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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第五章:勇者の召喚
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二組の会話

副題は、過去の記憶と未来の予想


 ノックスへの旅路、東へと走る三台の車両があった。トルキアにおいてまったくと言っていいほど普及していないそれら、その乗り手がナル達だということは言うまでもなく分かってもらえるだろう。


「ナルさん、後どれくらいですか?」

「……」

「…ナルさん?」


 そのうちの一台であるサイドカー付きのバイクを運転しているナルは、その背にいるミチの呼びかけにも答えずに何事かを考え続けていた。



 その会話がなされたのはティーラウスを発つ前夜、ケイに呼ばれユウと一緒に三人で集まった時であった。


「…トッサイ男爵?」

「ああ、どうにも引っかかる動きをしているようだ。領地での動き然り、ギルドへの依頼然り、何かをたくらんでいることは明確だろう」

「なるほどねえ…」


 そう言いつつユウの視線はナルへと向かう、彼の様子がどうにもおかしいからだ。トッサイという名前を聞いてからナルの反応が鈍く若干顔色が悪い、そのことに彼との付き合いの長いユウはすぐに気がついた。彼との出会い方、そして彼がかつて語った言葉、そう言ったものを踏まえればどういうことなのか大体の見当はつく。


 しかしそのあたりのことを追求する気はユウには無かった、同じく気がついているはずのケイが何の反応も見せていないことを考えれば彼も同じ心境なのだろう。少なくとも今聞くことでは無いはず、そう判断したユウはナルの不審さには一切触れないで置こうと決めた。


「それでどうするつもりだ? まだあっちに帰るつもりは無いんだろう?」

「現状はな、今はそういう動きがあることを覚えておけばいい。一応ノックスでついでに調べてみる気はあるがそこまで成果が得られるとは思えん、この件については基本待ちの姿勢で行く」

「あいよ、ナルもそれで問題ないよな?」

「…ああ、そうだね」


 そう告げるナルの頭の中では、かつて見聞きしたものがぐるぐると回り続けていた。



 それからもナルの頭の中ではそれが顔を見せている、それこそ誰かと会話をしているとき以外はずっと。


「あのー、ナルさん?」


 ずっと考え続けていた彼の頭にその声が響く。


「……え? 何か言った?」


 ようやく反応を見せてくれたナルにミチは安堵とそして不安を半々に覚えた、いつも柔らかい彼にしてはおかしな態度に何かあるのではないかと感じる。


「ノックスまで後どれくらいですかって聞いたんですが…、どうかしましたか?」

「いや、何でもないよ。ちょっとした考え事、無視してごめんね」

「いえ、そういうことなら別にいいんですけど…」

「それでノックスまでだったね、この調子なら後一時間もせずにつくんじゃないかな」

「分かりました」


 聞きたいこと、言いたいことがあるけれど、それ以降ミチはナルが口を開くまでずっと黙ったままであった。




 そんな友人たちを知るわけもなく、ケイとノエルはいつもの二人の会話を交わしていた。いくらか話をしていれば当然会話の内容は次行く街のそれへと移っていく。


「そういえばケイさん、ノックスってどんな街なんですか?」

「そうだな…、トルキア国内においてもっともグリエルに近い大都市だ。だからグリエルとトルキアの貿易において重要な役割と果たしている、またあちらの文化や技術の影響をそれなりに受けている街と言えるな」

「グリエル、ですか…」

「君の故郷でもあるな、グリエルは」

「あまり強い思い出もないですけどね、物心ついたときから代わり映えの無い日常しか味わったことがありませんから。…まあ、キエル村の思い出は悪い意味で印象的ですが」


 母と、そして時折父と一緒にひっそりと過ごしたグリエル。父と二人、呪いという言葉に傷つけられてきたキエル村。どちらにしろ彼女にとっては懐かしむような過去でも無い。


「特に学ぶべきことも無い過去だ、忘れろと言う気は無いが思い出す必要もあるまい」

「…そうですね、それもそうです」

「安心しろ、私達といる限りそんなことを思い出す時間はない」

「…ふふっ、確かにそんな暇無いですもんね」


 ケイと旅するようになってからは一日が常にめまぐるしく過去を思う暇など無い、だけど彼女にとって今の生き方はとても良いものであった。新たに出来た友人、新たに知った場所や知識、そして何より頼れる彼。今こそが彼女にとって良き思い出となるであろう日常なのだ。


「そういえばケイさん、ケイさん達もグリエルの出身なんですよね?」

「ああ、私達は三人ともあちらの出身だ」

「いつかあっちに帰ったりするんですか?」

「後数年以内には帰るつもりだ、どのタイミングで帰るかはまだ分からんが」

「そうですか」

「君も来るか? その時には私達は冒険者を引退しているだろうが」

「え? 引退するんですか?」


 誘われたということよりも引退する方に思わず反応してしまったノエル、それほどまでに彼女にとってケイは冒険者であるイメージが強すぎるのだ。


「私達にもやらねばならないことはあるのさ、冒険は若いうちの特権ということだ。それでどうする?」

「決まっています、ケイさんのお邪魔でないのならついて行くつもりです」


 ケイの問いにノエルは間髪いれずに返答する、その速度にケイは軽く笑みを浮かべつつもさらに問いを重ねる。


「ほう、独立する気は無いと?」

「私はこれで食べていくつもりはあんまり無いですからね、防衛はともかく積極的に責めるのはやっぱり苦手です。なのでケイさんが冒険者を辞めるなら私も辞めて、何か出来そうなお仕事でも探しますよ。ケイさんについていけば職を探すのも簡単そうな気がしますし」

「そうか」

「あ、でももしお金に困ったら冒険者に戻るつもりなので、その時はまた助けてください」

「…ふっ、その時は全力で手伝ってやろう」

「ケイさんの全力は地形が変わりそうなんで、程ほどでお願いしますね?」


 冗談交じりで交わされた未来の予定、最終的にどうなるのやらとケイは微笑みながら考えるのであった。


 はい、今回はだいぶ短かったです。本来であればユウたちの会話も入れるつもりだったのですがちょっと今回は時間が無いのでお許しを。ではまた

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