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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第二章:ユウの契約
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依頼達成

副題はユウのお友達。


 ユウにカケウサギを含めた野生生物の居場所の探し方を教わりつつ先導される、なんとなしに歩いていた森の中にこんなに動物の痕跡があるなんてな。教えられてなんとなくは分かるようになってきた、次は俺の番だからしっかりと意識していかないとな。


「っと、居たぞ」

「あれか、行って来る」

「がんばーれ」

「気が抜けるから」


 今度は剣を抜いてそのままためらわずに駆け出す、相手もこちらの動きに気付いたようだけれどこっちが切り込むほうが速い! カケウサギの首元を狙って剣を振るう。手ごたえが少ない、浅いか!? とりあえず反転して相対する、どうやら今の一撃でかなり警戒されたようだ、こちらを見て逃げ出そうとしている。まずい、逃がすわけにはいかねえがどうすりゃ、そうか! 相手の鼻先を狙って直打魔法を放つ、それは相手が動き出したことで頭に直撃したようだ、倒れこんで動かなくなる。気絶したのか? そんなことより速く止めをささねえと。近寄って再度カケウサギの首に剣を振るう、今度は狙ったとおりの場所を斬ることができた、動いていなければさすがにな。


「オーライ、よくやった。次は血抜きだ」

「っと、そうだったな」


 ユウに促されて血抜きを行う、これぐらいならさっき見ていたからできる。


「さっきの戦闘だが剣をはずしたのが良くないところ、すぐに直打魔法を思い出して当てられたところが良いところだ」

「ああ、剣に関してはもう少し意識しないといけないな、それと直打魔法の使いどころはあれでいいのか?」

「あれでいい、今回はともかく直打魔法は止めを刺す要員ではなく相手の動きを止める魔法だと思って使え。今回は決定打になったけどな」

「動きを止めるってのはさっきみたいに相手が動き出したところで当てればいいのか?」

「だいたいはそれでいい、ほかにも相手の顔に叩き込んだりすると相手は怯むし、相手の足元に当てて穴を掘れば相手は体勢を崩す。対人戦だったら武器を狙って弾くとかも出来るぞ」

「色々出来るんだな」

「使い方しだいってことさ、それと余裕があるなら相手の頭を狙うのがいいぞ」

「頭?」

「頭が思いっきり揺れると脳も揺れる、それで相手が気絶することもあるから楽だぞ」

「へー、次は狙ってみるか」

「ま、一回くらいは最初っから狙ってもいいだろうな。あんまり頼りすぎるなよ?」

「わかってるって。こっちが魔力切れで気絶しかねないもんな」

「分かってるならそれでいいさ、さてと」


 ユウが血抜き中のカケウサギに目をやる、そろそろか?


「…よし、こんなもんでいいな。次は俺が指示を出すから解体してみろ」

「わかった」


 血抜きの終わったカケウサギをユウに言われるとおりに解体する。皮を剥がして、肉を関節を境にばらして、それと忘れずに尾を切り取って、っと。結構疲れるな、これ。


「これでいいのか?」

「そうだな、今の所はな。ま、そのうち慣れて速く丁寧に出来るようになるからそれまでがんばれ」

「ああ、そうするよ」


 穴を掘って内臓類を埋め、解体したカケウサギを袋に入れる。これで二匹目、あとは最後の三匹目か。


「よし、三匹目はお前の力で全てやれよ」

「わかった」


 ユウに教わったことを意識しながら周囲の地面を観察する。…こっちか? とりあえず自分の目を信じて歩き出す。…これがあるからこっちか。…あった、今度は…。……居た、カケウサギだ。


「ユウ」

「行け」

「ああ」


 今度は最初のようにゆっくりと近づく、足音を出来るだけ立てないようにゆっくりと。相手はまだこっちに気づいて無い、今のうちに頭を狙って直打魔法を、撃つ! 相手の体が頭から吹っ飛ぶ、やったか? …いや、気絶にはいたらなかったか、ふらつきながらも立ち上がってきた。さすがに一回目からじゃ当て所がわからないな。…相手もこちらに気付いたようだ、二匹目と違ってこっちに向かってくるつもりだな。だったら次はカウンターを狙ってみるか。相手が飛びかかってきたら横に避けて、何処を狙う? 相手の首を切るのはまだきついか、だったら相手の体の側面を切り裂くのがいいか? あんまり深く刃を立てるわけにはいかないから…、って来た!? ええい、ぶっつけだ!! 


