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七の夕月   作者: サTo
9/17

十六夜

なな夕月せきげつ




「鳥、アンタには悪いけどその力消させてもらうわよ!」

獅堂要が病室のドアを勢いよく開けると同時に宣言し、5人が勢いよく白鳥衣緒奈の個室に入っていく。

衣緒奈の病室に入って、真っ先にその変化に気付いたのは琴平あゆむだった。

正確にはその変化はあゆむにしか気付けない。

この場所に今初めて来ている要や子犬丸草太には気付けるはずもないし、昨日この場にいたが幽霊が見えていない大鷹冬馬や鳩野静羽にも気付くことは出来ない。

「おじさんになってる・・・?」

その病室には昨日の男の子は居らず、変わりに人の良さそうなおじさんの幽霊が衣緒奈の背に隠れるようにしていた。

「おじさん?」

あゆむの言葉に疑問を持つ冬馬。

「昨日の男の子が居らへん・・・。変わりにおじさんが衣緒奈ちゃんの後ろに」

「どういうことです?」

二人のやりとりに気付いた草太が入ってくる。

「あんな。昨日衣緒奈ちゃんに取り憑いとったんは、小さな男の子やってん」

「でも今はおじさんですね」

草太にもそのおじさんが見えているらしい。

「同じ霊じゃないのか?」

「どうでしょう。ボクは昨日の男の子というのを知りませんし。もしかしたらその子の本当の姿があのおじさんとか」

「え?幽霊って成長とかできるん?」

 草太の言葉にあゆむが不思議そうに聞き返す。

「出来ませんよ。けど、姿を若返らせることは出来るみたいです。生きてきた年齢までの好きな姿に自分をかえられるみたいなんですよ」

「へえ、初めて知ったわ。ウチにも出来るんやろか?」

「出来るんじゃないですか?」

「やっぱ便利なんだな、幽霊って。って、そんなこと言ってる場合じゃねえだろ」

冬馬の言う通りだ。

見ると衣緒奈が憔悴して辛そうなのは昨日と変わらない。

おじさんが昨日の男の子であろうと、別の幽霊であろうと、衣緒奈の生気を吸っていることには違いないのだ。

冬馬たちがそんなやり取りをする間、衣緒奈と要は激しい言い合いをしていた。




十六夜いざよい



「やめてよ!せっかく幽霊が見れる力が手に入ったのよ!それを消しちゃうってんなら、あんたでも容赦しないわよ!」

「力ずくでも消す。それはあんたが持つべき力じゃない!」

二人は病室で激しく言い合っていた。

「なんでよ!この力のおかげであゆむちゃんも見えるようになったし、話せるようにもなったのに!」

幽霊を見たいと思っていた衣緒奈にとっては待望の力。

しかしそれは今、衣緒奈自信を蝕んでいる。

「今の自分の状況が分からないの?どうせアンタのことだから、誰かれかまわず救おうとしてるんでしょうけど、もうかなり生気を吸われてるじゃない!いったいどれだけ相手したのよ!」

