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赤火鳥のクオン  作者: ゆりたこっぺ


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1/9

①赤火鳥(せっかちょう)のクオン

ファンタジーなお話です。


色々設定がありますが、ひとまずは

全てを知った上で仇討ちを決意したのに揺らぐクオンと、その仇の子のアルの関係性を覚えてれば大丈夫です。

むかしむかし、あるところにスーガン国という国があり、そこには王子様がいました。


しかし王子が10歳になった時、王である父を将軍に殺されてしまいました。

王は殺される前に言いました。


「我が息子を頼む、ハヅキ殿」


王子はそのまま父の古馴染みの''聖剣使い''のハヅキに助けられました。


聖剣使いは、妖精と契約し魔物を狩る力を手に入れたもの達のことです。


妖精と共に作った聖剣を媒介に、

氷の剣を嵐のように降らせ狩ったり、

時には大きな光を放ち狩ったり、

風で大勢の兵士を作り狩ったりと、


永き時を生き、その身が壊れるまで、魔物を狩り続ける宿命を背負っていました。


王子はハヅキと共に国を去った後、旅をしました。


黒髪のハヅキは王子の師匠となり、剣技や兵法、妖精達のことなど、たくさん教えてくれました。


そしていつも言いました。

「父親の仇をとろうとなんて考えるな」と。


王子は18になった頃、スーガン国に帰り父の仇を討ち、王になると聖剣使いに言いました。

王子は背が伸び長身で、茶髪は肩まである長さになっていました。


しかしハヅキは言いました。

父王のことも王子のことも、初めからいなかったかのように国民は教育されていると。

今は父王を殺した将軍が王で、帰れば危険だし王になるのは難しいと言われました。


またスーガン国は今、魔物が大量襲来し危ないと言われました。


ならばと王子は聖剣使いになることを決めました。


「魔物を狩れば、国民から英雄として認めてもらえる。

俺の武勇を持って国民の支持を得て、現王のドルとその息子を追い出すのだ」


ハヅキの反対を押しきり、妖精と契約して王子は聖剣使いとなりました。

そして自分の本当の名前を捨て、

「クオン」と名乗りスーガン国に帰ろうとしました。


しかしクオンが契約した妖精はいじわるでした。


クオンに与えた力は、


小さな火の鳥を飛ばせること、

妖精の能力の炎は聖剣にまとわせる程度しか出せない、


といったものでした。


聖剣使いの通り名は内なる妖精がつけるのですが、妖精はクオンに「赤火鳥(せっかちょう)」という通り名をつけられました。


怒るクオンをハヅキはなだめながら、半ば無理やりハヅキが作った聖剣騎士団に入団させました。

聖剣使いとしては力が弱いクオンは、聖剣騎士団の聖剣使いに馬鹿にされながらも10年かけ、力の使い方を学びました。


聖剣騎士団を退団したクオンは、スーガン国に帰る途中、魔物に襲われている一団に出会いました。

一団と協力しながらクオンは魔物を倒しました。


「助かった。私はスーガン国 ドル王の息子、アルだ。そなたは?」


「俺は聖剣使い、赤火鳥のクオン。

スーガン国が多くの魔物に襲われていると知って狩りに来た。アル王子よ、力を貸していただけないだろうか。」


クオンは仇の息子を目の前にし、内心は腸が煮えくり返る想いでしたが、アル王子を利用しようと考えました。


アルはクオンの提案をすんなり受け入れ、そのままスーガン国で客人として迎え入れました。


(俺の力は人間にそこまで脅威と映らない。

魔物を狩るのに便利な存在として利用するはずだ。


ドルのやつも息子が連れてきた客人をそこまで手酷く扱わないだろう。


見ていろドル!アル!

