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赤火鳥のクオン  作者: ゆりたこっぺ


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⑤虎王パラングの断末魔

前回の続きです。

「申し訳ございません……''虎王''パラングと名乗っていた魔物の狙いは、アル王の遺体でした……!」


クオンに向かってサヴァールは謝り続けます。


「アル王の墓地には、アル王100年記念展覧会開催もあったので腕のたつ者達を警備に回していたのですが、殺されていました……」



魔物がいるかどうか、譜面式が秘密裏に展開されているかは譜面式ではわかりますが、秘密裏に人殺しが行われているかどうかは、今の譜面式で拾い上げることははできません。


(譜面式に反応がなかったのは、人間が絡んでいたからか……)


クオンはそんなことを考えながら、自分たちの失態に、イリアと顔を見合せてしまいました。



「今までのアル王の遺品を盗んでいたのも、きっとあの魔物です!

そうだ、きっとドル派の奴らと協力して……!


今回アル王の墓地の警護にあたっていた者たちを殺したのだって、あの魔物に我らが注視している間に、ドル派のやつらが……」


怒りに震えるサヴァールに、クオンが言いました。


「それらの調査はそちらに任せる。


……サヴァール、本当に申し訳ない。


俺も魔物の狙いがアル王最高傑作プートル人形三体だと思い込んでしまった。それほどの価値があるものだからな」


クオンは先ほどの手紙の内容を反芻していました。



『 アル王の遺体は預かったよぅ。返してほしければ、赤火鳥のクオン1人で指定の場所に来ぃ』


「見え見えの罠だが、俺はパラングとかいう魔物が指定した場所に行ってみようと思う。俺一人なら、被害は最小限だしな」


クオンのその言葉を聞いたイリアは焦ります。


「クオン……それは危険です!


明らかに罠ですし、あなたの実力を信じていないわけではありませんが、万が一アル王の遺体を取り返せなかったら……」



「アル王の遺体は取り返す。」


クオンは有無を言わさずはっきり言いきりました。

あまりの断言っぷりに、その場にいる全員が何も言えなくなりました。


「だが俺はあまり強くない聖剣使いだからな。大口叩いといてなんだが、この場にいる譜面式が使える者にお願いがある。


自分が一番強いと思う譜面式を俺に貸してくれないか。


あの魔物は、あまり最近の譜面式をわかっていなさそうだった。」


たしかに''虎王''パラングは譜面式のナチュラル(防御)の今の強度に驚いていました。


クオンはそこに勝機を見出したのです。


「でしたらクオン、とっておきのナチュラル(防御)を渡しますね!」


「ありがとうイリア」


イリアがクオンに譜面式を渡すと、他の者もサヴァールを始め次々と自分のとっておきの譜面式を渡していきました。


今ここにいるのはアル派の者たちで、一刻でも早く''アル王の墓を暴かれ魔物に遺体を盗られた''という失態をなんとかしたいのです。


クオンに協力しました。


しかし、クオン自身が言った通り、クオンの聖剣使いの実績に不安を覚える者もいます。


「本当にあの赤火鳥に全て任せていいのか?」


「あいつよりも今の聖剣騎士団の人間の方が、譜面式のおかげで強くなってるんじゃないかって話だぞ」


「ここは素直に聖剣騎士団の到着を待った方が……」


不安を小声でいう者たちの元に、赤い小さな鳥がクオンの元に来ました。


「お。俺がしくじったら''翠雷猫(すいらいびょう)''レーヤが尻拭いをしてくれるそうだ。これで安心だな」


この赤い鳥はクオンに力を貸す妖精の力の一部で、伝達に使っていました。

クオンの指に赤い鳥がとまると、役目を終えたので、そのまま消えてしまいます。


「サヴァール!先ほど聖剣騎士団のレーヤ様が到着しました!」


「……クオン様、もしかして聖剣騎士団の大御所に連絡してくれてたんですか?!」


驚くサヴァールに、クオンは苦笑いしました。


「保険は多い方がいいからな」


アルの遺体紛失がわかった時に、クオンは赤い鳥を使ってレーヤへ伝達をしていました。


その時赤い鳥越しにクオンはレーヤに若干怒られましたが、レーヤにはこう言われました。


『わかった。俺の出番はないだろうが引き受けよう。


ちょうど古代術式についてお前に聞きたいことがあったから、それが終わったら俺に付き合ってもらうからな。』


(古代術式かぁ……そろそろ''音階''を隠し通すのも難しいかもな……)