そんな中おじさんの幽霊は、要が声を荒げるたびにビクッと肩を震わせていた。

「別にいいでしょ。あんなに悲しみをダイレクトに伝えられて、放っておけるわけないじゃない!」

「だからって自分の命を犠牲にしてまですること!?」

「そうだよ!もうやめてよ衣緒奈ちゃん!」

静羽としては衣緒奈にこれ以上無茶はして欲しく無いので、要の方について衣緒奈を説得しようとする。

「ごめん静羽。でもこれが私の生き方なの・・・」

静羽が入った事で、衣緒奈の荒げた声が小さくなるが、それでも衣緒奈の気持ちは変わらない。

「病室では静かにしてください。他の患者さんの迷惑にもなりますので」

そして案の定、近くを通りかかった看護婦さんに怒られてしまう。

あれだけ大声で言い合えば当然だろう。

「とにかく、この力は消させない。アンタが力づくで私を止められるとも思えないしね」

看護婦さんが部屋を離れた事を確認してから、衣緒奈が要に言い放った。

「犬、行きなさい。少しの間鳥を止めるのよ」

それを受けそのことを十分に理解している要は間髪いれず草太に衣緒奈を拘束するように指示する。

「ちょっ!ちょっと待ってくださいよ!僕なんかに白鳥先輩を止められるはずないじゃないですか」

いきなり振られて戸惑う草太。

どうやら草太も衣緒奈の強さを知っているらしく、衣緒奈よりも小柄な彼が衣緒奈に敵うはずもない。

「たしかにかませ犬にもならなさそうね。じゃあタカ、あんたが鳥をおさえつけなさい」

次に振られた冬馬は迷った。

憔悴しているとはいえ、あの衣緒奈を押さえつけるにはかなりの攻防が予想される。

最悪怪我のいくつかは、双方覚悟しなければならないだろう。

それにここは病室、暴れる訳にも行かない。

衣緒奈の状態からもう少し入院させられそうな雰囲気だし、ここで暴れれば追い出されるのは冬馬達の方、さらに暴れることで入室禁止にされたのでは元も子もない。

「なに、タカも無理なわけ?」

要が冬馬を睨む。

要が初めて見せた表情だがそれに反応する状況でもない。

「無理もなにも、こんなところで暴れるわけにはいかねえじゃねえか。最悪追い出されて白鳥が出てくるまで何も出来なくなるぞ」

冬馬の言う通り出禁にされてしまっては衣緒奈を助けるチャンスはもうやってこないだろう。

「どいつもコイツも使えない・・・。じゃあもう一時しのぎしかないわね」

要はそう言うと、衣緒奈を睨みつけた。

いや、正確には衣緒奈の後ろにいるおじさんを睨んだ。

「要・・・あんたまさか!」

要の雰囲気からその意図に気付いた衣緒奈は後ろを守るような仕草を見せた。

その行動で全員がその意図に気付く。

しかし、要は衣緒奈がその行動をとると直ぐにドアへと振り返る。

「そこまでそのオヤジが大事なら好きにすればいい。その間にこの辺り一帯の霊は全て強制成仏させてやる」

それは一時しのぎにしかならないが、衣緒奈を救うには一番の手段だろう。

「待ちなさい!霊達はそんなこと望んでない!」

慌てた衣緒奈は要の腕を掴む。

「鳥、あんたは何も分かってない!霊達が望んでいることを全てかなえられるわけないじゃない!アンタはその望みがアンタを殺す事だとしても受け入れるの!?」

「それは・・・」

要の言葉に、要の手を握っていた衣緒奈の手が緩む。

いくら霊たちに渾身的な衣緒奈だからといって、そのことを分かっていない訳ではない。

「確かに叶えられない望みもあるかもしれない・・・。だけど私は、自分がしてあげられる望みなら叶えてあげたいの!」

その瞬間、衣緒奈の顔が少し歪んだのをあゆむは見た。

それは一瞬だが、衣緒奈の口の端がかすかに上がったのだ。

まるであざ笑うかのように。

その笑みに嫌なものを感じたあゆむは、衣緒奈に思いっきり突っ込んだ。

あゆむ自身、なぜこんな行動に出たのかはわからない。

しかし咄嗟に体が動いたのだ。

すると何かに当たる感触の後、あゆむが衣緒奈をすり抜けると同時に、女の子が衣緒奈から出てきた。

「「え?」」

そこに居た、冬馬と静羽以外の幽霊が見える者たちが一斉に少女を見る。

「なに・・・?なんで女の子が」

衣緒奈が不思議そうに女の子を見る。

どうやら衣緒奈が知らないうちに、女の子の霊が取り憑いていたらしい。

年のころは衣緒奈達と同年代のように見える。

「ご、ごめんなさい。私、どうしても叶えて欲しい望みがあって」

倒れた体を腕で起こした女の子が申し訳なさそうに話しだす。

しかし、少女が衣緒奈から出てきたことでようやく少女の存在に気付いた要は、その少女から滲み出る負の感情を見逃さなかった。

「鳥を殺すことが、いや誰でもいいから殺す。それがあんたの望みなのね?」

「ち、違うわよ。私、そんなこと望んでない!」

要の言葉に少女は衣緒奈にすがりつく。

「離れろ悪霊。あんたがここらへんの霊なら、私の噂を聞いたことがあるはずよね?」

先ほどまでこの病院に居る全ての霊に向けられていた要の感情が殺気となり、少女に向けられる。

もちろん少女は霊たちの間で囁かれる要の噂を知っていた。

ゴキブリのような触覚の髪の毛をもつ少女には近づくな。

不用意に関われば、否応なしに強制成仏させてくる。

逃げることも考えたが、自分はこの病院に縛られる自縛霊。

逃げ場はこの病院内にしかない。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。確かに勝手に私に取り憑いてたのはダメだけど、それだけで悪霊って」

