サポート妖精
「パストラは王都に比べると風光明媚ってわけじゃないけど、いろんな文化が見れるらしいし周辺にもダンジョンとか見どころある場所があるらしいから選択肢としてはかなり悪くないんだけど……一応もう一個候補があるから聞いて?」
『はーい』
『えー、パストラでいいじゃん』
恐らくはケモナーの集団からブーイング(というほどのものではないが)が飛ぶが、それは無視して言葉を続ける。
「最後の一つは"城塞都市"リンヴルムだ。ここは前二つと違って、観光とかに向いた都市じゃないんだけど」
『城塞都市っていうと、最前線の都市なのかな?』
『え、今この世界って戦争してるの?』
『そりゃファンタジー世界だから戦争はしているんじゃね?』
その辺は詳しくは解らないけれど、ただ"最前線"っていうのはある意味あっている。相手が国ではないけれど。
「リンヴルムの近くにレンオアム大森林ってのがあってさ、そこが魔獣の巣窟らしいんだよ。だから城塞は戦争の為じゃなくて魔獣からの防衛の為だね」
『えっ、それって』
『危険じゃないの? カズサちゃん戦闘能力ないし』
「うっ……そうだけど。でも城壁と優秀な騎士団がいるし、傭兵も集まってるから街が被害を受ける事はほぼないらしいよ。魔物からとれる素材とかで街も潤ってるらしいし」
『でも、オークとかいたりしない? エロ同人的な展開にならない?』
「おいやめろ」
妙な想像をするんじゃない!
「とーにーかーくーだ。危険性は薄いのは確認してる。で、そういった場所にいけばファンタジーらしい生物とかいっぱい見せられるからいいかな、と思ったんだけど……」
『まぁ見たい気持ちはある』
『ドラゴンとかいるのかな? 確かそっちの世界に存在はしているんだよね』
『んー、でもやっぱりそこはやめた方がいいんじゃないかな。危険とか関係なしに』
いろんなファンタジーのモンスターの名前を出し合うコメント欄の中、そう否定的なコメントをするリスナーがいた。
さっき発狂してたケモナーだった。俺は嘆息して、
「とりあえず獣人の欲望とかはおいておいて……」
『いや、それは関係なくさ。城塞って事は、基本モンスターと戦闘になってるんだよね? そのモンスターって獣型?』
「いろいろいるらしいけど、獣型が多いって話かな」
『だったら不味いよ、獣型の魔物とかとの戦闘シーン流したり死体映ったりしたら、間違いなくかわいそうとか騒ぎ出すのが出てくるよ』
あ。
『確かにな。ファンタジー世界の話っつっても文句つけてくるのはたくさんいそう』
『くっそめんどくさそうなことにはなりそうだね』
『それ以前にさ、グロ映像でアカウント停止されかねなくない』
……確かにそうだ。
映像の撮影は街の高台からとかすればいいと思ったんだけど、街の側に来ている魔物とか間違いなく討伐対象だろう。という事は、俺が撮れるのは戦闘中の光景になる。戦闘が始まる前の姿だけ上手く撮れればいいが……街の近くで頻繁に戦闘が起こってるなら戦闘中でなくても死体とか映してしまうかもしれない。
そう考えると撮影をするには街から離れて魔物たちの生活域に侵入しなくちゃいけなくなるけど、勿論今の俺の能力だと単なる自殺行為である。
獲得できる能力リストの中にはステルス系の能力もあるから、将来的にはそういった能力を獲得して撮影できるかもしれないが、圧倒的に今ではなかった。
いや、考えなしだったわ。単純にファンタジー世界なんだからモンスターの姿とかを映せばコンテンツになるよなぁくらいしか考えてなかった。もし相談なしに行くの決めてたら大惨事の可能性が大だった。
相談大事だよなぁ……相談相手がいてよかったとか考えてたら、ある事が頭に浮かんで思わずくすっと小さな笑いが漏れてしまった。
『えっ、どうしたの急に笑って』
『今笑いどころあったっけ?』
『でもその笑い方可愛いからもっと笑って?』
何もないのに頻繁に笑ってたらおかしい人なんよ。俺はそう思いつつ、笑った理由を皆に説明する。
「なんかさ、こうやって相談してたらさ。なんかゲームに出てくる……そう、サポート妖精みたいな感じだなって思って。ほら、他の人には見えないところもそれっぽいじゃん?」
『確かに解るかも』
『俺たちはフェアリーだった……?』
『という事はカズサちゃんだけじゃなくても俺達も実質美少女なのでは』
『ちなみに実際のフェアリーの外見って美少女じゃなくてグレムリンみたいな奴だからな』
『きつい現実を持ち出すのはやめろ』
『てかさ、それそのままファンネームにするのよくない?サポート妖精とか妖精さんとか』
「悪くないかも。……自分のリスナーにファンネームが付くのって変な感じだけど」
『あなた今4桁の同接誇る配信者ですよ』
そでした。
「でもこれで、一気に二つの事が決定したな」
『二つって? ファンネームともう一つは?』
「行き先だよ。決めた。次の目的地は"交易都市"パストラにする!」
一番デメリットが少ないからな。そう判断して宣言すると、コメント欄でケモナー達が再び発狂した。
特にさっき忠告してくれたケモナー君が狂おしいほど喜んでた。うん、助言助かったけど君やっぱり結構欲望込めてあの話してたよね? 正論だったから怒らないけどね!




