生活密着タイプの願いはアイデア次第で解決してしまう件
我はコウメ。
とある事情であの世に来て、
この先の旅路のパートナーを待つ間、
保険会社の事務バイトで時間を潰しつつ、
路銀を稼いでいる。
今日も営業日報のデジタル化作業だ。
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「願い事 野生動物との共存」
契約に至らず。
ずいぶん真面目な願いね。
実現要件を見ると、
生息域の管理、境界線の設定、日々の巡回。
願い事というより、地道な作業の積み重ねだ。
あの人ならどうするかしら。
きっと、
揉めない場所を探して線を引いて、
毎日その線を歩いて確認する。
壊れた柵があれば直すし、
苦情が出れば頭を下げる。
世界は変わらないけど、
揉め事は少し減る。
そんなやり方を選ぶ人だった。
とりあえずデータのインプットは、
エラーなく完了した。
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「願い事 子ども達の未来を守りたい」
契約に至らず。
要件は、制度設計、予算、人員配置。
一人の願いで背負うには重すぎる。
あの人なら、
「定年退職したらシルバー人材で
横断歩道の旗振りでもするか」
そう言って、笑う。
派手なことはしない。
でも毎朝、同じ時間に同じ場所に立つ。
それで十分だと、本気で思っていた。
とりあえずデータのインプットは、
エラーなく完了した。
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「願い事 慢性的な交通渋滞を解消したい」
契約に至らず。
原因が多すぎる。
あの人はよく言っていた。
「この通りの信号、アホで困る」
でも解決策はいつも単純で、
「混む時間に出なきゃいい」
願い事を使うより、
時間を少しずらす方が早い。
とりあえずデータのインプットは、
エラーなく完了した。
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「願い事 通勤電車の混雑を解消したい」
契約に至らず。
これは、よく分かる。
路線増設、ダイヤ改正、企業側の調整。
個人の願いでどうにかなる話じゃない。
あの人なら、
「人生で一番無駄な時間は通勤電車だ」
そう言って、眉間にしわを寄せる。
人と同じ時間に、
同じ方向へ動くから混む。
だから、
早く出るか、遅く出るか、
混む前に移動してしまえばいい。
解決策は現実的で、
少しだけ面倒。
でも、あの人はそれを実行する。
とりあえずデータのインプットは、
エラーなく完了した。
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今日の業務はここまで。
賃金は定額プラス歩合制。
前借り分を差し引くと、やっぱり心細い。
でも、急ぐ旅でもない。
あの人が追いつくまで、
私はここで、こうやって働く。
それでいい。