少女がどうやって状況を切り抜けるか考えをめぐらせていると、衣緒奈が少女に助け舟を出す。

「いい霊か悪い霊かも見分けられない未熟者はだまってなさい」

衣緒奈にそう言い放つと、要は皮の手袋を手にはめた。

が、そのやり取りが一瞬の隙になる。

「衣緒奈ちゃん!」

あゆむの叫びも虚しく、少女はその隙に再び衣緒奈の中に入ってしまった。

衣緒奈の顔が忌々しげに要を睨む。

「まさかこの女がG、あんたの友人だったとわね。でも、体に入ってしまえばこの女の自由は私のもの。このまま強制成仏しようとするなら、こいつも道連れに―――」

衣緒奈の声で少女がそう言いかけた瞬間。

パンッ!

衣緒奈が自分の頬に思いっきり平手打ちをした。

「い、衣緒奈ちゃん?」

「白鳥!?」

そこにいた全員、衣緒奈に再び取り憑いた少女もその行動に驚愕した。

「な・・・!?」

「そうよね。こういう霊もいるのよね・・・」

少女とは違い衣緒奈が衣緒奈の言葉で話す。

その声は少し悲しそうだった。

パンッ!

そして再び頬を叩く。

「と・・・鳥?」

その行動に要も面食らってしまった。

「ウソ!?体は完全に――」

パンッ!

少女が驚愕の声をあげようとした瞬間、三度頬が叩かれる。

「さすがに何人か相手してたら力の使い方もちょっとは覚えるわよ」

そして4発目。

衣緒奈のビンタで少女が衣緒奈から引き剥がされた。

「くっ!」

衣緒奈から出され、顔をゆがめる少女の顔に要の手が覆いかぶさる。

「ナイス鳥!タカ!あんたは鮎連れてこの部屋から出なさい!」

いきなり振られた冬馬だったがなんとか反応し、あゆむの手を引いて部屋を出た。




「ふう。なんか全然入り込めなかったぜ。てか咄嗟だったけど動けてよかったな。あのまま部屋にいたら確実に」

「うん。部屋にいたら私、成仏しちゃってたかもね」

 部屋をでて扉を閉め、廊下で冷や汗をながす二人。

「お二人さん、もう大丈夫ですよ」

そんな二人に、病室から出てきた草太が声をかけた。

「意外にあっさりなんだな」

草太が出て来たのは、冬馬たちが部屋を出てから5分と経っていない。

結末を見ようと二人が部屋に入ると、衣緒奈でなく要が病室のベッドに仰向けで寝ていた。

「大丈夫よ。ちょっと疲れただけだから」

心配して近くに行こうとしたあゆむに、要は一瞥もせずに話す。

そして、

「鳥、悪いけどあんたの力、消させてもらうわよ」

衣緒奈に再びそう言い放った。

「なんで?ようやく幽霊と、あゆむちゃんとまともなコミュニケーションをとれるようになったのに」

「あんたは性格上、困ってる人は放っておけないんでしょ?幽霊ってのは見えてる人に助けを求めてくるものなの。その全てを相手にしていたら、あんたの生気がいくらあろうともたない。私ですら心を殺して極力幽霊を避けるようにしてきたのよ」

要の方法は冬馬と似ていた。

幽霊は現世でやり残して来た事、怨みなどにより現世に魂が縛られた存在だ。

そのほとんどが自分達の想い意外目もくれない。

あゆむの様な霊は極一部なのである。

だからこそ霊達は自分達が見えている者に必死に縋る。

しかしその全てを相手になど出来るわけがない。

だからこそ要はGという恐れられる存在を創りあげたのだ。

仰向けに寝て、顔を腕て覆うようにしている要に衣緒奈が話す。

「確かに今回のことで、霊と付き合う大変さは分かったわ。でも、私はこの力を捨てたくない・・・」

 自分がどれだけ危険な状態だったのかを知って落ち込んだ衣緒奈だが、それでも霊能力は消したくないと要に伝える。

「なあ、せやったら要ちゃんが衣緒奈ちゃんをサポートしてあげたらええんちゃうの?それに衣緒奈ちゃんが要ちゃんの友達だって分かったら、霊たちも不用意に衣緒奈ちゃんに絡んでこんと思うねんけど」