(だめ。それ約束違う)


クオンが弱気なことを考えていると、内なる妖精がクオンにだけ聞こえる声で、怒り始めました。


(ああ、そうだったな約束したもんな。

約束は守るから、虎王とかいう魔物を倒す時、力の最大出力の許可がほしいんだが。)

(わかった)


クオンに力を与える内なる妖精の許可を得たことで、少しだけクオンは安心しました。


クオンはレーヤの到着を目視で確認した後、イリアとサヴァールにクオンは言いました。


「じゃ、行ってくる」



クオンを見送った後、イリアは思いました。

(どうか、クオンが無事に戻ってきますように……)


この時、イリアは自分たちがドル派の刺客に囲まれていることに気づきません。






場所は変わり。

パラングは今、とある宮殿跡にいました。


「ねーぇ、アル王、今どんな気持ちか教えてょ!」



この場所は昔、ドル王の先王がよく出入りしていた宮殿でしたが、先王没後、ドル王がこの宮殿を破壊してしまったために、宮殿跡と分かる人は今はもうほぼいません。


ただ一人、クオンを除いては。


「あれぇ?黙ってるだけじゃ分かんないってばぁ!

あぁでもそんなアル王も素敵だねぇ」


どうやらパラングは誰かと話しているようです。

クオンはパラングに気づかれないようにナチュラル(防御)の譜面式を隠蔽に変換して近づいていきます。


「大丈夫だょ!これからは君の理解者はこの僕パラングだからねぇ」


クオンはかなりの距離でパラングに近づいた後に、今目の前で起きていることが信じられませんでした。


そこには、アルに見た目は似てるけど全然知らない誰かがいたのです。



(誰だあの人……?)



全然知らない人も何が起きてるか分からず、透けた状態でただただ混乱し立っているだけでした。



(まさか……遺体を媒介に、アルの魂をこの世に呼び出そうとしたのか!?)


クオンは動揺しながらも、奇襲を仕掛けました。


「わゎ!!なんだぁ!?」


自分で''虎王''と言っただけあり、パラングは素早くクオンの奇襲を避けました。


しかしそれはクオンの予想の範囲内で、クオンの狙いはアルの遺体奪還でした。

すぐさまアルの遺体のところにたどり着き、遺体を丁重に動かそうとすると、なんと譜面式で封じられていました。


「っ……!」


クオンは思わず唇を噛みます。


「あはははぁ!残念。赤火鳥は譜面式苦手だから解除も出来ないでしょ。

そんな君にスペシャルゲストぅ!」


パラングは嬉しそうにクオンを見て、わざとらしくアルじゃない人を指さし言いました。


「英雄王アル王だょ!譜面式ってすごいよね〜死者の魂も呼び寄せられるんだから」


パラングにわざとらしい紹介をされた、アルじゃない知らない人は、アル自身の遺体近くに立っていました。



対するパラングは一方的に話しました。


「さっきからアル王の遺品を使って色々話してるんだけどさぁ、なーんにも答えてくれないのぅ」


(そりゃそうだ……アルじゃないもの……)


クオンは時間稼ぎにちょうど良いため、聞くふりをしました。


(譜面式で、解除に使えそうなものはいくつかあるな……1個づつ試していると時間が無い……同時並行でいくか……)


パラングは譜面式に疎い魔物と分析していましたが、魂を現世に呼び戻すという譜面式を使っているので、そうとは限らなくなりました。


譜面式を解除しようとしているのがバレないよう警戒しながら、クオンは話を振ります。


「虎王とか言ったか。お前は何者なんだ?」


クオンが質問すると、パラングは大袈裟な声色で返します。


「僕はねぇ、アル王のファンだよ!アル王が生きてた時代から僕はいたんだけど、その時は興味なかったんだよねぇ。

君みたいな格下の聖剣使いを連れてる王だったしね。


だけど、最近になって彼の逸話や遺品を見る機会があってさぁ。

特に、''狼王''を倒したとされる剣!


これすごいよねぇ、あの時代で幾つもの譜面式を刻んでるんだもの!

