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ラクセイリアの一人と二人  作者: 轟 響
第五章:勇者の召喚
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転移と破壊

副題は、また会うだろう。


 ケイの口から出た都市名、それを聞いた面々は怪訝な表情を浮かべる。


「ノックス? ちょい待て、わざわざここまで来て転移した先がノックスだと? そりゃおかしくないか?」

「確かに、ノックスに向かうのなら王都から直接向かった方が何倍も良いはず」


 ユウとナルの発言にノエルたちはそれぞれ頷く。彼らの言うとおりティーラウスとノックスでは王都からの距離はそう変わりない、街道やらを踏まえればむしろノックスの方が近いといえるかもしれない。だと言うのにわざわざティーラウスの遺跡を使用してノックスに転移するなど余計な手間をかけることになる、はっきり言えば馬鹿のやることだ。


「逸るな、二人とも。確かに最終的な転移先はノックスだがその前にいくつか転移先の座標を入力している、どうやらノックスに飛んだのは苦肉の策らしいな」


 そんな皆の疑問にケイは機器を操作しながら淡々と答える。いくつかの転移座標の入力とそのキャンセル、ノックスへの転移は妥協に妥協を重ねた結果であるとケイには断言できた。


「跳べなかったということかの?」

「ああ、当初は国外に転移するつもりだったようだ。しかしエネルギー切れでそれが叶わず、その時点で転移可能だったノックスを仕方なく選んだというところだろう」

「エネルギー切れ、ねえ。…俺らが原因かね?」

「ああ、調べてみたがこの転移装置は外魔力を自動で取り込みエネルギーを蓄える形式だな。あの時、私達の転移に蓄えていたエネルギーを消費してしまった結果、件の人物が望むだけのエネルギーは残っていなかったようだ」


 少々前の暴走による転移、それにより蓄えられていたエネルギーの多くが消費されていたらしい。それ以降も自動で少しずつ魔力を吸収してエネルギーを蓄えていたようだが、昨日テーリアたちが追う人物が来た際にあったのはその程度の転移しか出来ない量であったらしい。


「ある意味じゃあ俺達が罠にかかったのは幸運だったともいえるのか」

「僕達の運が良い、と言うよりはそいつの運が悪いだけだと思うけどね」

「しかしその程度でエネルギーが切れるとは、少々不便な機械じゃのう」


 そのソフィアの言葉を聞いたケイは今やっていた調査をいったん止め、先にそちら方面について調査してみる。


「…ふむ、これはあくまで非常用らしいな。本来は別にメインのエネルギータンクがあるようだが、何らかの理由で壊れているようだ」

「なるほどね、サブだから多少効率が悪いってことか。他に何か分かったことはあるかい?」

「そうだな…。テーリア、そいつに仲間はいるのか?」

「いや、私達の元を離反した時は一人で行動していた。もとより個人主義なところがあったはずだから一時的な協力はあっても長い間行動を共にすることはおそらく無い、はずだ。それがどうしたんだ?」

「履歴を見るに転移した人数は一人のようだ、それを踏まえるとそいつが他と連携して動いている可能性は低いと考えられる」


 どうやらこの転移装置、対象の重量によって転移に必要なエネルギー量が変化するタイプのようだ。そのためそういったデータも履歴として残っていたのである。


「そうだな、となるとやはり奴と直接接触しなければどうにもならないか。…ケイ」

「現状のエネルギーではお前達をティーラウスの外に跳ばすのが限界だな、それでもここから普通に戻るよりは早いが」


 申し訳なさそうなテーリアの言葉にすぐさま現状での限界を告げるケイ、当たり前だが昨日の今日の回復ではこれが限界のようだ。


「…私達にはそれを動かすノウハウが無い、虫のいい話だとは承知しているが」

「構わん、お前達も異論は無いな?」

「どうでも」

「知り合いだからね」

「お任せします」

「同じくじゃな」

「…感謝する」

「…」


 勝手な願いであるというのに快諾してくれる皆にテーリアは頭を下げる、その横に控えていたクロブチも本心はどうだか知らないがテーリアが頭を下げたからか同じように頭を下げる。