いずれお前達をスーガンから追い出してやる……)


しかしクオンの想いとは裏腹に、アルと過ごす日々は大変だけれども楽しい日々でした。


アルを慕う部下たちとともに魔物を狩り、

時にはアルとたわいもない話をしたり、

久しぶりの故郷の味に舌鼓をうったり……


クオンは魔物狩りの実績から、役職につかないかとドル王の側近から打診されました。

打診を受けた時は返事を濁しました。


しかし心は猛る炎のように怒りでいっぱいでした。


(仇の下で役職者として働けと?!それは絶対に嫌だ!だが……国民に英雄として祭り上げられるにはそれなりの役職がいる……


アルに言えば……なんとかしてくれるどろうが……)


ドルと違ってアルは誠実な人柄で、この頃には、仇の子であるアルを憎みきれない自分がいることをクオンは自覚していました。


アルに相談すれば解決の道筋がわかるとわかっていても、


自分が元王族だったこと、

やはりアルは仇の子であることで、


どうしてもそれだけは言えなかったのです。


スーガン国に来るまではどんな屈辱を受けても何でもしてやると思っていたのに、今では迷いが生じ始めました。


「クオン殿、父の側近から将軍への打診があったと聞いた。その……お主はそれを受けるのか?」


あくる日、アルに呼び出されたクオンは、アルが用意させた茶を飲みながら返事に困っていることを伝えました。



するとアルは意を決したかのように言いました。


「クオン殿、私と兄弟の契りを交わさないか。」

「え……」


兄弟の契りとは、血が繋がらないもの同士が兄弟になりたいと思った時に誓うものでした。

互いが裏切らないと強く誓うものであり、破棄は絶対にできず、主に主従関係や政敵を丸め込むために使うものでした。


実はクオンの父とドル王は兄弟の契りを交わしていました。

にもかかわらず、ドルは裏切りました。


「私と兄弟になれば、私がいる間はそなたを守ることができる。

父からも何か言うことはできない。

それに魔物を倒すという目的で、我らは同じはずだ。」


「待て……アル王子よ。真意はなんだ?」


「真意か……そうだな、はっきり言おう。

困っているお主の力になりたいのだ。」


アルの自分をまっすぐ見つめる瞳から逸らすことは出来ず、結局アルと兄弟の契りを交わしました。


兄弟の契りはなんの意味もないことを父王の件で知っているのに、アルのことを信じたいという気持ちが勝ってしまったのです。


そんな中、久しぶりに自分に会いに来た師であるハヅキが、目の前で壊れました。


これで本当にクオンの本当の名を知る人はいなくなってしまったのです。


その後クオンとアルはとあることで、ドル王の怒りを買い、追放されてしまいました。


必然的に二人旅をしなくてはならなくなり、それからアルが「クオン」の名を呼ぶ度に、自分の「王子としての本当の名」は少しづつ消えていきました。


それは父の復讐を誓った気持ちが薄らいでいくことでした。


さらに、自身の父が殺された理由は人の手には余る危険な式を発見したから、ということを内なる妖精とともに知ってしまい、さらに揺らいでいきました。


(俺は、英雄になってドルとアルを追い出すんじゃなかったのか?何をやってるんだ……)


