③クオンとアル
完全にアルのターンです。
色々設定がありますが、とりあえずアルの残したものをクオンは大事にしているんだなーと思ってくれれば。
あるところに、クオンという聖剣使いがいました。
今は、たまたま立ち寄った公園で、とある親子が話している内容を聞いています。
「いいか?坊や。
譜面式はシャープ(攻撃)、
フラット(捕縛)、
ナチュラル(防御)の3つで構成されている。
この3つを均等に使った譜面式が、この公園の街灯の灯部分でもある''ユルディアン''なんだ」
「そーなの?」
「フラット(捕縛)を使って光を丸形の中に閉じ込め形状維持、
シャープ(攻撃)で光を常時稼働、
ナチュラル(防御)を使って形状加工と光の保護の術式をかけて成り立っている」
「へぇえ!譜面式って、身近なものにも使われてるんだね」
「そうだぞ。だから、譜面式の勉強頑張ろうな」
「うん!」
公園の親子の会話を聞きながら、クオンは''ユルディアン''を見つめました。
丸型の中で光は七色に輝き、昼間の公園の中に街灯として静かに存在します。
(昔と変わらず、綺麗な術式だな……)
クオンは心の中でそう思いました。
実はこの''ユルディアン''は、クオンの父王が作った譜面式でした。
父王暗殺後に、ドル王によってこの術式すらも消失危機だったところを、先王が作った譜面式とは知らずに、ドル王の息子アルが保護したのです。
『綺麗だなぁ、クオン。
これは譜面式''ユルディアン''
この術式を作った人物の名は分からなかったが、名称だけは分かったんだ。
私はこの''ユルディアン''を後世まで残したいのだ』
クオンがこの術式を最初に見たのは、まだ人間だった頃、父の膝の上で見ました。
次に見たのは、聖剣使いとなった頃で、アルの隣です。
当時は、仇の息子が父の残した術式を使うとは許せない、という気持ちももちろんありました。
しかし同時にアルが再現してみせた''ユルディアン''は父が作った物そっくりで、その変わらぬ美しさに何も言えなくなってしまったのでした。
『 王室のゴミ置き場にこの術式が破損した状態であったのを、小さい頃私が見つけたんだ。
父に拾ってもいいかといったら、自分で考えろと言われたのでこうして復元した。
譜面式が嫌いな私の父は反対するだろうが、私はこの美しさを多くの人に見てほしい。
クオン、力を貸しててくれないだろうか』
まっすぐな瞳でクオンを見たアルに、クオンはその時言ったのでした。
『 まったく……しょうがない弟分だな』
この後ドル王に見つかり、アルが斬りかかりそうになったところをクオンが割って入り、
背中を縦一閃斬られたことはよく覚えています。
聖剣使いは人間を殺せません。
人間から受けた傷は残ります。
逆にいえば、かなり達人の人間であれば聖剣使いを殺せます。
クオンには今もドル王によってつけられた背中の時の傷が、残っています。
話は戻り、ドル王とクオンの激しい剣撃の末、クオンとアルは追放を命じられ、一時的に二人旅をしました。
二人が追放されたにも関わらず故郷のスーガン国に帰ってこれたのは、ドル王が魔物によって討たれたからですが、それはまた別の話。
クオンとアルの二人旅の時に、出会った人々にこの''ユルディアン''を伝え、各地に伝わっていき、今ではこうして譜面式の基礎的な術式になったのでした。
(この術式があったから、俺は譜面式が好きになったし、
今でも譜面式の勉強を続ける上での支えになっている)
『 ほら、綺麗だろう ×××』
クオンは父に初めて譜面式を、
"ユルディアン''を見たことを、
本当の名前を呼ばれていたことを、
今でもはっきり覚えています。
『綺麗だなぁ、クオン。』
同時に、アルが見せてくれた''ユルディアン''の思い出も思い出すのです。
"ユルディアン''を使うアルを通して、クオンの父王を幻視することを当時は苦悩しましたが、今では優しい気持ちで''ユルディアン''を見ることができます。
時間はかかりましたが、クオンは最近になってやっと、
アルからの想い、
クオンからアルへの想いを、
受けとめ受け入れられるようになったのです。
(ありがとう、アル。
"ユルディアン''を残してくれて。)
"ユルディアン''を使った街灯を見つめながら、クオンはそう思いました。
「あ、クオン。
こんなところにいたんですね。
剣術の稽古お願いします!」
「ああ、今行くよ、イリア。」
クオンはそういって妻のイリアの所へと走り出しました。
"ユルディアン''は今日も街灯の灯部分として、キラキラと七色に輝いています。
クオンの本当の名は考えてはいますが、作中で明かされることはないです。