「では決まりだ、二人ともそこに」


 部屋の中央、対象を転移させる装置近くにテーリアとクロブチは立つ。それを確認しながらケイは転移装置の起動と座標の入力を行い、ナル達他の面々はケイの近くに寄って転移に巻き込まれないようにする。


「ケイ、ユウ、ナル、感謝する」

「縁あらば、また会おう」

「じゃあな」

「今度はゆっくりと話しでもしたいね、テーリアさん」

「…そうだな、いつかまた」


 ケイ、ユウ、ナルの別れの言葉に微笑みながら、テーリアはクロブチと共に光に包まれる。その光がおさまった後、そこには二人の姿はなかった。


「消えた…」

「転移か、成功したのかの?」

「当然だ、そうでなければ起動などさせん。…さて」


 皆の方に振り向いたケイは神妙な面持ちで告げる。


「この転移装置、破壊しようと思っている」

「ええ!?」


 驚くノエル、


「んだな」

「まあ、だろうね」


 予想通りと納得するユウとナル、


「…理由を聞いてもいいかの?」


 そして理由を問うソフィア。それぞれを確認したケイは一度頷いて口を開く。


「私達は元々グリエル帝国の人間だ、自由の代名詞である冒険者ではあるものの私はグリエルに愛国心を持っている。だから困るのだ、このようなものがトルキアにあってはな」

「使用に制限があるとはいえこいつは輸送面において優れた機械だ、上手く使えば国内何処にでも必要な物資を転移させることが出来る」

「もし構造の解析に成功して改良や量産なんてことが出来るようになればトルキアの国力は一気に向上する可能性がある、そうなれば」

「同じ大国であるグリエルの脅威となるかもしれない、そういうことかの?」

「そうだ、だから私はこれを破壊したいと思っている。グリエルの一国民としてな」

「正確には俺達が、だろう?」

「僕たちだってグリエルの民なんだから」


 思いを告げるケイの横にナルとユウも並ぶ、彼らもまた思いはケイと同じなのだ。


「…そうだな、私達の意思はこれの破壊だ。ノエル、ソフィア、君達はどうしたい?」

「…私はケイさんに従います、ケイさんにはいくつもの借りがありますから。それに、一応私も出身はグリエルですからね」


 問われたノエルは少しばかり悩んだものの結局はそう答えた、よほどのことが無い限り彼女がケイの言葉に反対することなど無いだろう。何故なら彼女にとってケイは恩人であり、憧れであり、そしてそれ以外の大事な感情を抱く相手なのだから。


「トリニティ公国の者としてもトルキアが大きな発展をするのは好ましくない、まあ今の妾は主様の従者なのだが。…どっちにしろ変わらんのう、主様がそれを望むのなら妾も従うのみじゃ」


 ソフィアもまた色々と思うところはあるようだが結局はそう結論を出す。もはやこの身はユウに預けたも同然、彼がそう願うのならそれに応えるのが彼女の願いなのだから。


「助かる」

「でもギルドマスターさんには悪いことをすることになりますね」

「まあ大きな利益を手に入れられると思っているだろうからのう、…そういえばどうして転移装置のことを素直に話したのじゃ? 黙っておけば問題なかったような気もするのじゃが」

「後々余計なことが起きないようにしただけだ、今回の場合本当のことを言っていた方が妙な火種は起きにくいと判断した。…今回だって私達がついたときには既に壊れていたというだけだ、何らかの理由でな?」

「ま、そういうことで」

「お願いするね?」


 珍しく若干弾んだ声で茶目っ気を出しながらケイは言い、同じようにユウとナルもウインクをしながらお願いをした。


「はあ、そういうことなら。なら私はギルドマスターさんの前で話さない方がいいですか? 変なことを言ってばれるわけにもいかないですし」

「すまんが頼む、ばれた場合は少々荒っぽい手段にも出ないといけないからな」

「荒っぽい…」

「聞きたい? 下手な怪談話より怖いよん?」

「…聞きません、絶対に」

「はは、その方がいいよ」


 そんな風にふざけつつ、ノエルのみは本気だろうが、転移装置の破壊に取り掛かる一行であった。


 はい、…書くことが無いですね。ではまた。

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