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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第二章:ユウの契約
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説得と罰則

副題は模倣


「ユウ!」


 ラインさんですか、彼らの殺気を受けて動けるとは大物ですね。予想以上に将来有望といったところですか…、そのような状況ではなかったですね。


「ラインか、何だ?」

「もうやめろよ! さすがにギルドを敵に回すのはまずいって!」

「知ったことか」

「おい!」

「俺にも譲れないものはある、俺にとって最高の親友をそいつは愚弄したんだ、俺はそれを許せない」

「最高のって、確か…ケイさん…だったか?」

「そうだ、本当の“疾風両断”にして俺の親友、それをあの程度の雑魚が騙るなど許せるものではない!!」


 そういうことですか、だからと言って。


「しかしそれでも人を殺す理由にはならないでしょう」

「なる、俺にとってはな。だからこそ」


 彼が強く拳を握る、言葉で止めるのは無理ですか。かといって…。


「待ってくれよ、ユウ」

「だから何度も」

「ここでお前が暴れたら俺が困る」

「…何?」


 む? 彼は何を? いまさら言葉で止められると?


「お前がここで暴れたら、このギルドはたぶん大きな被害を受ける。そうなったらスレイやカーラさんが困る、もしかしたらこの街を出ることになるかもしれない、そうなったら俺が困る」

「…彼女たちのことを理解したのか?」

「一応はな、あんまりまだ実感ねえけど。ともかく、お前は俺がお前の大事なものを傷つけない限り俺を助けてくれるって言ったよな? だったら今お前が暴れたら俺が困るから暴れないでくれ」

「……くっかか」

「ユウ?」

「良いだろう、正直気は治まらないがここはお前に免じて引いてやる」


 …止めてくれましたか。やれやれ、とりあえずどうにかなりましたか。


「ユウ!」

「ダチ公を愚弄されたのは気に入らないが、だからと言ってお前を困らせるのもな。ただし、おい、あの時の」

「ドッペン・ゴッグだ、あの時も名乗ったぞ」

「知るか、それよりあの痴れ者達のついてはどうするつもりだ?」

「おい、…ったく。ギルドランクの詐称、それに高位クラス、特にSSクラスの一人の名を騙るなどと許されるものじゃねえ。それ相応の裁きを下す、少なくとも犯罪奴隷には落とす」

「…仕方ねえ、それで納得してやる」

「言っとくがお前にもそれなりの処分は下すからな、いくらSSでもギルドの規則には従って貰うぞ」

「ほう、どうするつもりだ?」

「安心しな、強制依頼を受けてもらうだけだ。無論タダでな」

「それぐらいなら問題ねえ、それを受け入れてやるよ」

「それなりに暴れておいてよく言えるな」

「他の人間には危害を加えてねえよ」

「だからこの程度にしてんだよ、とりあえずついて来い」

「ふん」

「ザインはここを治めろ、いいな?」

「分かりました」


 とりあえずこの場の危機は去りましたか、やれやれ。


「ザイン」

「ソルさん、大丈夫ですか?」

「ああ、しっかしあの野郎何かあるとは思ったけどまさかSSとはな」

「ええ、ですが納得も出来ましたよ」

「まったくだな、それでどうする?」

「とりあえずそこの怪我人どもを病院に運びましょう、それでソルさんたちには見張りをお願いできますか?」

「ああ、わかった。おーい、お前らこいつら運ぶぞー」

「おう」

「ああ」


 さて、これは事後処理のことを考えると頭が痛くなりますね。…言っても始まりませんか、やれやれ。





 とりあえずは応接室にでも案内しとくか。


「こっちだ」

「何時ぞやの応接室か」

「あ? ああ、何かここに来たことがあったんだってな」

「聞いていたのか? その割には下に俺の事が知られていなかったみたいだが」

「直接会ったわけじゃないからな、確証がなかった。大体お前が何でここにいるんだ? そもそも他の二人はどうした?」


 “双剣奏々”や “疾風両断”と一緒に行動しているんじゃないのか? 何でこいつが一人でこんなところに来てるんだ。


「ティーラウスの未踏破遺跡を踏破した結果だよ」

「は? ティーラウスってありゃ確か北東のほうの大都市だろ、それが何でこのシュタットに来る事になるんだ?」

「遺跡の最深部に空間転移装置があったんだ、そいつが勝手に起動してバラバラに飛ばされた」

「空間転移装置、しかも目標非固定型か、そいつは中々だな。儲かっただろ?」

そんなものがあったとはな、それを報告したんなら国からかなりの報酬が出ただろうな。

「いや、最深部に入った時点で飛ばされたからな、まだギルドには報告できて無いんだ」

「そりゃ災難だったな、今頃他の奴に取られているかも知れないぞ?」

「大丈夫だろ、発見されてから数十年未踏破の遺跡だ。仮にもSSが3人がかりで挑んでそれなりに手間がかかったからな、あのあたりにいる奴じゃ踏破は無理だろうな」

「なるほどな、確かにそのレベルの遺跡なら早々踏破されることは無いだろう」


 …じゃねえ、何で普通に歓談してんだ。


「本題に移るぞ、お前の処分についてだ」

「ああ、どんな依頼を俺は受けることになるんだ?」

「Zカテゴリの依頼だ」


 Z、AからFまでのカテゴリいずれにも当てはまらない特別依頼、自然災害級の事件に関した依頼でその多くがハザード級の調査または討伐となるので基本的にはSまたはSSクラスでなければ対処できない厄介な依頼だ。しかも今回はその中でも特別厄介だ。


