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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第二章:ユウの契約
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謝罪と説明

副題は食事と会話


やっぱ人増えると地の文が減るな。

「そろそろ降ろせよユウ!」


 何時まで人を小脇に抱えてんだ!! もうギルドの外だぞ、めっちゃ人に見られてんじゃねえか!!


「おうおう、悪い悪い」


 やっとか、しっかしいいのかねえ。


「おい、ユウ。あんなことしていいのかよ?」

「だって腹が立ったんだもん」

「だってじゃねえよ?!」


 だってでギルド職員に喧嘩売るなよ、馬鹿だろこいつ。


「しかし腹が減ったな」

「今までの流れ全無視か!」

「少年君だって腹減ったでしょ」

「いや、そうだけどよ…」


 あんだけ走り回ればそりゃ腹も減るわ。


「この辺で美味い店ってどこか知ってる?」

「いや、俺あんまり外食しないしなあ…、安くて普通の店しか知らねえ」

「わざわざそんなところで飯食ってもなあ、適当に入ってみるー?」

「うーん…」


 どうすっかな、知らねえわけじゃないが入ったことないからピンと来るとこがないんだよな。


「あ、いたいた」

「良かった、まだ行ってなかったようですね」

「お?」

「あれ、スレイ? とカーラさん?」


 どうしてここにいるんだ?


「あんたがスイールに嵌められそうになっていたからね、ギルドとしてはそのことについて謝罪しなければならないのよ」

「嵌められた?!」

「そんなこったろーと思ったぜ」

「え、分かってたのか?」

「大方、少年君をギルドの指示を聞き入れない問題児扱いにして処罰させるつもりだったんでしょーよ」

「何で?」

「そこまでは知らんよ、俺アイツのこと知らねーもん。ところでお嬢さん方?」

『はい?』

「高くていいから美味しくて量もある食事処知らない?道の真ん中で長話するわけにもいかんし、あ、奢るから安心してん」

「結局飯かよ…」

「腹減ってるのもどこかで腰を下ろして話したいのも事実なんだから一緒にやったほうがいいでしょ、お嬢さん方もたぶん問題ないだろうし」

「ええ、それはかまいませんけど」

「でしたら神鳥の止まり木亭はどうですか?すぐそこにあるお店で量はともかく種類は多いですよ」

「あれ? 神鳥の止まり木亭って、メンフェムに同じ名前のお店が有ったけど」

「あ、知ってましたか。あそこの支店ですよ」

「ああ、なるほど。あそこの料理は美味しかったからね、そこにしようかね。行くぞ諸君」

「いや、場所知らねえだろアンタ。こっちだよ」


 何で先頭を歩くんだよ、まったく。こっちだよな?入ったことは無いけど。




「おう、ここだここ」


 ラインを先頭にして神鳥の止まり木亭の前に着く、私も入った事はないから楽しみね。


「じゃ、入るかね」


 ラインのお連れさんが真っ先に入っていく。本当にお腹が空いていたのかしら、落ち着きが無いようにも見えるのよね。それで私達は席に通されてメニューを見る、本当に色々有るわね。


「おうおう、あっちとメニューは一緒か」

「何頼みゃいいのかわかんねえ」

「何でもいいぜ、金の心配はしなくていい。たくさん食わないとでかくならねえぞ少年君、そちらのお嬢ちゃんより背が低いとか」

「気にしてるんだから言うなよ…」


 同い年の私の方が5シムルぐらい背が高いこと、やっぱり気にしてたのね。


「えーっと、じゃあこの日替わりランチにするかな」

「私はチキンドリアを」


 私はどうしようかな…、よし。


「このきのこのパスタにしようかな」

「決まったね? すまない、いいか?」


 お連れさんが給仕を呼ぶ。


「お決まりですか?」

「ああ、日替わりランチ、チキンドリア、きのこのパスタ、ステーキセット、シーフードサラダ、フライ盛り合わせ、鳥のグリルを頼む」


 ちょ、多い多い!?


