表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我ら復讐代行部!  作者: やばくない奴
二人の巨悪編
20/30

汚染

 その中学校には、御陵中也(みささぎちゅうや)と云う少年がいた。彼は潤也(じゅんや)をいじめていた集団の主犯格で、極めて攻撃的な性格をしていた。当然ながら、そんな不良少年が追い詰めていた相手は、潤也一人だけではない。彼は多くの弱者をいたぶってきた身の上であり、それゆえに報いを受けることとなるのだ。


 ある日、潤也は中也の被害者たちを空き教室に集めた。室内がどよめく中、彼はそれを遮るように話を切り出す。

「これより、御陵中也に鉄槌を下すための会議を始める。……とは言っても、作戦は俺がすでに考えておいたんだけどな」

 復讐――それは被害者たちが何度も夢見てきたことだ。結論から言えば、潤也に集められるまで、彼らは一切の抵抗をしなかった。彼らはただ、脳内で中也を殺す妄想に励んできただけなのだ。

「教えてくれ、その作戦」

「俺も俺も!」

「アイツだけは、絶対に許せねぇよ!」

 この瞬間、彼らの心は一つに束ねられていた。潤也は薄気味悪く口元を綻ばせ、手口を説明し始める。

「お前らは、サジェスト汚染って知ってるか? 不特定多数が同じ文字列の組み合わせをネットに投稿すると、検索エンジンに影響が出るんだ。例えば大勢が『愛知 治安が悪い』と書き込んだり検索すると、検索ボックスに愛知と打つだけで『治安が悪い』という検索候補が出てくるってことだな」

――ここまでは、あくまでもサジェスト汚染という概念そのものの説明だ。次に、彼は匿名化の手段を説明し始める。

「次に匿名化の概念の説明なんだが、ネットへのアクセスは基本的に痕跡が残る。その痕跡を濁すのに使われるのが、VPNと匿名ブラウザだ。ただ、普通のVPNでは記録を開示される恐れがある。だから俺のオススメは、ノーログポリシーのVPNだな」

 ノーログポリシーのVPNと、匿名ブラウザ――これらは、実際にネット犯罪で多用されているツールである。無論、潤也は雑学を披露するために被害者を集めたわけではない。


――本題はここからだ。


 潤也は指示を述べていく。

「ノーログポリシ―のVPNと匿名ブラウザを使って、お前らは『御陵中也 発達障害』という文字列を投稿し続けろ。botを使えばなお良いだろう」

「後は、『御陵中也 発達障害』で検索し続けることも怠るな。実際に検索をかけないと、サジェスト汚染の効き目は弱いからな。探せば、サジェスト汚染を引き起こすためのツールなんていくらでもある」

「法的なリスクについては案ずるな。俺たちはまだ中学生で、少年法に守られている。ましてや名誉棄損は親告罪であり、俺たちによる犯行であることが中也自身にバレなければ無問題だ」

 これが作戦の全貌である。この当時、被害者たちは追い込まれていたこともあり、潤也に加担することを選んでしまう。

「オレ、やってみる!」

「俺も俺も!」

「アイツの風評を壊してやろうぜ!」

 満場一致だった。彼らのうち、全員が焚きつけられていた。


 その日を境に、複数のbotアカウントが「御陵中也 発達障害」と投稿し続けるようになった。並行して、被害者同盟は一丸となってその文字列を検索し続けた。そして当然のごとく、彼らは潤也から勧められたツールを乱用した。結果、検索ボックスに「御陵中也」と打つだけで「発達障害」というサジェストが出やすくなってしまった。


 当然、このサジェストに関する噂はすぐに広まった。

「中也。お前、障害あるんだってな!」

「なんで普通校に来てんだよ、迷惑なんだよ!」

「ケーキは三等分にできるのか?」

「自分のIQ知ってそう」

「そういう検査の必要性を迫られてるわけだもんな!」

 生徒たちは、寄って集って中也をいじめるようになった。そんな日々が続いたのちに、中也は登校拒否を繰り返すようになった。


 これが、藤谷潤也(ふじたにじゅんや)という男の、初めての成功体験である。

「やっぱり、誰かを壊すのって最高にスリルのあるゲームだね」

 そんな確信を得た潤也は、極めて邪悪な笑みを浮かべた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