少年の家族
副題は妹登場
短いけどきりがいいところで止めとく。
「宿が空いていて助かったのじゃ」
「よかったな、あと何その語尾」
「なんかずっと普通にしゃべってたからとっさに…」
「本当にお前は芸人みたいな奴だな」
「前にも言われたな、あれはいつのことだったっけ?」
「知らねえよ…」
「知らせてねえよ」
「だから何だよ!」
「何だろうな!」
「はあ、もういい…」
マジでこいつ落ち着きがねえな、何なんだよ。
「ユウってさ、幾つなんだ?」
「26」
「見えねー、俺の10上とか」
見た目はともかく言動を考えたらもっと若いと思ってたわ。
「よー言われるわ。あ、そうだ少年君」
「何だよ」
「少年君の家何処?」
「俺んち?なんで?」
「あれの肉渡さないかんやん」
「そっか、それがあったな」
「今から行ってもかまわんだろ?」
「んー、いいかな。じゃ、案内するよ」
別に大丈夫だろ、たぶん。
「ただいまー」
あ、お兄ちゃんの声だ。
「お帰りー、今日は早かったね。…あれ、お客さん?」
「こんにちは、お邪魔するよ」
「あ、はい。いらっしゃい」
誰なんだろ? 目も髪も金色っていうのはこのあたりだと見ないなー、ソルさんたちの知り合いとか?
「こいつはユウ、昼前に知り合ってな。色々と冒険者について教えてもらうことになった。ユウ、こいつは妹のロールだ」
「よろしくね、妹ちゃん」
妹ちゃん? 初めて呼ばれたなあ。
「よろしくお願いします」
「…んー?」
?
「どうかしましたか?」
「いや、何でもないよ」
「そうですか」
何だったんだろ?何か私が気に触ることでもしちゃったのかな。
「さて、少年君。台所何処よ」
お兄ちゃんは少年君なんだね、人のこと名前で呼ばないタイプなのかな?
「ああ、こっちだこっち。ロール、今日は肉だぞー」
「え?本当?」
「ああ、ユウに肉貰う事になったから」
「そうなの? ユウさん、ありがとうございます」
「いいよ別に、少年君の功績でもあるし」
「お兄ちゃんの?」
「(おい、ばらすなよ)」
「(わーっとる、めんどくさくなりそうだから適当にごまかしてやるって)」
? 何をひそひそと話しているんだろう。
「少年君がたまたまストライクボアを発見してね、見つかる前に逃げているところで俺と会ったんだよ。で、危険だから俺が先んじて倒したの」
「そうだったんですか…、良かったねお兄ちゃん、危ない目に遭わずにすんで」
「あ、ああ、そうだな(すっげーしれっと嘘ついたな)」
なんにせよお兄ちゃんが無事でよかったよ。
「ということはそのストライクボアのお肉なんですか」
「そうそう、妹ちゃんが料理を作るのかい?」
「はい」
「じゃ、一緒に来てな。調理方法とか教えるから」
「あ、はい」
そんなこんなで三人で台所に立つ。さすがに三人だと狭いね。
「じゃ、これなんだがね」
「うわ!」
急におっきなブロック肉が出てきたからびっくりしちゃった、これがストライクボアのお肉か…。
「で、とりあえず焼いてみるか。味が分からんとな」
「これでまずかったらどうすっか」
「まずけりゃたぶんあのサブマスさんが言うじゃろ。まずい肉引き取るとか使い道気になるだろうし」
「ああ、それもそうか」
そんなことを話しながらユウさんがお肉を切って焼いて皿に盛る。おいしそうだなー。
「さーて、食ってみっか」
「昼あんだけ食って良く食う気になるな…」
「まあ、一人でこれ食うわけじゃないし、…悪くないな」
「いや、かなり美味いぞこれ」
「本当においしいね」
こんなにおいしいお肉は初めて食べたよー。
「ふーむ、焼くのに関しては問題なし。後は煮てどうかかね」
「煮込み料理はあまりしませんね」
「ん? 何で?」
「薪代がかかりますから」
意外と蓄積すると馬鹿にならないんだよね。
「あ、そっか。それがあったか」
「はい、ですから長時間火を使うのはあまり」
「あー、まあいっか。焼くしかないならそれだけでいいだろ、付け合わせとか変えればいいだけだし。あとは燻製ぐらいだけど、これは今度やるかね。確か燻製用のチップがアイテムボックス内にあったはずだし」
「くれんのか?」
「まあ、俺も食うけどね。後は保存方法か、ここ食料保存はどうしてる?」
「冷暗所に入れてますけど野菜ばっかりですね、お肉とかお魚はその日のうちに調理して食べますから」
「冷蔵庫ないのはきついな、うーん……あ、あった」
「何が?」
「簡易付与が施された小型食料保管箱」
えーっと、何なんだろう、それ?
「何だそれ?」
「ちっちゃくて性能の低い冷蔵庫って感じ、アイテムボックスに昔突っ込んでたみたいだな。いつどうして手に入れたのかね、まあいいか、これやるわ」
また目の前に1ムルほどの大きさの箱が出てくる、これが冷蔵庫?
「やるって、付与が施されているってことは一応人工魔具だろ?いいのか?」
「いまさらだろ。それに俺がお前さんを鍛えるんだぞ、それを買える位の金がすぐに稼げるようにしてやるから先んじて手に入れたんだと思ってろ」
「あー、もういいや。助かる」
「えっと、ありがとうございます」
よくわからないけど、ユウさんがいい人だってことは分かったよー。
「じゃ、俺はこれで帰るから。明日ここに来ればいいか?」
「ああ、そうだな、それで頼むわ」
「じゃ、9時くらいに来るぜ。また明日だ」
「ああ、またな」
「また明日です」
「おう」
そんなこんなでユウさんは帰っていった。よくわかんない人だったなー。
「お兄ちゃん、ユウさんってどんな人なの?」
「んー、強くていろいろ知ってて良く食って非常識?」
「さっぱり人物像が透けてこないね」
「実際よくわからないからな」
「でもそんな人にお兄ちゃんは色々教わるんだよね?」
「…俺、どうなんのかな…」
「えっと、がんばって?」
「おう…」
とりあえず私は今日の夕飯の付け合わせを考えよっかなー。
人工魔具:遺跡等で発見される現在の人の手が加えられていないものを魔具と呼ぶ。それに習い付与魔法によって魔法的に加工された物品を人工魔具と呼ぶ。一般的には陣魔術が付与されることが多い。戦闘用や生活用など種類はさまざまだが、決して安い代物ではなく中流以上の冒険者や家庭で使われる。アイテムボックスもこれのひとつである。