「Z? こんなところにハザード級がいるのか?」

「ああ、ここから徒歩で10日ほどの所にあるミッヘという町でドラゴンらしき生物が目撃されたそうだ」


 ドラゴン、種類によるがハザード級において単純な戦闘能力で言えばトップクラス、制圧能力は他の追随を許さず、少数精鋭での討伐でなければその被害は甚大なものとなる実に対処に困る魔物だ。


「ドラゴンねえ、色は?」

「知らん、そこまでは聞いていない」

「おいおい、そこが大事なんだろうが」


 一口にドラゴンと言ってもその種類によって個体の色と強さに幅が出るからな、その辺りは把握しておきたかったんだが…。


「どうにも信憑性がな、最初は黒だって言ってたそうなんだが、よく聞いてみれば見たのは地面に映った影だと」

「…おい」

「言いたいことは分かる、それだと本当に発見されたのがドラゴンなのかすら分からねえってことだろ? だけども放置するわけにもいかねえ、しかも本当なら偵察だけでも生半可な奴は送れねえ、だからどうしたもんかと思ってたんだ」

「それで俺かよ、まったく」

「罰則にはちょうどいいだろ、それでお前に依頼したいのはそのドラゴンが本当にいるのかだ」

「別に倒してもいいんだろ?」


 仮にもハザード級を一人で倒すとかよく言えるな、こいつ。ランクSの俺でも一人では無理だぞ。


「倒せるのならな、もっともミッヘに被害は出すなよ」

「はいはい、頑張りますよっと」


 コイツ…、まあいい。


「それとこれは一応罰則だからな、こちらから観察者を出すから連れて行け」

「いいけどよ、最低でもランクAじゃないと連れていけねえぞ。ハザード級が相手かもしれないのに弱いの護る余裕は無いぜ」

「分かってる、だからお前にはザインを付ける」

「ザイン? 誰だ?」


 こいつは本当に名前を覚えてないな、一度名乗ってるはずなんだが。


「うちのサブマスターだ、さっきも居ただろうが」

「ああ、サブマスターさんか。ランクは?」

「A、”濃霧翻弄”っていう二つ名持ちだ」

「ほー、まだ若いだろうにすごいねえ」

「お前とさして変わらんと思うがな、それよりアイツなら構わんな?」

「…まあ良いか、Aならハザード級に挑む資格はあるだろう」

「あいつを戦わせようと思うなよ、あくまでアイツには傍観に徹しろと言っておく」

「はいはい、話はこれで終わりか?」

「ああ、…いや待て」


 もう一つ聞いておくことがあった。


「?」

「俺の名前を覚えているか?」


 一度は戦場を共にした仲なんだがこいつは俺の事なんか気に止めてねえだろな、とはいえ少しは気になるところだ。


「いや、全然」

「即答か」


 少しは脳内検索しろよ、コイツ。清々しいほどに俺に興味を持ってなかったな。


「ドッペン・ゴッグだ、さっきも名乗っただろうが」

「興味ないんでな、人の名前には」

「だったら二つ名の方で覚えろ、“夢現幻影”だ」

「随分と見た目と異なる二つ名だな、そんな前衛職みたいな体格しておいて」

「うるさい、あくまで俺は専門魔法使いじゃないんだ。それが何故か代名詞になっちまったがな」

「ふん、あんな小技が代名詞とはな」

「喧嘩売ってんのか?」

「買えるのか?」


 コイツ…、腹の立つ野郎だな。仮にもギルドマスターの俺が、さっきのことがあってここで戦闘できるか。そもそも俺じゃコイツには敵わねえ、癪に障るが。


「…まあいい、とりあえず今日はここまでだ。明日の朝ここにもう一度来い、お前に正式に依頼を出す」

「わかったよ、それじゃあな。それと」

「何だ?」

「食らってみろ」

「?!」


 森!? 俺は応接室に居た筈、いや、これはまさか。


「俺の夢幻魔法!? 何でお前が!?」

「すでにそいつは4年前に何度か見た、それに今日食らったからな。とりあえず模倣には十分だ」

「それで俺相手に成功させただと?! お前…」


 多少違和感を感じるとはいえ今俺は森に居るようにしか思えない、これは確かに俺の夢幻魔法による幻、対象者の頭の中に生まれた虚構の現実、それを見ただけでか!?


「お前が使う魔法だ、破るのは簡単だろ? 気は済んだから俺は帰るよ」

「あの野郎…」


 最後に何てことしやがる、この俺に向かって俺のオリジナルの魔法を使うとはな。…にしても、どうすっか。ヘタやると現実の体にも被害が出るんだよな、…正確には頭が被害が出たと錯覚するだけだがその分治療できない傷になるからな、自分の技で自分が被害を被っちゃ話にならねえ。


「これ脱出は結構面倒なんだがな、…………良し、抜けたな」


 ふう、しかしアイツは本当に化け物だな、あの時もさっさと抜け出してたけどよ、夢幻を不意打ちで食らってあの早さで抜け出せるとかどんな精神してんだか。今自分が見ている現実を幻影と看破してそれを否定する、言うのは簡単だがそれをやるのは難しいはずなんだがな。奴の精神強度はどうなってるんだ、まったく。



これで完全にストック切れ、出来る限り毎日更新にしたいんだけどもしかしたら更新できないときがあるかもしれません、ご注意ください




と予防線を張っておこう。あ、ちゃんとがんばりますよ。


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