一万人(を大分超えた)記念配信①
『3分前』
……
『2分前』
……
『1分前』
……
『3、2、1、ゼロ!』
「はい、皆こんばんわ! 結構久しぶりに来てくれた人も多いかな! それじゃ一万人感謝の記念配信始めるよ!」
コメント欄からの合図に合わせ俺が宣言すると、コメント欄が一気に歓声(の書き込み)で埋まった。ただ、その中に一部困惑している書き込みがちらほら見え隠れする。
『え、何? なんか映像だけ流れていると思ったらいきなり始まったんだけど』
『カウントダウンなんでリスナーがしてるの? スタッフか何か?』
……まぁそういう反応も出てくるよね。どうしよう、説明した方がいいかなとも思うけど、開始直後に説明に入ると既存リスナーも退屈になるよな……
『おう、カズサちゃんの配信は初めてかい?』
『カズサちゃんは24時間常時配信だからねぇ』
『え、マジで24時間流しっぱなしなの?』
『本当だぞ。すやすやしてる姿まで流れちゃうぞ。タブレット使えば添い寝も可能だ!』
『でも風呂とトイレだけはNGなのが悲しい』
『垢BAN喰らうし当然なのでは?』
『カウントダウンはカズサちゃんがこっちの時間わからないからだね。違う世界にいるから』
『ああ、そういう設定だっけ』
『設定じゃないんだよなぁ……まぁ見てればわかるよ』
悩んでいたら、常連リスナーの皆が説明を始めてくれた。非常に助かる。だったら新規さんの説明は任せてしまって、俺は配信を進めよう。
「皆に周知してもらったとおり、新しい街に引っ越して生活拠点もゲットしました! なので今日から本格的に配信活動をしようと思います!」
『ずっと配信は続けてたけどね』
そうだけどな。気分的なもんだよ、心機一転みたいな。
『ところで記念配信なのに恰好はそのままなの?』
『次の記念配信で着る衣装は完成してるよね?』
「突っ込みが早いなぁ……」
今俺が着ているのは、こっちの世界で買った普通のワンピースだ。特に地味な奴で"記念配信"っていう言葉には釣り合うものではない。
というか、モデリングやテクスチャ描いてる姿も配信されてるし、なんなら"エクスポート"している所も見られてるから、衣装を用意しているのはばれてるんだよな。せっかく作成した衣装なのにサプライズ発表とかできないのはちょっと悲しい。
まあいい、どうせ最初の掴みとして着替えるつもりだったし。俺はコメント欄からのせかす言葉達に肩を竦めて答える。
「わかったわかった、着替えるってば」
『やったぜ』
『てか、なんで最初から着替えてなかったの?』
「記念配信前から着替えた姿で普通に過ごしている姿が映っていたら、記念衣装感がまるでなくなるじゃん……」
『ごもっとも』
普通の配信者ではまずないであろう悩みに納得する皆を後目に、俺はカメラの範囲外に出ると着ている服を乱雑に脱ぎ捨てて籠に放り込む(明日の洗濯行き)。それから赤と白の今日の衣装を手に取りつつコメント欄を見ると『巫女服楽しみ』とかコメントされていた。うん、本当にサプライズとかできんな。
まぁでもこういった時のコメントも落ち着いたもんだ。
以前はこうやって画面外で着替えていると『なんかエロい』『ああ~衣擦れの音~』とか反応してくる奴が多かったけど、最近は普通に雑談が続いている。当然だ、いつものことなので。毎日こうやってカメラの範囲外で着替えはやってるのだ、今更である。──一応ごく少数反応を見せているコメントも散見されるが、これは新規さん達だろう。あとは一部の鉄板ネタみたいな感じでやってる連中な。何にしろスルーである。
ブラと紐パンだけになった後、白衣を着こんでいく。本来は下に半襦袢を着るはずだが、外からは解らないし、MP節約の為に省略した。それから緋袴を身に着けてっと。
よし、完成。俺はぴょん、と跳ねるようにして再びカメラの前へと身を晒す。
「お待たせ! 約束の品だ!」
『おー、可愛い!』
『黒髪美少女だから巫女服が映えるねぇ』
『ショート! ショートじゃない! 悲しい!』
『ミニスカ巫女さんを心の支えに仕事頑張ってきたのに』
ミニスカートの巫女さんなぞ、この世界には存在しないって宣言しただろ。
『似合ってるからなんでもいいや』
『でも今回、セーラー服着た時に見せた時みたいな照れがないのがちょっと残念』
『あの反応、すごく俺の琴線に触れてたんだけど』
『カズサちゃんも女装に慣れちゃったかぁ』
「語弊がある言い方やめろ」
『今の姿は女の子だから、女装ではないよな』
『そうだよね。カズサちゃんはもう身も心ももう立派な女の子だもんね!』
「身はともかく心はなってねえよ!」
一か月やそこらで成ってたまるか! いやどれだけ経っても心まで女の子にはならないと思うけどな!?
前回残MP:3070
今回増減:
スパチャ +27000 (グリッド出発からのトータル)
巫女服代:-10000
残MP:20070




