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我ら復讐代行部!  作者: やばくない奴
小野田編
10/24

公開処刑

 その日の昼休み――相良(さがら)は更に追い詰められることとなる。突如、教室に備えられたスピーカーが起動し、そして淡々と音声を放送する。

「金、持ってきたんだろうな?」

「い、いや……お母さんに頼んでも、お金を貰えなくて……」

「だったら親の金を盗んで来いよ!」

 そう――これは小野田(おのだ)が録音した音声だ。同級生たちがどよめく中、相良は冷や汗をかいている。その後ろの席では、小野田本人も絶句している様子だ。しかし放送は止まらない。

「持ってないとか言って、嘘ついてるんじゃねぇのか?」

 この時点で、相良による恐喝は全校生徒に知れ渡ってしまった。宏太(こうた)が唖然とする隣では、絵里(えり)が右手でピースサインを象っている。


 この時、職員室では教員が動き始めていた。

「早く、放送を止めないと!」

 放送部の顧問は、急ぎ足で飛び出す。放送委員会による公開処刑は、まだ続行されている。

「やっぱり、持ってんじゃねぇか!」

「ああ、アタシの三千円が!」

「たかが三千円だろ? それくらいでケチケチしやがって。次はもっと持って来いよ?」

 これで少なくとも、相良が三千円を強奪したことも知れ渡った。職員室は依然として騒然としており、教師たちは狼狽している有り様だ。


 一方、教室では相良が激昂している。

「止めろ! おい! 誰か、放送を止めろ!」

 無論、そんな声は誰にも響かない。

「黙れヤリマン。これがお前への報いだよ」

「そうだ、そうだ!」

「小野田に謝れよ! 変態クソアマ!」

 もはや校内では、彼女の印象が「横暴な痴女」として根付いてしまったようだ。相良は歯を食いしばったが、その目元からは抑えきれない涙が零れていた。

「アナタはどうして、そう簡単に人を殴れるの? 普通、殴る方も怖いはずだよ……」

「世の中はな、弱肉強食なんだよ。殴った奴が勝つし、殴られるだけの奴が負ける。だからアタイは拳を振りかざすんだ」

――これで、録音データは全て放送された。生徒たちは相良を囲い込み、次々と罵声を浴びせていく。

「泣けば許されると思うなよ? 濡らすのは股だけにしろ!」

「金も返してやれよ! 利息もつけてな!」

「現実ではカツアゲ、ネットではエロ売りか! どうしようもない奴だな、あんた!」

 言の葉の一つ一つが、鋭利な刃と化していた。相良はその場で崩れ落ち、慟哭し始める。

「違う! アタイは、裏アカなんて持ってないのに! カツアゲも、暴力も認めるよ! でも、あのアカウントのことだけは、本当に何も知らないよ!」

 その最中、事の発端となる被害者である小野田は、名状しがたい胸糞の悪さを噛みしめていた。無論、師走(しわす)も焦りを見せている。

「皆! もういい、もうやめろ! これ以上、女子を泣かせるな!」

 彼はそう言ったが、同級生はまるで聞き耳を持たない。

「お? ヤリモクか? 優しくしたら抱けそうだもんなぁ!」

「あんなクズを庇う理由は、ウチらにはないんだよ!」

「本っ当に気持ち悪いよね! ネットにあんな写真を上げて、知らない男にチヤホヤされて!」

 結局のところ、彼らは相良を責めることができれば、それで良いと思っているのだ。地獄絵図を目の前にして、絵里は屈託のない笑みを浮かべる。

「ねぇねぇ、宏太。あの録音データ、あーしが放送委員に渡したんだよ」

「よくやった、絵里。それでこそ、僕たちは復讐代行部だ」

「へへーん! 正義が勝つ盤面を作る時は、いつでもあーしを頼ってね!」

 相も変わらず、彼女の正義感は壊れている。眼前で繰り広げられる私刑の押収を、公開処刑を――彼女は正当だと信じてやまない。


 昼休みの後、学級会が開かれた。生徒たちは、自らが相良から受けた被害を次々と提示していった。当然、この学級会において、相良に勝ち筋など残されていない。


 その日、相良の停学処分が決まった。

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