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三人

 翌日の昼休み、宏太(こうた)は空き教室に足を運んだ。そこで彼を待っていたのは、一組の男女である。

「よぉ宏太。犯人はわかったのか?」

「今回は、萩田(はぎた)の机に悪口が書かれたんだっけ? 犯人の奴、絶対にとっちめてあげないと!」

 男は藤谷潤也(ふじたにじゅんや)、女は白宮絵里(しろみやえり)と云う。二人は宏太に付き従う――復讐代行部の部員なのだ。さっそく、宏太は得意気に成果を報告する。

「ああ、犯人は石川(いしかわ)だよ。偽の署名活動で筆跡を集めて、それで木下(きのした)先生に筆跡鑑定をしてもらったんだ。文字を極めた専門家なら、筆跡を見分けることもできるからね」

「ヒュー! 流石は宏太さんだ。やっぱり調査をやらせたら、お前の右に出る奴はいねぇな」

「じゃあ次は、計画兼実行役の潤也に、復讐代行を頼むよ」

 そう――彼らの活動の本領は調査ではなく、復讐代行なのだ。さりとて、潤也は簡単に動く男ではない。

「そう急ぐなって。まだ石川を潰す材料が揃ってないだろ。宏太……これからお前には、石川の交友関係を調べてもらうぞ」

「うん、わかった」

「ククク……ゲームの攻略法は、盤面を整えること。この一言に尽きるんだ」

 それが彼の哲学だった。それを是としない絵里は、少しばかり頬を膨らませる。

「潤也! 復讐代行はゲームじゃないって、いつも言ってるでしょ! あーしたちは、あくまでも正義のために……」

「復讐代行に正義もクソもあるかよ。お前、かちかち山を読んでウサギをヒーローだと思ったクチか? 私刑が正義だったことなんて、一度たりともない。だが私刑は、いつの時代も気持ちいいものなんだ。くぅー! ドーパミンが溢れるぅ!」

「はぁ……これじゃ先が思いやられるよぉ」

 結論から言えば、この二人は馬が合わない。それでもなお彼らが同じ部に所属しているのは、それぞれが異なる理由で復讐代行を好んでいるからだろう。

「そういえば、宏太はなんで復讐代行が好きなの? あーし、気になる!」

「僕は、人間観察が好きなんだ。人を知りたい。人を見るのが楽しい。復讐代行は、まさに人を知るのにうってつけなんだよ。加害者のことも、被害者のことも知れるからね」

「あはは! 宏太って、昔っから変わってるよね!」

 何やら宏太と絵里は、過去から付き合いがあるようだ。そんな二人を横目に、潤也は気怠そうに欠伸をする。

「ふああ……そんなことより、さっさと調べ上げちまおうよ。石川の交友関係を」

 この男は二人の関係に興味がない。彼が求めているものはただ一つ、刺激だけなのだ。

「わかってるよ。幸い、僕はペン型ボイスレコーダーを何本か持っている。これから一週間、僕は屋上と教室を盗聴するよ」

「良いね良いね。それでこそ復讐代行部って感じだ」

「もちろん、SNSで校風を調べたりもするよ。それが僕の得意分野だからね」

 調査において、宏太の右に出るものはいない。少なくとも、潤也はそう確信していた。


 それから一週間、宏太は盗聴と調査を続けていった。同時に、彼は石川と交友関係を築いている生徒を、スマートフォンのメモ帳に記録していった。今のところ、調査は順調だ。復讐代行部のグループチャットでは、すでに重要な情報がいくつも共有されている。ある朝の昇降口で、宏太たちは語り合う。

「そろそろ、実行はできそうかい?」

「ああ。これでゲームが始められるよ」

「だから、ゲームじゃないってば!」

 いよいよ、復讐代行部の本領が発揮される時が来る。平静を保っている宏太に反し、潤也と絵里は胸を躍らせている。

「これから一週間かけて、俺は石川を壊す」

「うんうん! 勧善懲悪、勧善懲悪!」

「だから、復讐代行は正義じゃないっての」

 相変わらず相容れない二人だ。宏太はそっと苦笑いを浮かべたが、同時に期待も抱いている。彼は確信しているのだ――潤也なら、必ず成し遂げると。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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