「お持ちする順番はどうしましょう?」

「最初の四つは同時に持ってきてくれ、後は適当でかまわない」

「かしこまりました、しばらくお待ちください」


 注文を受けた給仕が厨房の方へと去っていく、それにしても頼みすぎじゃないかしら。


「ユウ、頼みすぎじゃないか?」

「いいんだよ、俺たくさん食うし。少年君も遠慮なく食っていいぞ」

「頼む量まで普通じゃないのな。それにずいぶん手馴れていたな、口調も違ったし」

「実際慣れてるからね。さて、自己紹介を始めようか。俺の名はユウ、少年君とは街の外であってね、少しの間行動を共にすることにしたのさね」

「じゃあ私から、スレイ・アインテルです。ここのギルドの職員で受付を担当しています。ラインとは幼馴染という奴です」

「私はカーラ・フェム、同じくギルドの職員で受付です」

「…オーライ、じゃあギルド側の説明を聞こうか」

「スイールがラインに対し必要な情報を教えずに依頼を受けさせておきながら、上司にはラインがこちらの指示を聞かない問題児として報告し、ラインを処罰させるつもりだったようです」

「ユウの言った通りか」

「やっぱね、おかしいもん。不良品を何も言わずに受け取り続けるとか」

「ラインさん、申し訳ありません」

「い、いや。カーラさんが謝る必要なんて」

「ライン、ごめんなさい」

「スレイまで」

「受け取っとけよ少年。組織の一人がやったことは組織全体の行為となるもんだ、だったら組織の他の人間も謝る必要があるのさ。ここで謝罪を受け取って後々まで尾を引くことが無いようにしたほうがいい」

「けど、俺がちゃんとしたのを納品してればそもそもこんなことにはならなかったんだろ? だったら」

「無知は罪なんてことはよく言われるが、ある事を知らない人間はなかなかそれを知ろうとは思えないものさ。知らなかったことで不利益を被った時初めてそれに目を向けることが出来る、1も知らされずに10理解できる奴なんて100人の天才の中に一人もいないだろうさ。最初の一回は失敗して次から失敗しないようにするぐらいでいい。だから少年君は別に悪くないと思うぜ。大体ギルドは最近新人研修の場を設けだしているはずだけど、ここはまだだったのか?」

「この時期に冒険者となったのがライン一人だけだったので開かないことにしたんですよ。それにラインに関してはラインと知己の冒険者さん達が受け持ってくれる予定でしたから。もっとも、急な指名依頼が入ってしまいその人達が街を離れていたので…」


 まさかこんなことになってるとは思ってなかったのよね。


「やれやれだな」

「えーっと、俺はこの場合どうなるんだ?」

「ラインさんに関しては無論お咎めはなしです、むしろ何かしらのお詫びを渡すこととなるでしょう」

「だったら金にしておけ、新人が生き残るにはどれだけ金を投資できるかによる。ランクを上げることやギルドから優遇されることよりも装備の質と本人の地力を上げるほうが先だ」

「分かりました、上司にはそう伝えておきます」


 ラインが置いてけぼりね、本人のことなのに。それに比べてユウさんはさくさくと話を纏めていくわね、手馴れてる? 口調もさっきと違って真面目だし、状況しだいでスイッチを切り替えるタイプ? さっきまでのふざけた態度が身を潜めたけどどっちが本質なのかしら、もしかしたらどちらも違うのかもしれないわね。


 そうやって話の片方が片付いたところで給仕が料理を運んで来る。いっぺんに全部持ってきたのね、テーブルがお皿でいっぱいになっちゃった。


「ご注文は以上で?」

「ああ、何かあればまた呼ぶ」

「かしこまりました」

「さて、とりあえず食うかね」


 ユウさんの号令で各々食事に手を伸ばす。…あ、美味しい。当たりの店だったようね。


「美味いな」

「そうね」

「以前と同じ味だな、変わらず美味い」

「そうですね」

「少年君、これも美味いぞ」

「お?…おお、美味いなこれ」

「少しはゆっくり食べたらどう? がっつくとみっともないわよ」

「いいじゃねえか、めったに食えないんだから」

「だから家に来なさいって言ったのに、あそこでロールと一緒に過ごしてると生活の余裕が無いでしょ」

「あそこが俺達家族の家だ、苦しくても引っ越すつもりはないよ」

「まったく」


 変なところで頑固なんだから、一緒に住んでくれれば私も積極的に迫るチャンスが…って何を考えて!


「…ふーん」

「どうしたんだ、ユウ?」

「少年君、お穣ちゃんとはいい仲なのかい?」


 ちょ!?


「いい仲?なんでそんなことを?」

「いや、アイツってのがお穣ちゃんのことなのかとね」


 アイツ? 誰のことかしら? まさか、ユウさんの質問から考えるとラインの好きな人とかなの?!