「うおりゃ!!」


 剣がカケウサギの側面を切り裂く、剣が途中で止まることも無くいけたようだ。奴の様子は? 振り向くとカケウサギは自分の血の中に倒れこんで動いていなかった、うまいこと出来たようだな。

「ご苦労さん、とりあえずは先に解体作業をやってくれな。なるようになるさでいいからよ」

「そうだな、まずは血抜きか」


 さっきよりも出血が多いからそこまで時間はかからねえだろ、血抜きをしている間にナイフと袋を取り出してっと。……よし、抜けたな。次は解体か、一人でってのは何気に不安だが、言われたとおりに肩肘張らずにやってみるか。


 ……ふう、これでおしまいだ。


「どうだ?」

「…ふむ、十分だな。よし、今日の教習はこれまでだ。さくさく帰るぞ」

「わかった、…これで俺も討伐依頼を一人でこなせると思っていいのか?」

「少なくともFカテゴリの依頼についてはね、といっても依頼をこなしていけば多少難易度が上がってもどうにかなるさ。上位に行くとセンスも必要となってくるが、お前の筋は悪くないからな。ま、どうしてもだめだってなったら仲間を増やせばいいさ」

「仲間か、やっぱりソロだときついか?」


 当面の間は一人でやっていくつもりだったんだが。


「うーん、当人のレベル次第だな。なんでも一人でこなす奴もいれば、他人のサポートに徹する奴もいるし。別に討伐も採取もいくつもやれってことも無いしな、ソロで得意な依頼に限定して受ける奴もいるから」

「ユウは一人でこなす派か?」

「ん? いや、俺はどっちかというと戦闘専門だよ。頭脳労働だったりは仲間に任せることが多いさ」

「色々やってるように見えるけどな。それはそれとして仲間が居るのか?」

「もともと迷子だって言っただろ? ちょっとしたトラブルでな、バラバラにはぐれちゃったのさ」


 そういや迷子だって言ってた気がするな、初めて会った時。


「そうだったのか…、早く合流しなくていいのか?」

「合流地点は決めてあるしそこまでさほど遠くも無い、もともとゆっくり行く予定だったからここに少しの間滞在しても問題ないさ」

「そうか、こっちとしては助かるけどよ」


 あんまり俺のせいで引き止めちまってるってのは気分良くねえからな、気にして無いならいいけどよ。


「それに何となくここに居たほうがいい気がするのさ」

「気がする?」

「勘だがな、少なくともお前には会ったのは俺にとっても得だったさ」

「俺に会った事って…こっちにばっかり利があったように思えるんだけど」


 今のところユウが何か得をしたようには思えないんだけど。


「そうでも無いぞ、人脈というものは何処で生きてくるか分からんからな。ラインも依頼を受けていくと他人と関わることが増えてくるだろうから、友好を結ぶべきだと思える相手だったらそれ相応の対応をしたほうがいい。それにな」

「それに?」

「友人が増えるのは喜ばしいことだ」

「友人って、俺のことか?」

「ああ、俺はお前が気に入ったと言っただろう? つまりはそういうことだと思ってほしい、それともお前は俺と友人と認めるのは嫌か?」

「そんな事はねえけどよ…、何か気恥ずかしいじゃないか」


 面と向かって友人だって言うのも、こいつに友人だって認めてもらうことも。


「くっかか、友人だと思ってくれるならいいさ。俺にとっては有象無象に対して何かしようなんて思わねえけどよ、友人だったらそれなりに友誼をはかるさ。安心しろよライン、お前が困ったときは俺を頼ればいい、それが俺の大事なものに害をなさないのであれば俺はお前を助けてやるさ」

「…覚えておくよ」

「くっかか」


 あんまり人に借りを作るのは性に合わないけどよ、その厚意はありがたく受け取るさ。


「ふん、そういやお前の大事なものって何だ?」


 コイツが何かに執着しているのが何か想像し辛いんだけどな。


「まずは惚れた女、次に身内、そして友人ってとこだな」

「惚れた女とか居たのか、お前」

「そりゃね、そこそこ生きてるからね。恋人の一人や二人いるさ」

「なんか意外だな」


 この自分の考えのみで動いてそうな奴についてこれる人がいるなんて。


「どういう意味さ? これでも俺はもてるんだよ、…まあダチ公程じゃないけどよ」

「ダチ公?」

「ああ、俺にとっては無二の親友って奴でさ、コイツがかなりの色男でな…」


 森を抜けるまでの間、そのダチ公さんともう一人の親友さんの話を色々と聞くこととなった。ユウの友達ということもあってどっちも大概な人物のようだ、しかしユウの言動なんかを考えるとたぶんその二人のほうがストッパーな感じがするんだよなー。こいつが我が道を行って他の二人がそれを止めつつ、結局なんだかんだと乗りそうな気がする。まあ、完全に俺の想像だけどな。実際は逆だったりして。一体どんな人たちなんだろうな、いつか会ってみたい様な、精神衛生上会いたくないような、微妙な感じだ。



ちょっと予約投稿を試してみよう、上手く行くといいんだけど。


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