そりゃ魔物と相討ちに持っていけるよぅ!!」


そうしてパラングはアルの遺品の剣を、ベタベタと触りました。

その遠慮のなさにブチ切れそうになりましたが、クオンは質問を続けます。


「お前の目的はなんだ?」


「ははーぁ。僕の目的は、アル王の一番の理解者になること。

僕は魔物だからね!時間はたっぷりある!


こうしてアル王の魂を呼び出せたし、今はまだ談笑できてないけど、いつかは彼を僕の物にできる!!


だからね、そのためには赤火鳥、お前は邪魔なんだよ」


(こいつ、アルじゃない人を呼び出したことに気づいてないのか?


それとも自分が全然知らない人を呼び出してしまった事実を受けとめたくないのか……)



クオンがそんなことを考えている中、パラングは四角い形をした譜面式を取りだし、割りました。

すると今までにはなかった魔物の群れが突然現れました。

魔物の群れは、アルの遺体のそばにいたクオンを引き離しました。



アルの遺体にすぐ駆けつけたいクオンを邪魔するかのように、魔物は次から次へと襲いかかって来ます。



クオンはフラット(捕縛)とシャープ(攻撃)を使い、一気に魔物達を一掃します。


クオンが魔物の一掃を終える頃には、パラングがまた四角い形をした譜面式を取りだし、割りました。

また魔物の大群が出てきます。



クオンは力任せに作り出した炎の大剣で、魔物の群れとパラングに斬りかかります。


クオンが作り出した炎の大剣は、魔物の群れを一気に狩りましたが、パラングは少しかすった程度でした。

思ったよりも力があったクオンを警戒しつつも、パラングは煽ります。


「ははぁ!アル王の前だから頑張るねぇ赤火鳥!」

「いや……その人アルじゃないぞ……」

「えぇ?嘘だぁ!」


「嘘じゃないっぺ……さっきからおら、アル王じゃないって言ってんだァ……」


アルじゃない全然知らない人も、言いにくそうにパラングに話しました。


クオンは距離をつめ、パラングに斬りかかります。

今度は片腕ごと切り落としました。


「予想通りの動きだねーぇ。」


冷静なパラングに、クオンは詰め寄ります。


アルではない全然知らない人は透けた状態で、自分がどうしたらいいかわからないため、ただクオンの話を聞いていました。


「……そういえばさっきお前はアルのファンだとか言ってたな。」


ゆっくりと近づくクオンに、パラングは圧倒的質量ある虎を具現化させ、ぶつけます。



「お前は知らないだろう。アルの遺品が見つかりにくいのは、アル自身しまい忘れてしまって、場所がわからなくなってしまったからだということを」


アルとの思い出を思い出しながら、クオンは虎とはやり合わず、一直線へパラングの元に向かっていきます。


「あと、プートル人形をかっこいい人形として作ったのに、魔除けの人形として勘違いされたことに少しだけ拗ねてることも」


途中後ろから虎に攻撃され、凄まじい衝撃とともに壁に叩きつけられました。

しかしクオンはナチュラル(防御)を張っていて、ものともせず、煽るように語り続けます。

クオンの言葉にパラングは固まります。


「お前はファンと名乗るのもおこがましい。アルのことを知らなさすぎる。」


そしてクオンは、手にした聖剣に力を込めます。


「虎王、お前はここで死ね」

「へーぇ?赤火鳥、君は僕の予想通りの動きをしてるけどぉ?」


そういうとパラングはクオンから受けた傷をすぐに修復してみせました。


クオンは次の一撃でパラングにとどめを刺すために、内なる妖精にだけ聞こえるよう、声をかけます。


(あの魔物は俺の弟の遺体、遺品を傷つけた。

約束通り、最大出力の力を貸せ)

(……やだ。今は無理。)

(はぁ……?!お前、ふざけるなよ!)