確かにあゆむの言う通りだった。

この辺りでは霊たちに恐れられている要が衣緒奈と友達と知れば、よほどのことが無い限り、霊たちは衣緒奈に絡んでこないだろう。

「お願い!私も霊たちへの対応に気をつけるし、なにかあったら絶対あんたに連絡するから!」

手を合わせ、衣緒奈が要に頭を下げる。

「私からもお願い!衣緒奈ちゃんの力を消さないであげて!」

今まで衣緒奈を心配しつつ、成り行きを見守っていた静羽も要に懇願する。

「ウチからもお願いや!」

そしてあゆむも頭を下げた。

「白鳥先輩、幽霊と向き合うことはいい事ばかりじゃないんです。あなたはそれでもその力を望むんですか?」

 草太が霊能力者としての先輩として、衣緒奈の覚悟を確認する。

「ええ。覚悟はしてるわ。だからお願い!」

「だそうですが要先輩、どうしますか?」

あくまでも要側の草太だが、衣緒奈の気持ちを否定しないことで衣緒奈の味方になる。

「わ、わかったよ。俺からもお願いしてやる」

さらに傍観者を貫こうとしていた冬馬も、あゆむにひじで小突かれることで衣緒奈についたのだ。

「・・・好きにしなさい」

これではさすがの要も折れるしかなかった。

あゆむに道を示され、ここまでお願いされれば断るのも難しい。

その結果に衣緒奈とあゆむ、静羽は互いに手を取り合って喜び合った。

「あ、そうだ要。ひとつだけ聞いていいかしら」

「なによ」

要はふてくされ、仰向けだった体を衣緒奈から背を向けるように動かした。

「なんでアンタは私を救う為にこんなに頑張ってくれたの?」

「「え?」」

衣緒奈の突然の質問に、あゆむと静羽は声を合わせて驚いた。

「おいおい、お前ら友達なんだろ?だったら当然じゃねえのか?」

冬馬も疑問を投げかける。

「でも最初に私が死んだときはえらくあっさりしてたのよね。でも今回はこんなに必死になってくれた。だからなにか理由があるのかなって思って」

「消えちゃうからよ」

「え?」

要はボソリとそれだけ言うと黙ってしまった。

さすがにそれだけでは皆意味が分からない。

よく見ると要の耳が薄っすらと赤くなっているが、これもなぜなのか分からない。

「えっとですね・・・」

冬馬がちゃんと理由を話してもらおうと要に声をかけようとしたやさき、言いづらそうに草太が口をひらいた。

「霊に取り殺されてしまうとあの世に連れて行かれてしまうんですよ。でも白鳥先輩が死んだときは、浮遊霊として現世に残ってしまってたんですよね?まあつまりは死んでも側にいてくれるから問題ない、という事だと思います」

