目的地発見
「良かった……街がある」
なんかいろいろぐだぐだした気もするが、再び歩き始めて。目標の小山を上り終えた所で見えた景色に、俺は安堵のため息を吐いた。
正直な所、ここに立つのが怖かった。ここから眺めて見える範囲に街か最低でも集落的な物が見えなかったら絶望しかなかったので。とりあえずは一安心といったところだ。
上った山を下ったその先に広がる平地にあるのでまだ距離があるが、この距離なら歩けば暗くなる前にはたどり着けるだろう。日の位置を確認していたが、先ほどより日の位置が高くなっているとはいえまだ頂点を超えている感じはないので昼前のハズだ。
お昼かぁ。……そろそろお腹すいてきたなぁ。朝食べてないから当然といえば当然だけど。
きゅー。
なんて思ってたらお腹がなった。
『可愛いお腹の音』
『そっか、何も食べてないもんな』
『今食べてるラーメンを分けてあげたい』
最後のお前、それ煽りか?
まぁ、いうて朝食・昼食抜きとかたまにやるしそこまでしんどい事にはならんだろう。晩飯まで抜きになるとさすがにきついが……街が見えた以上あそこまでいけば何か食べれると思うし。ありがたいことに先ほどもらったMPはまだ9620残っている。これを貨幣に変換すれば飯代くらいにはなるはずだ。……できれば宿代にもなってほしい。野宿はしたくない。ボロ屋でいいから屋根のある場所で寝たいなぁ。
そもそも野宿というかキャンプすらした事ない人間だし、正直この姿だと身の危険を感じすぎる。
昔VRCでVR睡眠していたら見知らぬおっさん姿のアバターにのしかかられていたという話を聞いた事あるけど、それをリアルに体験するのはさすがに嫌すぎる。というかリアルではのしかかられるだけでは済まない。
うん、とにかく向かおう。わからないことだらけなのもあるし、とにかく早い時間に街に着きたい。何もわからない状態で暗くなってから着くといろいろ苦労しそうだ。
『街に向かう道みたいなのがあるな』
『なんか、馬車? みたいなのも走ってる』
『良かったなカズサさん、実は人のいない廃墟とかそういうオチはなさそうだぞ』
「そんなオチになったらその場で倒れこんで立てなくなるわ」
ぱっと見見える範囲にはあの街しかないんだから、そんなことになったら絶望ってレベルじゃねーぞ。
確かに馬車っぽいのが街道を走っているのは見えるし、問題ないと思うが……
「……急いで向かおう」
『不安になっちゃったカズサさん可愛い』
「うるさいよ」
図星だけど。大丈夫だと思いつつ一抹の不安がな……早く街に辿り着いて安堵したい。まだそんなに時間たってないけど、それでも起きてから2時間前後は経過しているハズだし。
……あ。
「そういえば皆ずっと付き合ってくれてるけど、予定とか大丈夫?」
見ている感じ、最初の頃からコメントしていたメンバーが全員残っている。暇ならいいけど、予定とか入ってたら不味いのではと思いそう声をかけると、即座に反応が返って来た。
『僕は胸を張って言える。予定なんてないと』
『胸を張って言う事か?』
『ゲームする予定位だったから問題なしー』
『買い物行く予定だったけど、こっち気になりすぎて無理ですわ』
「日曜日なのに寂しい連中だなぁ」
まぁ俺も今日こんな事になってなかったら引きこもってモデリングするつもりだったので、人の事はいえないけど。
「でも、うん。さんきゅ」
『デレた』
『カズサがデレたぞ』
「デレてないが?」
わめきたてるコメントにそう返しつつ、でも自然に口元に笑みが浮かんでしまう。
街の方をうつすためにカメラ自分に向けてなくて良かったな、こんな表情見せたらまたからかわれるところだ。