クオンの強みは魔物による強さの誤認でした。

普段妖精から力を多くもらってない分、ここぞという時に力をもらい、強さを誤認した魔物を狩るという手法です。


ここに来て、まさかの妖精の助力がなしになりました。



クオンは行く場をなくしてしまった聖剣の力の源を、妖精の力ではなく咄嗟に譜面式に変え、パラングに斬りかかりましたが、クオンは隙をつかれ一撃くらいました。


「くっ……」


仕方なしに聖剣の矛先を虎へと変えて、なんとか虎を始末にします。


「おやぁ?どうした赤火鳥?妖精にいじわるでもされたかぃ?」


パラングは、お返しとばかりにクオンに一斉攻撃をします。

クオンはナチュラル(防御)を構築します。

先ほどとは打って変わって、防戦一方になってしまいました。


(くそ……今まで土壇場になって力を貸さないなんてことなかったのに……突然妖精の気まぐれが発生したか?!

そうだ、妖精はそういうやつだった……)


スバンは、アルじゃない全然知らない人に話しかけます。


「アル王、今から君の聖剣使い赤火鳥を殺すからちゃんと見ててねぇ!」

「だから、おらアル王じゃないってぇ!」


パラングはその言葉を無視し、さらにクオンへの攻撃を強めます。


対するクオンは妖精の裏切りに苛立ちながらも、師匠の教えを思い出していました。


『 クオン、妖精とは絶対厳守の約束を一つだけしておけよ。

そしてそれだけは信じてやれ』


(絶対厳守の約束……か。少しくずれそうだが、信じるか)


気が少し紛れたクオンは、戦法を変えます。


「なぁ虎王、お前は未だにこんな古い形態のシャープ(攻撃)を使ってるのか?最新式の譜面式を使っていると思ってたんだがな」


パラングを話術で翻弄しようと考えたのです。


「今の主流はフラット(捕縛)だぞ?


もしかして、魂を呼び出す譜面式とやらは、どこかから盗んできたのか?」


クオンの言葉に、にやけ顔だったパラングの顔はひきつり始めます。


(よし、こいつの譜面式入手経路も特定できた……仕上げといくか)


アルの遺体にかけられていた譜面式解除と入手経路解析も終わり、クオンは構築していたナチュラル(防御)をフラット(捕縛)へと変換していきます。


「遅れてるな、虎王。

どんな強者でも時代にあった戦いをしなければ、弱者になる。」


そしてクオンの言葉と同時に、変換したフラット(捕縛)をパラングへと向かわせます。

突然いくつもの鎖状の式に拘束されたパラングは、あわててナチュラル(防御)やシャープ(攻撃)をぶつけますが、クオンのフラット(捕縛)はびくともしません。

自身の最大出力の虎の化身をも出現させますが、それらはフラット(捕縛)へと変換され、さらに強固にパラングを縛ります。



「な、な、なぁ?!こんな、こんなの嘘だぁ!


だって赤火鳥は聖剣使いとしての力も弱くて、

譜面式も苦手で、

人間や他の聖剣使いの力を借りないと大物の魔物は倒せなくて……」


「そうだな。俺一人の力じゃお前を倒せなかった」


パラングが驚くのを見ながらクオンは、聖剣使いになったばかりの時に、師匠に言われた言葉を思い出していました。


『 クオン、お前は自分一人の力で戦おうとするな。たくさんの人の力を借りて戦え。』


クオンは聖剣使いになった時、妖精に少しの力しかもらえませんでした。


だからこそ必然的に、


他人に教えを乞い、

学び、実践し、吸収して、

そして多くの者と連携していく手法をとるしかなかったのです。


結果、妖精の力に頼らなくても戦える手札を何通りも持てるようになったのです。


譜面式がいい例でした。

クオンはたしかに譜面式は苦手ですが100年以上、学び続けることをやめたことはありません。


そして、ひたむきに努力し続ける者には、力を貸してくれる者も自ずと現れます。


今までや今日、クオンに譜面式を貸してくれた人達の力のおかげで、アルの遺体にかけられた譜面式も解除できたのです。


とはいえ、譜面式や使い方をいくら渡されたところで、知識がなければ、使えなければ意味がありません。


自分が「こうしたい」と思った通りに使えたのは、クオンが今まで譜面式を学び続けたおかげでした。


「嘘だぁ……僕が……虎王の僕がぁ……」


泣き言をいうパラングを他所に、クオンが譜面式を手のひらで握りしめると、パラングの体を一気に破壊していきます。


「もう少しだけ待っていてくれ。必ずお前は元の場所へと返す。」


無惨に破壊されていくパラングを見ずに、クオンは透けた状態のアルじゃない全然知らない人に話しかけます。


「あ、ありがとなぁ!」


クオンにお礼をいうアルじゃない全然知らない人を見たパラングは、自分の状況を打開すべく、悪あがきをします。


「ま、待ってくれ!赤火鳥!


