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我ら復讐代行部!  作者: やばくない奴
二人の巨悪編
21/22

再発

 そして現在、十六歳の潤也(じゅんや)は、由依(ゆい)とともに屋上にいる。スリルで人を壊す者と、安全圏で人を壊す者――似ているようで相反している二人が向かい合う中、緊迫した空気が張り詰める。


 ここで話を切り出すのは、由依だ。

「ねぇ。いじめのコツ、教えてくれない? 君は、校内でいじめが起きることを望んでいるんでしょ? その望み、私なら叶えてあげられる」

 無論、これは潤也にとっても旨い話だ。退屈を嫌う二人の巨悪は、ここに来て利害を一致させてしまったのだ。

「……いじめは生存競争の一環だよ。他者を傷つけないと生き残れないという焦りから、集団の中に摩擦が生まれるんだ。まぁ、いじめを娯楽にしているお前にはピンとこない話だろうけどね」

 それが潤也の持論だった。確かに、由依のような特殊な例を除けば、いじめの多くは生存戦略に収束するだろう。しかしそこには、腑に落ちない点もあった。

「どの口が言っているの? 君は私と同類でしょ?」

 彼女がそう言ったのも無理はない。今眼前にいる少年は、復讐代行をゲームとして楽しんでいるような人間だ。そんな男に「いじめを娯楽にしている」と言われれば、反論したくなるのが筋だろう。


 されど、潤也の考えでは、二人は同類などではない。

「違うね。俺はその上位互換だ。ライオンも猫も肉食だけど、同類とは言わないだろ?」

 そう答えた彼は、得意気な顔をしていた。そんな彼に眉をしかめつつも、由依は問う。

「……それで、具体的にはどうやっていじめを誘発したら良い?」

「弱い奴から順に害していきなよ。弱者は駒にしやすいし、それがどんなに矮小なものであっても、共同体における確かな綻びにはなるからね」

 潤也は、いじめの構造をよく理解していた。彼にできることは、復讐代行だけではない。その底知れなさは、由依からしても不気味に見えるものだった。

「ふふ……やっぱり、それが王道かもね」

「誰が恰好の標的か――お前にはそれを嗅ぎ分けることが出来るはずだ。上位互換の俺にはそれがわかる」

「そうね。私は君を、決して退屈させたりしない。また話そう」

 これで一先ず、二大巨悪の会話は幕を閉じた。由依は潤也に背を向け、その場を後にした。屋上から夕焼けを眺めつつ、潤也は笑う。

「面白いゲームになりそうだ」



 翌日から、校内は再び荒れ始めた。ある生徒はトイレの個室にいる時に水を浴びせられ、またある生徒は硬式ボールを幾度となく投げつけられた。復讐代行部を頼れば、事は簡単に終息に向かうだろう。さりとて生徒たちは、師走から釘を刺されたばかりなのだ。そう容易には、宏太たちを頼ることもできないだろう。


 代わりに、彼らは師走(しわす)のもとに押し掛けるようになった。

氷室(ひむろ)さん。俺、いじめに遭っているんです」

衛宮(えみや)に脱がされて、写真を撮られました。それを女子の間に横流しにされています」

「師走。流石に、復讐代行部を頼っても良いか?」

 復讐代行部が過激派組織として見られている今、学生たちの頼みの綱は氷室師走ただ一人だ。しかし、彼には推理力が欠けている。実行力も欠けている。当然、扇動力もせいぜい人並みだ。あの三人組ほどの力を持たない彼からしてみれば、いじめ問題は手に余るものである。それでも、師走は諦めようとはしない。

「見てろ、復讐代行部。ボクは、ボクのやり方で治安を守ってみせる」

 その眼光は、確固たる信念を宿していた。


 それから師走は、徹底的に校内を見張るようになった。彼が注意すれば、その場ではいじめが収まった。しかし、それは持続可能性を秘めた手法ではない。


 注意されるだけで済むのであれば、何度でも再犯できる――それが復讐代行部による制裁に麻痺した者たちの総意なのだ。


 次第に、生徒たちは気づき始めた。

「師走に頼っても、意味ないじゃん」

 彼らの関心は、再び復讐代行部に向けられることとなる。

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