表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

駆逐

作者: 成田純一

 未だに彼のスマホには元カノとのツーショット画像がたくさん残っていることを私は知っている。そして未だに彼の口から元カノの故郷の方言がこぼれ出ることを私は知っている。未だにカラオケでは元カノの18番を歌わされ、未だに元カノがよく通ったバーに連れて行かれる。

 つまり未だに彼は元カノのことを忘れられずにいる。

 太陽は12時間前に姿を隠し、再び光を見せるのは2時間後。

 私は横にいる彼の寝顔を黙って見つめていた。ただただ無防備な顔。こいつ分娩室で母親からさっき産まれたんじゃないか?

 安定した暗闇が静かに、ただある。遠くから届く微かな街灯の光がカーテンのない窓から室内を物色していた。潔癖性というには詰めが甘いしゴミ屋敷というには神経質な部屋のありさまである。

 さぁ、これからやらなければならないことがある。

 彼の頭の中から元カノを払拭しなければならないのだ。

 出来るか? と私は自問する。

 出来る。即答だ。

 私はこれから自らの真摯なる人間性をもって彼の肉体と頭脳を占領していくことになる。

 人類の歴史が始まって以来夜ごとの出来事。毎朝の恒例。

 さあ、日が昇る。一日の始まりだ。

 準備は出来ている。


 そうして彼は寝ぼけた表情で目を覚ます。

 私は昨日と全く変わらない口調でこう言った。

「おはよう」と。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