君のお父さんが殺された理由を知りたくないかい?!

君のお父さんが殺された理由はね、譜面式よりも凶悪な式を」


パラングが言い終わる前に、勢いをなくしていた妖精の力が急に増して、パラングの体を燃やし始めました。


「ぎゃああああ?!」


パラングは何が起こったかわからないまま、自分が死んでいくことだけは感じていました。



(あと5秒後に譜面式で虎王を完全に粉々にするつもりだったのに。

美味しいところを持っていくな、俺の内なる妖精は)

(だってこの魔物、''音階''のこと知ってそう!それだめ、絶対に!)


予想していなかった妖精の横槍に驚きつつも、クオンは妖精の力を存分に使うことを決め、パラングに告げます。



「今度こそ死んでくれ、虎王」

『 燃え尽きろ!!!』


クオンの内なる妖精が、大きな赤い鳥の姿となり表に出てきたかと思ったら、パラングを飲み込み最大出力の業火の炎で焼き尽くします。


パラングは、クオンに力を貸す妖精がなぜ急に怒りだしたか、よくわかりませんでした。

ただ1つ言えること。


「なんなんだ……お前はなんなんだ!赤火鳥のクオン!!」


そう言った後、最後はクオンと妖精が作り出した炎の聖剣で一直線に斬られてしまいました。


凄まじい断末魔を上げながら、''虎王''パラングはこの世から完全に消え去ったのです。

狩りは終わりました。


クオンはそれを確認すると、アルの遺体のそばに駆け寄ります。

すると、内なる妖精が言いました。


(クオン、オレとの約束、''音階''は今も昔も俺とお前だけのもの!絶対厳守の約束!)

(あぁ……そうだな、今は。心配しなくても虎王は''音階''のことは知らなかったようだ。


譜面式以外の式があったことは最近知ったようだけど。)


こっそり''音階''を使って、虎王の譜面式の入手経緯をたどった結果を内なる妖精に伝えると、安心したのか何も言わなくなりました。


「……アル、すまない。

遺品と遺体を、少し動かすぞ。」


クオンはアルに断りを入れてから、


アルの遺品を丁寧に1箇所へ集め、そしてアルの遺体を丁寧に自分の隣におきました。


クオンは、アルの遺体はともかく、自分一人だけで遺品全てを持ち帰るのは厳しいと考えました。


なので、赤い小さな鳥を出現させ、空へと放ち、待機しているレーヤやイリヤの元に応援を要請しました。


そしてクオンは、透けた状態のアルじゃない全然知らない人に再度声をかけます。



「あなたの魂を縛り付けていた譜面式は解除したから、じきに元いたあの世へと戻れるだろう。


こんなことに巻き込まれて、災難だったな」


「いんやぁ、あんたが助けてくれたからよかったよぉ!

それにしても、アル王とともにいた赤い鳥ってあんただったんだなぁ!」


「え?」


「おらが生きてたのはアル王が死んで他国との戦争が終わった後なんだけどよ、村のじーさんばーさん達がこっそり言ってたんよ。

国のお偉いさん達は存在抹消しちまったけど、アル王の傍には赤い鳥がいたって。


その鳥は、スーガン国から何度も魔物を追い払ってくれたってなぁ」


「ははは……そうか。」



クオンが返答した頃には、アルじゃない全然知らない人はもうあの世に帰ったようで、姿は見えなくなっていました。


「……」


クオンは、ゆっくりと周りを見ました。

今、クオンのそばにある遺体は、


仇の子なのに憎みきれず、

最期の時はそばにいてあげられなかった、

血の繋がらない義弟、アル王の遺体です。


クオンはアルとの最後に交わした別れ際の言葉を思い出していました。


『 それではまた会おう、兄弟』


兄弟の契りとして傷をつけた自分の手を、クオンはじっと見つめました。


「また会おう、か……」


クオンは数分間、噛みしめるように、自分の手のひらの傷を見つめていました。


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