだ。

 そんな折、状況が動いた。


「な…で…とに。お…が悪…だぞ。…だろ。い…ら、…に…付け…ぜ」

「子供の声か? 何か出たと。しかし、押し付けるとはな、気に入らん」


 そう呟きつつ、彼は駆け出す。どうやら彼の耳はより正確に声を拾ったようだ。その走りは速く、森の中とは思えないほどだ。

 一分も経たずに彼の目には4ムルは超えようかといる巨大な灰色のクマらしき生物とそれに対峙する外套を着込みフードをかぶった人物、へっぴり腰で逃げようとしている三人の少年の姿が見えた。


「あれか。ならば」


 彼は腰の刀に手を掛け、自身に横っ面を見せているクマに向かって走る。


「一刀一閃、一文字斬り」


 その言葉とともに飛び、クマの前を過ぎる。キンという納刀の音とドンとクマの頭が落ちる音が響く。いきなりのことに子供達もフードの人物も事態を飲み込めていないようだ。


「無事か? ふむ、これほどの大きさのクマは初めて見る。…いや、おかしい。こんなに成長するのか? もしや魔物化しているのか? …まあいい、お前たちどうしてこんな状況になったのだ?」

「え、いや、その」

「えっと」

「…」


 少年達は混乱し、一人にいたっては放心している。埒が明かないと思ったのか彼は話の矛先をフードの人物に向ける。


 「やれやれ、女性を囮に使おうとするぐらいだ、ずいぶんと精神が弱い。すまない、何故こいつに襲われていたのだ?」

「…よく私が女だとわかりましたね」

「そういったことはなんとなくわかってしまうのでね」


 彼女がフードを下ろし、顔を見せる。少女と女性の間といったところか。緑髪に緑の瞳、一般的に美人に分類されるだろう。


「む…」

「私が知っているのは森にいたら彼らが何故かあいつに襲われていて、それでつい前に出てしまったということだけです」

「戦う術をもっているのか?」

「…あまり好きではありませんがね」

「そうか。さて、この近くに村か街があるのか?案内を願いたい。道中の護衛は引き受けよう」

「この近くに私と彼らが住んでいる村があります。助けていただいた恩がありますし案内はかまいません。…彼らも頼めますか?」

「やれやれ、しかたがあるまい。さて、こいつはしまっておくとしよう」


 そう言いつつ彼がクマに手を触れるとそれが消え去る。


「え、何処に?」

「アイテムボックスだ、初めて見るのか?」

「見たことはありますけど、あんなに大きいものも?」

「ピンキリだがこれは最高クラスのものだ、少なくとも一軒家ぐらいまでなら入る。低いものなら手に収まる程度しか入らん」

「アイテムボックスに階級なんてあったんですね。彼らは…まだ放心してますね、仕舞います?」


 おどけたように彼女は言う。


「生き物は入らん、クラスが上がろうともな。おい貴様たち、ついてこい。また何かに襲われるやも知れんぞ」


 その言葉にようやく少年達は正気に戻ったのか彼と女性の後をついていく。


「自己紹介がまだでしたね、私はノエル・ナイガンといいます」

「私はケイ、冒険者だ。やはりシェル・ナイガンの血縁か」

「やはり?」

「顔を見ればわかる。彼も同じ村に?」

「ええ、一緒に住んでいます。父の知り合いみたいですね」

「少々な、…しかし父とはな」


 そんな会話をしながら二人と三人は村にたどり着く。村としてさして規模は大きくはないようだ。


「着いたか、そういえば村の名前は?」

「キエル村です、まずは村長の所に行きますか?」

「うむ、こいつらの処遇やその他話をしたいことがある」


 彼らは村の中心にある他と比べると少し大きな家に着いた。そのままノエルがドアをノックして村長を呼ぶ。


「ここが村長の家です。村長、ノエルです。いらっしゃいますか?」

しばしの後、一人の老人が顔を出す。

「おお、ノエルどうしたんじゃ? …おや、こちらは?」

「冒険者のケイというものだ。いくつか話しておきたいことと聞きたいことがあるのだが」

「む? まあよいか、入ってくだされ。しかしその子らは?スールのところの坊主たちのようじゃが」

「彼らも当事者だ、かまうまい?」

「よくわからんが、まあよいじゃろ」


 そのまま彼らは村長の家に招かれ、ことの次第を話すこととなった。


刀:とある国が最近生み出された武器。鋭い切れ味を誇るが剣と比べ扱いが難しい。まだ流通している数は少なく、そのほとんどを開発した国の人間が所有している。ちなみにケイの持つそれは彼自身が打ったもので現状では最高級の一振り。


長さの単位:1mm = 1ミムル、1cm = シムル、1m = 1ムル、1km = 1クムル。

基本的にはムルとシムルぐらいしか使わないと思う。実はミムルを考えるの忘れてた。ちなみにお金の単位はイル。たぶん独自の単位はこれぐらいかな。

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