「ロールのことだよ、俺の妹の」

「さっき出てきた名前だな、そうか、妹か」

「それがどうしたんだよ?」

「罪深いやつだねって話」


 そう言いつつユウさんは私とカーラさんを見る、まさかばれた?


「?」


 …ラインは気付きなさいよ、はあ。あ、そうだった。


「ユウさん、少し確認を取りたいことがあるのですが」

「あー、お穣ちゃん。別に敬語じゃなくていいぜ、そっちのお嬢さんも」

「え、いえしかし」

「敬語使われるの苦手なんだよ、何のために自由気ままなその日暮らしをしてるのか分からなくなるから」

「はあ、だったらこれでいいかしら?」

「それで頼むな」

「すいませんが私のこれは癖のようなものなので勘弁してください」

「別に強制する気はないよん」

「ではあらためて、ユウさんが出したあのストライクボアについてなんだけど」

「あれが?」

「何処で倒したの?」

「この街の近くの草原だね」


 この近く…か。


「未確認ですがあれが上位種の可能性が出てきたの」

「上位種?あれが?」

「ええ、このあたりにいるボア系はストライクボアのみなのにあの大きさでしょ? だから上位種かそもそもストライクボアじゃないかのどちらかだという話になったのだけど」

「俺が遠くで倒したものだったら話はまた変わってきたってか」

「そんなところよ」

「疑うつもりはありませんがこの辺りで倒した証拠などはありますか?」

「少年君だな」

「ラインさんが?」

「ああ、そもそも俺があいつを倒したのは少年君があいつに襲われていたからだ」

『え!?』


 襲われてた!? ラインが!?


「ちょ、ばらすなよ」

「事実なの?!」

「ラ、ラインさん、お怪我はありませんか?!」

「え? ああ、大丈夫だけど」


 よ、良かったわ。あんなのに襲われるなんて、ユウさんがいなかったらラインは…。


「ふーん、やっぱりねー」


 ユウさんがなんかニヤニヤしている、やっぱり私達の気持ちはバレてるみたいね。


「何ニヤニヤしてんだよ」

「べっつにー、どうなるのかなーって思ってるだけ、くっかか」

「…話を戻しますけど、どうしてラインさんはあれに襲われていたんですか」

「えーっと、森に入ろうとしたらあいつが居たんだよ。で、そのまま森の中に入ってやり過ごそうと思ったら急にこっちに顔を向けてさ、目が合った瞬間にこっちに走ってきたんだ」

「それは…災難でしたね」

「もっと早くに気付きなさいよ」

「死角だったんだよ」

「何にしても無事でよかった。ユウさんありがとうございます」

「いいよ、別に。少年君のあの叫びを聞いて無かったら手を出したか怪しいし」

「叫び、ですか?」


 叫びって何かしら?


「ああ、俺は生きないといけないんだってね。その後これであいつの元に帰れるとも言ってたからてっきり俺は、ね?」

「そういうことですか」

「なるほどね」


 そんなこと言ってたのね、ロールが大事なのは分かるけど私は違うのかしら?聞きたいけど、聞けないわよねえ。


「なんだ、この空気?」

「気にすんな、いいからさっさと食い終われい」

「え、あ、俺だけか食い終わってないの。ユウ早いな」

「まあ初めての店だったらもう少しゆっくり食ったけどね、知ってる店だったからそこそこ早く食っちゃった」

「あんだけがっついてたのにまだ食べ終わってなかったのね」

「だって皆真剣な顔して話してるからさ、食いづらかったんだよ」

「どうでもいいけど早食いできるようになっておいたほうがいいぞ、少年君」

「そうなのか?」

「冒険者に寄らず街を離れる場合、野宿をすることは多いです。その際にゆっくり食事をとっていると敵襲を受けた場合に不利ですから、基本的に食事はすばやく済ませます」

「もっともここは外じゃないし、外でこんな料理が出るわけでもないから、今気にすることじゃないけれどね」

「そういうことだ、話にのめりこみ過ぎるなよ」

「はー、やること多いな」

「それが冒険者だってことさね」


 ラインが食べ終わるのをまって席を立つ。ユウさんが流れるように伝票を持って行ったから自分の分は自分でって言い損ねちゃった。


「奢ってもらってごめんなさいね」

「すいません」

「いいよ、食事に誘ったのはこっちだからね。さて、いったんギルドに向かうかね。君達も一緒かい?」

「ええ、私達もそのまま戻るわ」

「オーライ、じゃ行こうか」


今回は解説することないかな、たぶん。

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