草太の言葉で皆がようやく理解した。

しかし、普段の要を知るものからすれば意外な事実だった。

要もまた、友人が大切だったということだ。

耳まで赤くしてしまったのがいい証拠だろう。

「要、ありがとね」

衣緒奈はベッドに乗ると、優しく要を抱きしめた。

「と、友達なんだから当然でしょ!それより犬、あんたは後でお仕置きだから」

皆に背を向けながら要が草太に言い放つ。

「ええ!?なんでですか!?」

「勝手にばらした罰よ」

「そんな~!」

そしてして皆その微笑ましい光景に笑うのだった。




二日後、校舎の屋上では冬馬が一人で昼寝をしていた。

今は昼休みなので衣緒奈が口うるさく言ってくるでもないのだが、そこにあゆむの姿はなかった。

「あゆむを取られていい気はしねえけど、静かなのはいいことだな」

あゆむと知り合ってからは一人になることなどなかったが、今日はオカルト研究部の部室で女子達がガールズトークを繰り広げていた。

女子達といってもあまり話さない要を置いて、衣緒奈とあゆむが話しているだけなのだが。

まあそんなこんなで冬馬は久しぶりの一人の時間を満喫していた。

衣緒奈はあの事件の後すぐに体力も回復し、本日より学校に復帰していた。

要から聞いた情報によると、どうやら衣緒奈の生気を吸っていたのは、あの少女の霊一人の仕業だったらしい。

あれから衣緒奈は幽霊達と良識ある?付き合いをしている。

もっとも要の事があるので、霊達が不用意に衣緒奈に近づくこともないみたいだが。

それに今、衣緒奈はあゆむに夢中なのでそれどころでもないらしい。

どうやら今回の件で相当仲が深まったらしい。

「ま、あゆむが白鳥の相手をしてくれたら、俺も少しは楽になるってもんだ。ふあぁ・・・」

そして冬馬はそのまま眠りに落ちていった。

と、意識が眠りへと堕ちていこうとした瞬間。

「冬馬!」

「冬馬くん!」

冬馬は自分を呼ぶ大音量の、両耳から入るステレオの声に叩き起こされた。

「な!なんだ!?」

そこには冬馬を覗き込むあゆむと衣緒奈の姿があった。

「冬馬くん、そんなところで寝てたら風邪ひいてまうで!」

「というかそろそろ授業はじまっちゃうわよ!いつまでも寝てない!」

そういわれながら二人に立たされる。

「別に次の授業はいいだろ?出席日数だって足りてるし」

気怠そうに抗議する冬馬。

「だめよ!」

「あかんで!」

しかしまたステレオで怒られてしまう。

「勉強は学生の本分やんか」

「そうよ!それに出なくていい授業なんてないんだから。ほら、わかったらきりきり歩く!」

そして冬馬はふたりに押されて無理矢理教室につれていかれる。

冬馬は二人が仲良くなったことで、さらに衣緒奈がやっかいになってしまったことを、今更ながら嘆くのだった。





それから冬馬達はいろいろあり、オカルト研究部に入り浸るようになった。

人を避けていた最初の頃を思うとかなり不思議な気持ちになる。

あゆむと一緒に居るようになってから、本当に人との触れ合いが増えた。

過去の事件があるまでは冬馬も友達が多く、みんなの中心に居るような存在だったが、事件からずっと人を避け、友達という存在を作ろうとしなかった。

長い間遠ざけてきた人との触れ合いを、冬馬は過去を振り返るように素直に楽しんでいた。

今日も部室はいつも通り。

楽しそうに二人で話すあゆむと衣緒奈。

静かに本を読む要に、飲み物を入れたりと要の周りを世話する草太。

冬馬は少し離れたところで、自分もよく分からない本に目を通していた。

冬馬の元に再び戻ってきた友達という大切な存在。



しかしそれもまた直ぐに壊されようとしていた。




雑居ビルの影にひっそりと立つ廃屋を集会場として利用している男たち。

その中に、かつて衣緒奈にボロボロにされた少年達が居た。

その少年達のリーダー格だった男がソファーで偉そうに座る一人の男に話しかける。

「そうなんスよ。なんか大鷹の奴いきなりゲロ吐きやがりまして。そこからはサンドバック状態だったんですが、人質にしてた女にやられまして」

「なるほどな。で、その女が大鷹と仲がいいんだな?」

「そいつを人質にする気ですか!?さっきも言いましたけど、俺ら6人でも軽くあしらわれたくらい強い女ですよ?」

それを聞いた、ソファーの男がニヤリと笑う。

「二重の人質だよ。そいつにも友達がいるだろ?それに少しでも大鷹に近い奴がいいんだよ。お前らが言ってたそのサンドバック状態の大鷹をつくるためにはな」

「サウンドバック状態ですか?」

 リーダーの男が不思議そうに聞き返す。

「ああ、俺はそうなる理由の当たりがついている。それがもっとも強くでる場所もな」

「さ、さすがは加治木さん」

「その女はお前らに任せてやる。ただし、度合いを間違えるなよ?」

「それは勿論です。一番の目的は大鷹を血祭りにあげることですし」

彼らの目的は冬馬を倒すこと、そこから得られる名声。

ただ一人、加治木政治は別の目的を持っていた。

「そうだよ。疼くんだよ」

加治木はそう言うと、左目に傷の残る顔を抑えた。

加治木の目的は復讐。

「この傷の代償は払ってもらわねえとなぁ冬馬!お前の思い出のこの場所でよ!」











《予告》

捕らわれの姫達を助けに向かう王子冬馬。しかし王子は敵の罠により身動きを封じられてしまう。罪の十字架により動けない王子に降り注ぐ暴力の雨。そんな王子の運命を変えるべく、二人の幽霊が奔走する。

次回、七の夕月『立待月』




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