そうこうする中、クオンは父王暗殺の理由を知った上で、なんとかスーガン国に戻ったうちに、仇であるドルは魔物''狼王''に殺され、アルは王になりました。


クオンはアルとアルの仲間たちとともに、狼王の一味と戦いました。

仲間たちと共に何度も魔物を追い返したことから、アルは「英雄王」と呼ばれるようになりました。


狼王と戦いを繰り広げる中、どさくさに紛れ暴れていた大物の魔物をクオンは狩っていました。


しかしその間アルは狼王と一騎打ちとなり、相討ちの果てに死んでしまいました。


狼王が死んだ後、魔物はそれ以降大きな襲撃はしてこなくなりました。


国民は王の死を悼み、アルが生前指名していた者が次の王となりました。


クオンは心にぽっかり穴が空いたような気持ちになりました。

また、魔物があまり来なくなったので、聖剣使いとしての使命が果たせなくなりました。


アルが亡くなってからしばらくして、今度は周辺国が攻めてきました。

人間同士の戦いが始まったのです。

聖剣使いは妖精が人の血を嫌うため、人を殺せません。


それを理由に、クオンは誰にも告げずスーガン国を去りました。


そのためスーガン国の一部の者は「赤火鳥のクオンはしっぽを巻いて逃げた」と吹聴し、いつしかアルと成し遂げた数々の偉業は闇に葬り去られてしまいました。


スーガン国を出た後のクオンは、その場で出会った人間と協力しながらひたすら魔物を狩り続けました。


たまに狩り続けることに疲れたりしましたが、クオンと契約した内なる妖精がそれを許しませんでした。


魔物を狩り続ける果てしない旅の中、クオンは多くの人と出会い、別れ、時には姫君の夫となり彼女の最期まで看取る時もありました。


長い年月が経ち、アルの死から七十年後が経った時のこと。


アルの騎士だったカーディンの部下から、カーディンがクオンを探しているので一緒に来てほしいと無理やり連れて行かれました。


会わせる顔がないと思っていたクオンに、老人となったカーディンが渡したものは一冊の本でした。


「これはな、アル王のプートル人形制作ノートだ。狼王都の決戦前に、持っていて欲しいとアル王より預かった」


プートル人形はアルが作った手のひらサイズの人形で、埴輪を少し奇抜にしたような見た目が魔除の人形と間違われたことから始まった物でした。

それを機にスーガンの工芸品としてアル自ら作成・売り出し、今もなお売り出されている歴史ある人形でした。


「プートル人形の……なぜ、それを俺に?」


「読んでみろ」


促されそのノートを読んでみると、


ひたすらにクオンがどのプートル人形が気に入ってそうだ、とか、


こうすればクオンも喜ぶかもしれない、など


クオンへの想いがたくさん書かれていました。


クオンは口にはしませんでしたが、アルが初めて作ったプートル人形を含め、アルの作るプートル人形が好きでした。


アルが初めてプートル人形を作ってその場の空気でもらった時以外は、


アルがプートル人形を売った後にこっそり買ってコレクションしていましたが、アルの死後は見ると辛くなるため、旅の荷物の奥にしまっていました。


カーディンはクオンへ静かに言いました。


「この制作ノートに書かれているアル王のお前への想いは、事実としてここにある。それだけ伝えたかった。」


クオンは制作ノートをその場で何度も読み返し、やがて声を上げて泣きました。


「あああああああ……」


アルはクオンのことを、大切に想ってくれている。

そしてクオンもアルのことを、大切に想っている。


それは、アルが生きていた頃から、わかっていた事実でした。


分かってはいたけれど、その事実を受けとめることも、受け入れることも出来ませんでした。


仇の子だから。

自分は聖剣使いだから。


理由は沢山ありました。

でもそれは、今も昔もアルの想いを、自分の想いを見ないようにしていたことだったと、今さら気づきました。


そこに確かにあった想いを無視することも、なかったことにすることも、誰にもできないのに。


クオンは大粒の涙を流した後、ずっとできていなかったアルの墓参りをしました。


カーディンはその姿を見ると、安心したかのように亡くなりました。


カーディンを看取った後、クオンはまた魔物を狩り続ける旅に出ました。

しかし以前とは違いました。


時にはスーガン国から流出してしまったアルが作ったプートル人形を収集し、スーガン国に返したり、


時には売り物として出されているアル作のプートル人形を買ったりするようになりました。


そしてたまにアルの制作ノートを読み、アルヘと想いを馳せます。



彼が持つ旅の荷物には、アルが一番初めに作ったプートル人形が、今も入っています。




クオンは結局英雄になることも、仇討ちをすることもできなかったけれど、アルに大事に思われていたことを抱きしめ生きていく、というお話でした。

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