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お金の力で世界を救ってあげます!  作者: DP
2 交易都市パストラ
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探索者組合

向かっている理由は、組合に所属の登録をするためだ。


といっても、別に冒険者……この世界では公的には探索者という呼び名になるのか、それになって活動をするためではない。いや、将来的にはそれも選択肢に入るかもしれないけど、現状戦闘に使えそうな能力はゴースト系という特定の相手にしか効果のない<<ピュリファイ・スピリット>>だけの俺がそんな事できるわけないので。


一応登録時に任意で記載するプロフィール欄みたいな所に<<ピュリファイ・スピリット>>の事は書いたけど、辺境であるグリッドと違いこのパストラではそこまで数は多くないにしろ同じ術を使える術士は他にもいるだろうし、それしか出来ない俺にお鉢が回ってくることはまずないはずだ。


じゃあなんで登録したのかというと、身分証明の為である。


知っての通り、俺は大体一か月前くらいにこちらの世界に投げ出されたばかりで、身元を証明するものが何もない。普通はこういうのって国とかに拾ってもらって戸籍が用意されそうなもんだけど、俺に関しては欠片もそんなことなかったので。


これまではそれでも別段困る事はなかった。辺境とかは流れの人間も多く、それほど身元証明を求められる事もないので。


だがこのパストラとなると違うらしい。何かしらの身元証明がないと使えないサービスがそこそこあったりするのだ。それにこれはパストラの話じゃないけど、国によっては身元証明をする物がないと入国を拒否する国もあったりするらしい。こちらはすぐに影響することはないが、将来的にはとっておいた方がいい。


──ということを、新しい住処の大家であるベルダさんが昨日説明してくれた。


身分証明の取得方法だが、大きく分けて二つある。一つはパストラの住人としての住民証を獲得する事。これはこのパストラで住居を構えるか、あるいは一定期間税金を納め続ければ獲得できる。ようするにすぐには獲得できない。


そしてもう一つは組合に登録する事だ。このパストラにはいくつものギルドがある。商業関連、工芸関連等。その中の一つが探索者組合(シーカーズギルド)である。こちらは、二つの条件のいずれかを満たせばいい。一つは高額の保証金を預ける事。証明書を発行するこということはトラブルが起きた時の責任を負う事になるため、そのトラブル発生時の為の保険金替わりみたいなものだろう。


この保証金は一定期間経過するか実績を積めば返還されるが、その代わりかなりの高額となる、今の俺にはそんな余裕はないので当然こっちは無理。


なので選ぶのはもう一つ。ギルド所属の関係者、或いは一定以上の立場にある者に紹介してもらう事だ。


この世界、俺みたいに身元証明がない者は別段珍しくない。パストラみたいな大きな街はともかく地方の集落などではほぼ身元証明を必要としないため、持っていない者も多い。そう言った物は村の代表者等に紹介状を書いてもらうそうだ。


じゃあそう言った故郷もない俺がどうしたのかというと、なんとベルダさんが書いてくれた。


いくら家主として契約を結んだとはいえ、まだ出会って一日の相手である。本当にいいんですかと何度も聞き返したが、ベルタさんは「あたしゃ人を見る目は確かでねぇ。そもそも駄目な相手なら部屋だって貸さないよ」と発言を取り下げなかった。俺としては本当に助かる話だし、勿論彼女に迷惑をかけるようなトラブルを起こす気は欠片もないので、お言葉に甘える事にしたのである。


で、途中に幾つもあった誘惑になんとか耐えて俺は今探索者組合(シーカーズギルド)にやってきている。


「それでは、この二つの石に触れてください」


探索者組合(シーカーズギルド)についてからの話の展開は早かった。すでにベルダさんから連絡が入っていたらしく、ある程度の質問を受けた後はすぐに登録手続きに入って貰えた。そして今は担当の女性に最後の手続きとしてある数mm程度しかない極小の石を差し出されている所だ。


「この石は貴女の魔力を記録します。記録した魔力の内一つは組合の方で保管され、もう一つは証明書の方に埋め込まれます。これによって証明書が間違いなく貴女の物と判断されるわけです」

「触れるだけで構わないんですか?」

「はい、大丈夫です」

「わかりました」


彼女の言葉に従い、俺は小さな石に指先で触れる。数秒を置いてもう一つの方にも同様に。そうして指を離すと、担当者の女性は満足そうにうなずいた。


「はい、これで大丈夫です。それではこの石を証明書に固定して参りますが……それほど時間はかからないと思いますが、このまま待たれますか?」

「あ、はい。問題ないのなら」

「わかりました。それではしばらくこちらでお待ちください」


そう口にして、組合職員の女性は一礼をした後部屋から出て行った。


その姿を見送り終えた俺は、一つ安堵のため息を吐いてから、横に除けていたコメント欄を顔の前に移動する。


今回みたいに静かな場所でマンツーマンで話している時に、コメント欄が目に入って思わず反応しちゃった場合は変人に思われかねないからね……しかもリスナーもそれが分かっているから、変な事言ってきたりするし!


『わりとあっさり手続き終わって良かったね』

「だなぁ。もうちょっといろいろ手間がかかると思ってたんだけど。ベルダさん様様だな」

『アキラさんの時といい、カズサちゃん知り合う人の引きはすごいいいよね』

『出会いガチャ神引きしているよね。イカサマ疑われそう』

「いや言い方よ……」


ガチャはともかくとして、こちらの世界に来た後に知り合った相手は概ね大当たりだったのは確かにそうだけど。ベルダさんやアキラさんは勿論の事、グリッドの街でも宿の女将さんをはじめ一部のナンパを除けば酷い人には会っていない。ぶっちゃけ今の所俺が引いた大外れは温泉の連中くらいだろう。何のかかわりもないハズのファンタジー世界で特に目を引く特徴もないのに(美少女ではあるが)ここまで良くしてもらってるのは本当に幸運だよな。


『なんにしろ、ようやく身分証明が手に入ってよかったね』

「うん」


身元がはっきりしている世界から来た人間としては、自分を証明するものが何もないってのは割と不安な点ではあったし。


『これでカズサちゃんも住所不定無職っていう肩書から脱出だね❤』

『住所不定無職TS美少女って割とすごい響きだよな』

「だから言い方ぁ!」


実情は確かにそうだったんだけどさ!


『まぁカズサちゃんの住所不定無職脱出祝いは後でするとして』

「しなくていい……」

『あ、すねちゃった』

『すねた顔可愛い。もっといぢめたくなる……』


おい。


『はいはい、元気出して。これで目的の所いけるんだよね?』

「……そう!」


これで身分証明が発行されるので、パストラのいくつかの施設が利用できるようになる。今日の最終目的地である施設も、その中には含まれている。


本日の最終目的地──それは図書館だ。







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