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我ら復讐代行部!  作者: やばくない奴
小野田編
8/49

ボイスレコーダー

 昼休みの校舎裏にて、小野田(おのだ)は立ち竦んでいた。その眼前にいるのは彼女の宿敵――相良(さがら)だ。

「金、持ってきたんだろうな?」

「い、いや……お母さんに頼んでも、お金を貰えなくて……」

「だったら親の金を盗んで来いよ!」

 開幕早々、相良の怒号が響き渡る。彼女が小野田を殴り飛ばすや否や、スクールバッグからは小野田の私物が散らばった。その中身には、財布も含まれている。

「持ってないとか言って、嘘ついてるんじゃねぇのか?」

 そんな疑心を口にした相良は、財布を拾い上げた。それから中身を確認し、彼女は三枚の千円札を抜き取る。

「やっぱり、持ってんじゃねぇか!」

 この時、小野田の中で知恵が働いた。証拠を録音するとなれば、「具体的な内容」が記録される方が好都合だ。

「ああ、アタシの三千円が!」

 咄嗟の判断により、彼女はそう叫んだ。その思惑を知らない相良は、こう返してしまう。

「たかが三千円だろ? それくらいでケチケチしやがって。次はもっと持って来いよ?」

――小野田の作戦は成功した。彼女は、相良に「三千円を奪い取ったこと」を言葉に出させたのだ。後は、暴行を認める発言を自然に引き出すだけである。ここで怪しまれれば、小野田の勝算は薄くなる。彼女は痛みに顔を歪ませつつ、誘導を開始する。

「アナタはどうして、そう簡単に人を殴れるの? 普通、殴る方も怖いはずだよ……」

 その声色は、よく演技された「恐怖」を滲ませていた。相良はそれを鼻で笑い、こう切り返す。

「世の中はな、弱肉強食なんだよ。殴った奴が勝つし、殴られるだけの奴が負ける。だからアタイは拳を振りかざすんだ」

 完璧だ。このやり取りが記録に残った時点で、小野田の勝ち筋は濃厚だろう。

「ア、アタシ……もう、帰っても良いかな?」

「どうぞご自由に。ただし、明日も金を貰うからな」

「は……はい……」

 こうして解放された彼女は私物を拾い集め、それをスクールバッグに詰めていった。



 その日の放課後、小野田はペン型のボイスレコーダーを携えて空き教室を訪ねた。

「やり取り、録音してきた」

 この吉報に、復讐代行部の三人は歓喜する。

「これで、必要な証拠が揃ったわけだ。さっそく、音声データを確認してみるよ」

「ヒュー! これで俺たちは、相良に攻撃できるわけだ!」

「やるなら、とことんやらないとね!」

 彼らは皆、乗り気だ。さっそく、宏太(こうた)はボイスレコーダーの再生ボタンを押した。


「金、持ってきたんだろうな?」

「い、いや……お母さんに頼んでも、お金を貰えなくて……」

「だったら親の金を盗んで来いよ!」


「持ってないとか言って、嘘ついてるんじゃねぇのか?」


「やっぱり、持ってんじゃねぇか!」


「ああ、アタシの三千円が!」


「たかが三千円だろ? それくらいでケチケチしやがって。次はもっと持って来いよ?」


「アナタはどうして、そう簡単に人を殴れるの? 普通、殴る方も怖いはずだよ……」


「世の中はな、弱肉強食なんだよ。殴った奴が勝つし、殴られるだけの奴が負ける。だからアタイは拳を振りかざすんだ」


――録音は完璧だ。これだけの材料があれば、相良は確実に黒である。同時に、宏太は小野田の作為も察している。

「しかし、小野田さん。君は上手くやったよ」

「え?」

「記録に残ったらまずい発言を、全部言わせるように誘導しているじゃないか。カツアゲされて、暴行までされているのに、よくもそこまで頭が回ったものだ。大したものだよ」

 彼の趣味は人間観察だ。ゆえにこの男は、人間の些細な立ち振る舞いにも敏感なのだ。


 すでに作戦を考えてあったのか、潤也(じゅんや)は邪悪な笑みを浮かべる。

「一日だ」

「え?」

「一日あれば、相良の風評は地の底だ」

 少なからず、彼自身の見立てでは一日あれば復讐代行を完遂できる。依頼者でありながら恐怖を覚えた小野田は、無言で生唾を呑んだ。

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